ICHIROYAのブログ

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オリンピックの入場行進が「着物」ではないのはなぜだろう

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壮大なオリンピックの開会式を楽しんだ。
競技も始まり、悲喜こもごものドラマ次々進行中だ。

ところで、入場行進で、民族衣装を着て入場している他国を見て、日本も、着物でもよいのではないか、という声も、一部であがっているようだ。

僕は着物業界の隅で生活させてもらっているものだが、いまの段階では、日の丸をイメージする赤と白のジャケット・パンツで入場するのが妥当だと思っている。

もちろん、希望としては、着物で入場できる環境が整えば良いのに、と願うものではあるが。

皆さんも、色々と指摘されているように、乗り越えなければならない壁は多い。
ただし、絶対に無理、とは言えないので、国民の過半の意思があれば、可能なことだと思う。
一番たいせつなことは、着物ファンの間だけでなく、国民がそれを願い、選手もそれに応える気になることだと思うのだ。

一番、ひっかかるのは、それが、「入場行進」であることだ。最近は、閉会式のようにばらばら歩くことが多く、「行進」の要素は薄れているとはいえ、「運動の祭典の開会式のための、入場行進である」という意味はまだ残っているような気がする。
澤さんがFIFAの最優秀選手に選ばれて、艶やかな振袖姿で授賞式にのぞまれたとき、とっても誇らしい気分になったのだけど、それは授賞式という場であった。
かりに女子が振袖や訪問着で入場し、各国ともそれぞれのハレの日の民族衣装で入場することになったら、「入場行進」の意味は、相当変質してしまいそうだ。
男子の袴姿は行進にもイメージしやすいけれど、女子の場合、どんな着物にするのか、なかなか悩ましいところだ。( 追記 女子も袴がいいかも!)

しかも、普段、おそらく着物を着慣れていない選手たちだ。
着付けの時間や手間がとても大変であることは言うに及ばず、草履を履いて、うまく行進してもらうには、それなりの工夫が必要かと思う。
たとえば、スニーカだけど、外から見たら、足袋に草履に見える新しい靴とか・・(それは着物じゃない!という叱責が聞こえそうだけど)

もうひとつは、それが「公式ユニホーム」であることだ。
充分に調べる時間がなかったので、もし間違っていたら教えて欲しいのだけど、あの赤と白のジャケットは、「ユニホームのうち、競技意外の公式の場面のために着用するもの」として作られているものと認識している。
「入場行進」には、そういった「公式ユニホーム」でのぞむ。そのほかの、記者会見やパーティなどと同じく。
そう整理されているとすれば、入場行進で着物を着るとすれば、(1)「入場行進(着物)≠公式ユニホーム(ジャケット・パンツ)」とするか、(2)「入場行進(着物)=公式ユニホーム(着物)」のどちらかになる。
(1)の場合も、(2)の場合も、それなりに、難しい点はあるように思える。
(1)の場合、各国が追随すれば、上にも書いたように、「オリンピック入場式」の意味も風景も今とはだいぶんことなるものとなる。
おそらく、日本ほどの大選手団が、民族衣装の着物で入場するということになれば、各国との調整が必要になると思われる。
開会式自体がこれだけショーアップしているので、それはそれなりに、あり得る道だとは思う。
各国がそれぞれの民族衣装で出てきたら、面白い・・(かな? たぶん、1回は面白いけど、2回目からは、いつも同じで、楽しみは半減かもしれないけれど)


(2)の場合は、そもそも、着用がそうとう簡単で、着用時も楽なものにしないと、選手たちの負担が大きすぎると思う。たぶん、それを考えて作られた新ユニホーム着物版ができたとしたら、それは、いまある着物とは、かなり異なるものになると思う。

僕は常々、日本の生き残る道の、重要な柱のひとつは、観光立国だと思っている。
そのためには、もっともっと、着物を着るひとが増えて欲しい。
日本に来たら、古い建物が近代建築に混ざっていっぱいあって、着物を着ているひともいっぱいいる。まるで、映画の中みたい!
となってほしい。
が、いまの着物を巡る状況はあまりにも厳しい。

たぶん、いまの国民の過半の意見は、上に書いた事情もあって、「入場行進はジャケット・パンツ」で良い、であるのではないかと思う。

いつの日か、世論が、「入場式には、選手に着物を着てもらおうよ」ということになる日が来るとしたら、その時は、みんなのなかに、「着物」というものが、ある意味復活している時だと思う。


( 写真は アンティークの男襦袢 1932年ロサンゼルスオリンピック バロン西金メダル!