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ICHIROYAのブログ

元気が出る海外の最新トピックや、ウジウジ考えたこととか、たまに着物のこと! 

★★★当ブログはじつはリサイクル/アンティーク着物屋のブログです。記事をお楽しみいただけましたら最高。いつか、着物が必要になった時に思い出していただければ、なお喜びます!お店はこちらになります。★★★


虚偽表示問題と「10分の9」

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 ホテルレストランや百貨店の虚偽表示問題が続いている。
 僕が感じるのは、怒りよりも悲しみだ。

 ひょっとして、世の中はあいかわらず、このような嘘がありとあらゆるところに存在して、僕らは薄々それを知りながら、その中で暮らしているのではないか。
 そして、たまにそういったことが何かきっかけで表にでて、みんながやっているのに、運の悪い人だけが血祭にあげられる。
 無事にやり過ごすことのできた人たちは、冷や汗を流しただけで、やり過ごす。
 そして、あいかわらず、僕らは嘘だらけの世界に暮らしているのではないか、と。

 たとえば、僕の商売の問題でいえば、アンダーバリューがある。
 海外へ着物を送る時、配送伝票の商品の価格を、いただいた金額ではなく、はるかに低い金額を表記するのである。(「アンダー」低い、「バリュー」価額)
 そうするとお客様は関税の金額が低くなるのだ。
 僕らのような古いもの、金額のわかりにくいものの場合、お客様の方でも、「どうせわからないし」とそれを要求する場合が多い。
 
 もちろん、アンダーバリューは違法だ。
 だが、海外へネットを利用して小売をしている人たちの多くのひとが、アンダーバリューをやっているのが実態だ。(*大手を除いて)
 輸入の場合、アンダーバリューでの摘発はたまにある。それは日本の関税が減ることになるからだ。
 だけど、輸出の場合、日本の関税が減るわけではないので、ほとんど摘発されることはない。
 
 だから、ヨーロッパのお客様はとくにアンダーバリューを要求する。
 発送の伝票に嘘を書け、と。
 うちは断る。
 断ると、「みんなやってくれるのに、なぜやってくれないのだ?お前のところは、サービスが悪い。キャンセルする」というひとまでいる。
 結果、アンダーバリューをしないせいで、競争相手より数割高くなってしまう場合もあるようだ。
 
 なぜ、多くの海外向けECをやっているひとがそれをするかと言えば、「みんなやっているから」だ。「それをしないと、お客様に逃げられる」からである。そして、「それをやってもどうせ通関では、ばれないから」だ。

 
 アンダーバリューは僕の切実な問題だったが、じつは、そういうことが、あっちこっちで起きているのではないかと思ったのは、不燃木材を巡る番組を見たときだ。

 ある会社が不燃木材(燃えにくい加工をした木材)を開発して販売した。
 それを見た同業者が同じようなものを作って販売し始め、あっという間に、不燃木材のマーケットは飽和状態となった。
 どんどん値段が下がり、最初にそれを開発した会社は赤字に陥った。
 だが、その会社はマーケットに合わせて値段を下げることができなかった。どう考えてもその値段では、肝心の不燃性を保てなかったからだ。
 
 実は、この話には、救いがある。
 その会社がもう倒産するしかない、と思われたとき、国の抜き打ち検査が行われた。
 すると検査した10社中、法定の不燃性能をもった木材は、その会社のものだけで、残りの9社は法定基準を満たしていなかった、というのである。
 その会社は救われた。

 その9社にも言い分はあるのかもしれない。番組を見ただけなので実際のところはわからない。
 だが、もし番組の言うことをそのまま信じれば、9社の経営者は、「(火事にでもなって社会問題にならなければ)どうせわからないから」と思い、「みんなやっているから」と思い、「やらなきゃ潰れちゃうから」と思って、法定基準を下回る製品を嘘をついて売っていたことになる。

 10人中9人。
 潰れても正しいことをしようとしたひとは、たったひとり。
 10人中9人は、嘘をついたのである。

 僕の商売で問題で考えても、おそらく、10人中9人。
 お客様に頼まれれば、10人中9人はアンダーバリューをやるのではないかと思っている。


 レストランの虚偽表示問題でも、つぎつぎに同じようなことが出てきている。
 ここにも、「どうせわからないから」、「みんなやっているから」、「やらなきゃ競争に勝てないから」の理屈がある。
 さすがに10人中9人ということはないと思うが、いま、表に出ていることが、氷山の一角である可能性は高いと思う。


 僕は思う。

 この問題で、謝罪しているレストランや百貨店に憤ることは自然なことだ。
 だけど、これを機会に、あなたの仕事に、同じような理屈の「嘘」は、ほんとうにないのか、と自問して欲しいと。
 そして、もし、そういう問題があるとすれば、誰でもないあなたが、それを正していって欲しいと
 
それをやめることに、大きな犠牲を払う可能性がある、大きな勇気が必要だとしてもだ。
 もちろん、そのことを僕自身も、自分のやっていることに、ほんとうに「嘘がないのか」と問い続けたい。

 そして、いつか、不燃木材の話のように、正しいことにかじりついて筋を通した人たちが、ひとり残らず救われるような社会になって欲しい。


(*ほとんどかぶりますけど、同じテーマの過去記事) 


*追記 yocchi_gogoさんがブログ「柿の種中毒治療日記」で、このことに関して素晴らしい記事を書いておられます。
 やっぱり、10分の1の正直者が生き残るようです。ぜひ、こちらをどうぞ


photo by butupa