ICHIROYAニュースレター 第219号
着物の生地はなにでできているか?言葉はちょっとあやふやですね?
「絹」「正絹」・・・どちらもシルク(silk)ですね。
「合繊」「交織」・・・うーんこちらもわかりにくいかも。合繊は合成繊維(人工的につくられた) そして交織は違う素材のものを組み合わせてあります。例えば絹とレーヨンなど。天然の素材と人工的な素材を合わせたものが多いですね。
繊維(fiber)に行く前に まず「糸」はなにからできている?
はい、プロテイン(タンパク質)、セルロース、そして石油。
シルクやウールはプロテインでできていますね お蚕さんと羊さんに感謝!
プロテインをもやすと・・・「ボン!」と何かかが爆発したときのコメディーの一場面を想像してみてください 顔が黒くなって髪がチリチリってやつです
これがシルクが燃えたのと同じなんです チリチリ燃えるけど燃え続けず止まって、灰は黒い粉のよう。
こちらが絹を燃やした動画です:
黒い染料があると、ちょっと燃え方がちがいますが・・・
ウールを燃やすとシルクと似てはいますがにおいがちがいます
ウールのほうが獣的な変なにおいといいますか・・・
そして絹とウールでは手触りがちがいます ウールのほうが少し「チクチク」します
やさしくなでてみるか 頬にあててみて少しチクチクするのがウールです
シルク・コットン(綿)・ウール(毛製品)は短繊維からできていますがウールだけこの「チクチク」があるのです (肌が敏感な方はウールのチクチクが苦手ですよね)
植物由来のものはセルロースでできています(セルロース=植物の細胞壁や植物繊維)
コットンも、麻も人絹(レーヨン)もこの仲間です
これらは燃やすといずれも 燃え続けて灰になります
こちらは人絹を燃やしたところーー燃え続けていくのでコワイ!
では どうやってこの生地は何ぞや?と判断すればよいのでしょう?
コットンや麻は短繊維で似ていますが、麻のほうがなめらかでコットンのほうが表面の手触りにざらつきがかんじられます
人絹は そもそも絹の代用品として作られましたがたいてい長繊維です 人絹はパルプでできていますので「紙」だと思ってもらえばいいでしょう 絹に似せて作られただけあって 絹との見分けがむつかしい!場合があります 顕微鏡でみると人絹の表面は本当になめらかで均一でいかにも人口的!です
コットン・麻・人絹たちは 紙を燃やした感じと思ってもらうとよいでしょう
まずは手触りを感じて こうじゃないかな?とあたりをつけてから 燃やしてみてください~ 顕微鏡でみるのもGood!
燃やすにあたっては可能ならば経糸と緯糸を別々に燃やすとなおよいでしょう
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ここからの写真はお月様の表面じゃありませんよ~
麻と綿の表面を顕微鏡でみたところです
能登上布(麻) 50x
近江上布(麻) 50x
奈良晒(麻)50x
弓浜絣(綿)50x
益子木綿(綿)50x
備後絣(綿)50x
表面のなめらかさの違い、ごらんいただけましたか?
ではでは難問です~これはほんとにわかりにくいですが・・・
↓↓↓
八重山交布 経糸は綿で緯糸は麻です 顕微鏡でみてもこれはわかりにくい!
そしてこちらはどうでしょう?↓↓↓
人絹です~ これはアンティークの絽の着物の繊維です
とってもなめらかで均一なのがよくわかります よくできてますなあ
あの難問(八重山交布)もむつかしいですが コットンのなかにも非常に細い糸で織られたものなど分かりにくいです そんな時は麻なのかコットンなのかはたまた人絹なのか・・・触るだけでなく顕微鏡で確認など総合的な判断が必要でしょう
こちらはポリエステルをもやしたところ・・・燃やしたところがかたまって触ると固いです 灰にはなりません ビニロンやアクリルもなかま(長繊維の合成繊維)です
最近の合成繊維の進化のすばらしさは皆さんもご存じでしょう
触っただけではベテランの業界人も??どっちだろう?となる場合もありますが 燃やしてみると一目瞭然です
あまり聞かれたことがないかもしれませんがそれ以外の合成繊維に「アセテート」と「プロミックス」があります
アセテートは子供の着物によくみられて つるりと表面に光沢があり、一見シルクのようですが パルプと酢酸でできているので 長期保管のものにはお酢のようなすっぱい!においがする場合がよくあります
アセテートを燃やしたところ ↓↓↓
最後にプロミックスは業界で「牛乳」とよばれます (初めて聞いたときは???)でした 牛乳のタンパク質(プロテイン)とアクリル原料をミックスしたので プロミックスと呼ばれるんですね~
それが サラリとした「大島紬」にとても良く似た表面の手触りなのです もちろん燃やしてみればわかりますが・・・
いかがでしょう、ざっくりと天然素材と合成繊維、これはなんぞや?の謎が解けましたでしょうか?
最後に有終の美のお月様、イエイエ こちらは芭蕉布
↓↓↓きれいな薄茶が神々しい つるり、パリッとした芭蕉布の表面です
英語版はこちらです↓