独立したら「学び方」はこんなに違った~野良猫のように学べ!
先日、なるべく失敗しない商売の始め方について、僕の思うところを書いた。
おおむね好意的に読んでいただけたようで、ほっと胸を撫でおろした。
ツベルクリン良平 (id:juverk)さんから「師匠をみつける」あたりをもっと書いて欲しいとコメントいただき、また、いくつか気になったブックマークコメントがあったので、すこし補足してみたい。
独立してみて、サラリーマンをやめてみて、「生きる道を学ぶ」「稼ぐ手段を学ぶ」「利益を上げる方法を学ぶ」ということが、それまで考えていたこととかなり違うことに気がついた。
たとえば、いただいたコメントのなかに、「それができたら苦労はしない」というのがあったが、「はい、苦労してください」とお返事したい。
僕も商売のとっかかりをみつけるまで、苦労したのだ。
いったいどれほどの本や雑誌や、ネット上の文章を読んだことか。あてなく町を歩いて、バイクで走り回って、ネタを探したことか。
たぶん、「それができたら苦労はしない」というひとは、儲かる方法を書いたヒミツの呪文がどこかに、書いてあると思っておられるのだ。
ある程度ヒントを頭にぶちこんだら、とにかく何かを売ってみる。売れなきゃ、違う方法で売ってみる。たとえば、ヤフオク、ヤフーショッピング、フリーマケット、チラシ、お店に置いてもらう・・・挙げればきりがない。それでも売れなきゃ、商材の何かを変える、値段を変える、宣伝を変える・・・やってみることはいっぱいある。
そうして、やってみてはじめて、商売の糸口がみつかる。そして、小さな成功例をだんだん手繰り寄せて、ちゃんとした利益を得ることができるようになるのだ。
何度も書くが、どこにもヒミツの呪文は書かれていないのだ。
「学ぶ」方法が、サラリーマン時代とは、相当異なっている。
端的に言えば、独立後は「野良猫のような学び方」が必要になるのだ。
たとえば、サラリーマン時代は日経新聞を数十分かけて毎日読んだ。もちろん、それは経済の動きを知るのに、重要でないことはない。そして、読んでいなければ、みんなの話題についていけないし、不勉強とみなされるからだ。
だけど、最近は、たまにざっと眼を通すだけになった。
日経新聞を読んでいなくても、ネットでニュースをピックアップして読むだけでとくに困らない。もちろん、扱う商材やお客様の層によっても違うだろう。だが、余剰資金を投資するとか、銀行から融資を受けるというような事情がない限り、必須ではない。
野良猫には、日経新聞を読むより、もっと優先順位の高い情報収集の必要があるのだ。
サラリーマン時代と、独立後のもっとも違う点をまとめてみるとこんな風になる。
1.必要な情報はどこかに書いてある/必要な情報はどこにも書いていない
思えばサラリーマンの時代は、本や雑誌や資料やネットを調べれば、必要なことはたいてい書いてあると思っていたような気がする。
もちろん、顧客調査の重要性はわかっていたけれど、それも去年のデーターでよければ、どこかに保管されているのだ。
そもそも、どこかに書いてあると思っていた僕が、馬鹿なサラリーマンだったのかもしれない。
そういえば、今ではめちゃくちゃ偉くなられた上司は、通勤のときにご一緒になるたび、小説やビジネスとは無縁のノンフィクションを読んでおられた。
その方は、ビジネスの現場で本当に必要な情報がノウハウ本などには書いていないことを知っておられ、そんなことよりも、人間というものを学ぶために、そういう本を読んでおられたのだなあ、と今になって思う。
そう、ヒミツの呪文へいたった冒険の物語は、ここそこに書かれている。
だけど、ヒミツの呪文そのものは、どこにも書かれていないのだ。
2.知りたいことは聞けば教えてくれる/知りたいことは訊ねても教えてくれない
組織にいると、困ったときには、誰かが教えてくれる。
ちゃんと教えを乞えば、上司だけでなく、同僚や取引先、ときによっては、部下が教えてくれる。
だから、礼をもって訊ねたら、ひとは教えてくれるものと思ってしまう。
だが、独立後は、基本的に、訊ねても誰も教えてくれない。
利益を出すために必要な具体的な情報は、誰かの頭のなかにあり、それは礼をもって訊ねたからといって、教えてくれるものではないのだ。
理由は簡単で、具体的な情報を教えてしまえば、自分の利益が減る可能性があるからだ。
でも、それをどうしても教えて欲しいから、野良猫は考える。
そのひとは、何を求めているだろうか。何が好きだろうか。好きになってもらうにはどうしたらいいだろうか。
たとえば、僕の商売の例で言うと、ある特殊な種類の着物(A)の見分け方が知りたいとする。それをよく知っている(X)さんに、ただただ(A)の見分け方を訊ねても教えてはくれない。
ならば、(X)さんから、(A)という着物を買い続ければいいのだ。
(X)さんから買うたびに、ちょっとづつ情報を教えてもらうのだ。
そうすると、(X)さんは儲かるから、多少は教えてくれる。僕のほうでは、小売価格で近い値段で買うので、利益はない。
だが、(A)に関して、学ぶことができる。授業料は売上の利益として、(X)さんに払っていることになる。
これは一例に過ぎない。
ひとはそれぞれ、欲しいもの、嬉しく思うものは異なるだろう。
だから、相手によって、何を引き換えに、その学ばせてもらえるか、考える必要がある。
それはお金だけとは限らない。お客様の情報だったり、仕入のチャンスだったり、重い荷物を運ぶことだったり、なにか相手の誇りを満たす行為だったり、思いっきり笑って貰ったり・・・それはほんとうに千差万別だ。
前の記事で、「師匠をみつけよう」と書いたのだが、「ダマされないよう注意」というコメントがあり、なるほど、と思った。
サラリーマン時代の感覚でいると、「ただただ必要なものを与えてくれる師匠」、「わずかな授業料と引き換えに大きな儲けを与えてくれる師匠」が存在すると思ってしまうのかもしれない。
そんな人は存在しないことを肝に命じておいたほうがいい。
何人かの師匠をみつけよう。
そして、その師匠たちに、精一杯、自分の提供できるものを提供しよう。
あなたの目に間違いがなければ、その師匠たちは、やがて自分が提供した何倍もの利益のネタを返してくれるだろう。
*以前書いた僕の師匠のおひとりに関する記事~ご参考まで
3.失敗は少ないほうが良い/失敗は多いほうが良い
サラリーマン時代は、やはり失敗はあまりできない。失敗で失くすのは会社のカネでもあるし、自分だけでなく上司のメンツもなくしてしまうリスクがあるからだ。
だから、なんだかんだ言っても、失敗は少ないほうがいい。
だが、独立後は、失敗は多いほうが良いのである。
できる連中は、事業の規模をみるみる大きくしていく人たちは、そうでないひとたちよりも成功も多いが、失敗も相当多い。
致命傷にならない失敗を数えきれないぐらい重ねて、その失敗からどんどん学んで先へ進んでいく。
その行動の早さ、多さが、サラリーマン時代とは桁違いだ。
独立後は、何から何まで自分で判断できるし、いちいち上司の了解をとる必要もなく、失敗して失くすお金も自分のものだ。
独立後は、自分の行動から学ぶのだ。
業界の知人に凄いヤツがいて、彼の名言に、「儲かるまで、買い続ける」というのがある。
僕らの商売では、経験にともなって、自分の得意な分野の商品というのがどうしても出来上がってくる。
商売がうまく回りだすと、普通のひとは、その自分の得意な分野に留まりがちだ。
たまに、ほかの分野のモノに手を出しても、すぐには儲からないので、ついつい出したてをすぐに引っ込めてしまうのだ。
彼は新しい分野のモノを買って損をしても、「儲かるまで、買い続ける」のだ。
誰かがその値段で買っているということは、ぜったいに儲けのでる方法があるはずだ。失敗を重ねて学べば、絶対に儲かるコツに至ることができるという信念がある。
結果、ほんとうに、最後には、儲かるようになっている。
彼は現在、業界随一の守備範囲の広さを持っているといってよい。
長い文章になってしまって、恐縮だ。
なんだかこういう文章を書くたびに、僕ごときがえらっそうに書いていいのか!?と思う。
だけど、やっぱり、誰かこういう考え方が必要とするひとがいるかもしれないと思うと、ついついチカラを込めて書いてしまうのだ。
尊敬する先輩諸氏、商売人の皆さん、僭越ですみません!
photo by Rodrigo Basaure