きのう娘のボーイフレンドがやってきたんだが Part II
photo by John Pastor
約束は守っていただきたい。
誰かを一生幸せにすると言うなら、その約束は守っていただきたい。
いや、じつは、以前次女にお披露目された彼氏が、話があると言って日曜日の夕方にやってきたのだ。
内容はズバリ、「お嬢様をお嫁にいただきたい」である。
娘と嫁の話が寝室まで聞こえていたし、「ということやろ?」ということで事前にそれはわかっていた。
嫁は前日からバタバタと掃除をし、リンゴをアルミホイールでくるんでミニトマトやうずら卵を刺したものとか、草うしの肉料理だとかを準備していた。
僕は約束の6時に帰ってきて、『軍師官兵衛』が始まるまでには3時間もあるから余裕だなと考えていた。
次女と一緒に返ってきた彼氏は、やや緊張気味にテーブルにつき夕食が始まった。
なんとなくテーブルは緊張したまま食事がすすむ。
いつ言い出すつもりかな?
長女の時には、僕が我慢しきれずに、「で、どうするつもりなんだい?」と聞いてしまい、そこからなんだかなし崩し的にそういうモードに入った。
今回は我慢して、父親の威厳を示すつもりであった。
が、そろそろ料理は終わりそうというのに、そういう話が始める気配がない。
時計を見ると、7時20分とかになっている。
困るのだ。
時間が押している。
今回は官兵衛の息子、長政の初陣と秀吉の水攻めの、とても気になる部分なのだ。
で、ついに、僕は口走った。
「そろそろ、『軍師官兵衛』が始まるなあ」
photo by Steve Rhodes
その話を続ける前に、この金曜日におきたアメリカの事件を聞いて欲しい。
大リーグ・サンフランシスコ・ジャイアンツのブランドン・ベルト選手は、デッドボールで親指を骨折し、5月10日から故障者リストに入っている。現在は、マイナー・リーグで指名打者としてリハビリ中。
Wikiによると2009年ドラフト5巡目の指名。2011年から開幕メジャー入り、2012年には145試合に出場するも、一塁手としてはパワーの面で物足りなさが残った、とされている。
大リーグには詳しくはないが、おそらく、まだまだこれからの選手なのであろう。そして、故障者リストに入ってしまっている焦燥感は、かなりのものがあるはずである。
いっぽう、学生のリンゼイさん。
髄芽腫という脳腫瘍の一種がみつかり、31回の放射線治療と9回の化学療法を耐えて、今は完全に回復の途上にある。
彼女が球団のチャリティーイベントに参加したことから、球団側は彼女の境遇を知っており、この金曜日、マイナーの試合に彼女を招いて始球式を行った。
リンゼイさんはブランドン選手の名前入りのシャツを自ら選んで始球式にのぞんだ。
始球式を終えたリンゼイさんを、ブランドン選手がベンチから出て祝福。
そして、彼は「今日の試合で君のためにホームランを打つよ」と約束した。
それを聞いた球団関係者は、怪我から試合に戻ったばかりなのに、なんて約束をするんだ。せめて、ヒットぐらにしておけば良いのにと思ったそうだ。
しかし、ブランドン選手はその約束を守った。
1回、ふたりの打者が倒れた後、彼は見事にホームランを打った。
彼の打球は右翼のフェンスを高く越えていったのである。
リンゼイさん自身はブランドン選手に会えたことで興奮しており、球団がその記念のホームランボールを駐車場で回収し(彼にサインをしてもらい)、彼女に届けるまでその約束を忘れていたそうだ。
さて、話をアメリカから富田林に戻そう。
彼氏は次女と結婚したいという。
もちろん、僕にも嫁にも異論はない。
彼のような素敵な好青年が、色々と欠点も多いうちの娘と結婚したいと言ってくださっているのだから、親としてもこれほどの幸せはない。
とても、とてもありがたいお話だ。
彼氏は娘を必ず幸せにするという。
そう約束してくれた。
彼はきっとその約束を果たしてくれると思う。
果たしてくれますよね?
ブライドン選手みたいに、その試合でホームランを打つ約束をして欲しいのではない。
ブライドン選手の約束は、天使のキスがあってはじめて果たされたものだ。
彼が約束したことは、悪魔にささやかれたとしても、彼が、そしてうちの娘がちゃんとしていれば、果たしていただけるものだと思う。
彼ならきっとその約束を果たしてくれるに違いない。
了解!
「こちらこそ、よろしくお願いします」
僕ら夫婦は頭を下げた。
話は終わり、さあ、『軍師官兵衛』の時間だ。
参照元:
Brandon Belt makes good on home run promise for cancer survivor