ICHIROYAのブログ

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プラスチックがなくなる日は来るか?(Zeoformの挑戦)

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  アンティーク着物の商売を始めるとしたら、最初に覚えなければならないのが、絹と人絹の見分け方だ。
 人絹とは、現在でいうレーヨンのことで、 パルプなどの植物のセルロールからつくられる。
 人絹は世界で最初につくられた化学繊維であり、大いに重宝されたものだった。

 大正時代といえば、大方の女性はまだ着物を着ていたのだが、絹の着物はやはり高級品であったから、安価なレーヨンが出てきたことで、さぞおしゃれな女性たちは喜んだことだろうと思う。
 絹と同じような光沢と滑らかさを持つ繊維であるということで、’人工的に作った絹’という意味で「人絹」と名づけられた。

 大正から昭和初期の着物には、人絹のものが多い。
 経糸か緯糸かのどちらかに人絹糸を織り込んだものも多く、アンティーク着物の初心者にはその見分けに苦労する。

 だが、基本的に、その成分が植物の基本組成であるセルロースであり、紙と同じような性質をもっている。
 紙のように燃えやすく、水には弱い。スレて穴が開くこともあり、また、紙のようにパリっとなってしまって折り目が消えにくいこともある。
 当時のものは染料の発色も悪く、遠目にも人絹だなとわかるものもある。

 そんな人絹だが、石油からできる素材、ポリエステルが出てきてからは、一気にその人気を失ってしまった。
  やや古いポリエステルの着物は、その風合いと染の具合で、ひと目でそれとわかるが、最新技術で作った最高級のポリエステルは絹と見分けがつかない。
 この道何十年の古着業者の目をも欺くことがある。
 一般消費者がそれを見分けることは不可能だ。

 

 さて、着物の歴史を紐解くまでもなく、同じタイミングで石油原料の素材が世界を席巻し、現在のほとんどの成形品、工業製品はプラスチックで作られている。
 そして、安価なものはプラスチック製であることは、すでに固定観念になっており、それがまた別のもの、とくに自然素材のものに置き換わるかもしれないとは、誰も想像しない。

 しかし、Zeoformという新しい素材が、プラスチックに置き換わるかもしれないという。
 この素材は、人絹(レーヨン)と同じくセルロースを原料とするもので、麻などを水と反応させることで、強固な水素結合をつくりだし、車の部品に使えるほど強固な整形素材となるという。
 もととなったパテントは、1897年にドイツの会社が開発したものだが、現在、オーストラリアの会社が、その工業化に挑戦している。

 Zeoformのウェッブサイト

  

 この素材がどれほどの可能性を秘めているのか、素材の専門家ではないのでよくわからない。
 だが、製造過程で環境に悪い物質を出さず、土に埋めれば自然に帰るこのzeoformという素材が、広くプラスチックと置き換われば、素晴らしいことになることはわかる。

 素材の特徴については、こちらのページに詳しく書いてある。 
 ざっと見たところ・・・色をつけることができ、溶かして、吹き付けたり型に流しこんだりできる。固まったものを切ったり、削ったり、釘を打ったり、木製品と接着させることもできる。コルクより軽く、象牙より密。石や金属や木など他素材と混ぜることもできる。密度は変えることができ、高密度のものは、水に強く、自然な手触りを生むコーティング素材としても使える。

 彼らはこの素材をオープンソースとして開発しており、資金援助も求めている。
 最近、クラウドファウンディングサイトindegogoで資金を募集したのだが、残念ながら、ほとんど資金も集まらずに、終了してしまっている。
  フェイスブックのいいね!ボタンは1400も押されているのだが、さすがに、素材開発ということで、自分の財布を開こうとした人は少なかったのだろう。
 しかし、多くのメディアにも取り上げられており、indeagogoでの達成率の低さほど、期待が低いということはなさそうである。

 このzeoformという新素材が、今後、地球規模でプラスチックに取って代わっていくかどうか、僕にはわからない。
 だけど、毎日のように「人絹君」を触って確かめている古着屋の僕としては、セルロースという自然素材が、いつか大きくリバイバルして、ふたたび世の主役に躍り出て欲しいな、きっと、将来のいつかには、そんなことも起きるんだろうな、と思うのだ。

 
 

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