霜降りの最高級和牛が美味しくない?? 草うしはいかが!
3、4年前、ある外国のかたに、ちゃんとしたお礼をしないといけないことになり、ある有名店で、最高級の霜降り肉のステーキをごちそうした。
僕も嫁も、もちろん、そのステーキをご一緒した。
脂肪が霜のように肉全体に細かく散っており、噂に聞く、最高級の和牛の肉とは、これのことか、と感嘆し、まず目で愛でてから、一口一口、いとおしむように頂いた。
たしか、二口ぐらいは美味しいものだな、と思ったのだけど、途中から、なんだか箸が進まなくなった。
そもそも、我が家は、あっさり系の食事が多い。
そんなに脂ののったものは、食べ慣れていないこともある。
しかし、ともかく、美味くないのだ。
でも、そこは泣く子も黙る有名店であり、そこの最高級のステーキだ。
不味いはずがない、のだ。
間違っているとしたら、僕の舌に違いなく、子供の頃から美味いもの、高級食材を与えられず、味覚を磨くことができなかった人生を、ちょっと恨めしく思った。
そして、なんと信じられないことに、脂が胸につかえて、そのステーキを最後まで食べることができなかった。
しかし!
さしのたっぷり入った霜降りの肉が良い、という価値観、美食観が、そもそも病んでいる、という声もあるのだ。
つまり、本来、肉は赤身の美味さを楽しむものであって、「さしの脂肪の部分が、口の中でとろける」というところに、肉の最高の評価をおくこと自体が、歪んでいる、というのだ。
それは今井先生もおっしゃっておられることで、また、かつての鬼上司、Fさんがいつも力説されることでもある。
現在の牛のほとんどは、小さな畜舎に閉じ込め運動もさせず、配合飼料や薬をたくさん与えて、いわば、ブロイラーと同じように病的に太らせて、育てられる。結果、脂肪まみれの、最高級の肉となるのだ。
しかし、本来、牛は、放牧され、たっぷりと草を食べて、のびのびと健康に育つものである。
そうした牛の肉が、霜降りのように脂肪にまみれることはない。
そして、そうして育てた牛の肉が、一番うまく、また健康にも良いはずなのだ。
じつは、こういった現状を憂えた、Fさんは、数年前から、阿蘇の畜産農家さんと組んで、「草うし」と名づけた、真に健康的で美味しい牛の生産を始められたのだ。
もちろん、歪んだ「さし信仰」だけでなく、生産の効率性が、やむなく、現在の肥育環境を生んでいる面もある。
たとえば、100頭の牛を自前の草だけで継続的に育てて出荷しようとすると、50haもの牧草地が必要だそうだ。
それは、甲子園球場を牧草地にして牛を育てようとしても、2頭しか育てられない計算になる。
そこで、Fさんたちは、すべてを放牧で育てるのは無理なので、基準をつくられた。( *第一段階としては、牧草・野草(粗飼料)を全給餌量の35%以上食べ、放牧期間をできるだけ長く(3~7ヶ月以上)とったもの )
商業ベースで、可能な限り、牛の健康に配慮し、自然な状態で育てようというものである。
さて、ここ数年、Fさんは、会えば、この「草うし」の話ばかりであった。
何十ページもある「草うし」の膨大な資料もメールに添付して送られてきたので、読まずに返信するわけにもいかず、徹夜で読んだ。
「草うし」の資料は嫁にも送られてきたので、読むように言っているのだが、嫁は、Fさんと会うことがないのを良いことに、忘れたふりをしている。
もちろん、我が家でも、何度か、この「草うし」のいろんな部位を頂いた。
僕にとっては、買う、買わない、の選択肢はなく、Fさんとのメールなどのやり取りで、「草うし」いらんか?と言われると、冷蔵庫の空スペース分だけ確認して、送っていただくことになる。
そして、この「草うし」。
我が家では、美味しい、美味しい、と大好評なのである。
いままでは、Fさんから「いらんか?」と言われたときに、まとめて頂いていたのだけど、最近は、嫁が、「草うし、送ってもらってよ」と、先に言うのである。
僕は自分の舌にあんまり自信がないので、書いても無駄かとは思うが、とにかく、しつこくなく、かつ柔らかく、甘く、とっても美味しいらしいのだ。
ここ数年のあいだに、大丸さんと先方の阿蘇上田尻村の取り組みも拡大したようで、大丸各店で積極的に販売している。
また、Fさんに訊いたところでは、実力派のシェフたちに大好評で、多くの有名レストランで、「草うし」を打ち出したメニューが提供されているとのことだ。
ここに来て、その考え方、肉の味が、大きく受け入れられてきた雰囲気なのだ。
「霜降りの最高級の和牛」が、胸につかえてしまった僕の味覚も、あながち、大外れっていうわけでもなかったようなのである。
こちらに詳しい草うしの説明パンフレットがあります。
見やすいですので、興味があるかたはぜひご覧ください。
この草うし、大丸各店さんで買えるとは思うのですが、数が限られていることもあるので、もし買いに行かれる場合には、事前にそのお店に置いているのか、何時までに行けば、買えるのか、確認されてから行かれたほうが良いと思います。
さあ、Fさんにメールして、「草うし」宣伝しときやしたぜ、って言わなくちゃ。
で、また、注文しなきゃ!
( 写真は江戸時代の袱紗 この頃の牛はケンコーだった!)
PS 常時販売の店は、心斎橋・京都・芦屋の大丸と松坂屋名古屋本店らしいです。
なお、9月12日から18日までは「草うしスーパープレミアム」という草うしのなかでもより自然に近い状態で育てた牛の肉を販売するようです。その際の販売店は、大丸は心斎橋店、京都店、神戸店、山科店、須磨店、芦屋店、松坂屋は名古屋店、豊田店、上野店、銀座店、静岡店ということです。
*最高級の霜降り和牛を育てておられるかたへ。あくまで個人的な見解ですので、ご容赦ください。現在の主流は、もちろん、霜降りの肉で、消費者も小売・レストランもそれを望んでおられると思います。ただ、現在、こういう芽が育ちつつあるということも間違いのないことかと感じています。
2013/4/3 追記
上述のF(古屋氏)が、自らを「草うしおじさん」と名乗るHPがオープンしました!
草うしのこと詳しくのっています!
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