実名ブログを3年やって感じた10のこと
いま、呉服業界で新しいコンセプトの店づくりで旋風を巻き起きしておられる、大塚呉服店の大塚直人さんがブログを始められた。
大塚さんのお店は、伝統的な呉服店とは異なり、若い人がもっとカジュアルに着物を楽しめるようにという提案で満ちている。
業界注目の人だから、きっと、多くの人が彼の考え方やノウハウを知りたいと思っていたに違いなく、素晴らしいことだなと思って、のんびりと読ませていただいていると、最後に、「和田さんご教授お願いします」と指名されて、どきっとした。
それならということで、実名のブログを3年やってみた経験から、少し思ったことをまとめてみた。
あくまで、「実名の」ブログを書く場合、僕が大切と思うことなので、ブログを書いているすべての人にあてはまるものではない。
大塚さん、ご指名ありがとうございます!(笑)
がんばってくださいね!
1. 習慣をつくる
ブログを継続するためには、習慣化が必要。僕も過去に何度もブログをはじめてやめた。ブログの継続がよいこととわかっていても、いつ書くか、それを生活の中に組み込んで習慣化しないと、やがて途切れて挫折してしまう。
僕の場合は、ほとんど何があっても、4時半過ぎに起きて会社に来て、ブログを書くことを習慣にしている。これを習慣にしてからは、3年近く毎日の更新を続けることができている。
誰にとっても早朝がベストとはいえないが、不規則な生活だとしても、どこかに習慣としてビルトインすることが、長く続けるコツだと思う。
2.宣言する
モチベーションには波があり、著しく下がる時もある。
そんな時、たとえば「3年間は、最低週2回ブログの更新をします!」とブログ上で宣言しておけば、モチベーションがマイナスになっても、なんとか更新することができる。
慎重にゴールを設定して、それを宣言しよう。
実名ブログなら、宣言してしまえば、簡単には辞めることはできない。それがほどよく、僕らを縛る。
3.読者にその日自分が提供できるベストなものを提供する
実名のブログを書くということは、おそらく、自分で事業をやっているとか、自分として世界に何かを発信したいという思いがある人がほとんどだと思う。(会社などの組織人の場合、実名にするメリットは少なく、匿名ブログのほうが断然良いと思う。)
商売をしているにせよ、何かの活動をしているにせよ、その思いは同じで、世間になにがしかの良いインパクトを与えたいと思ってのことだと思う。
ブログなんて役に立つことを書かなくていい、という意見もある。しかし、実名ブログなら、誰かの役に立つことを書くべきだと思う。
それは、商売と結びついていて売上につながるような内容の場合もあれば、あるいは、読者にクスっと笑ってもらって、少し気分を明るくできるようなことでもいいと思う。
商売や活動と同じで、自分が提供できるベストなものを、その日のブログ記事として、提供していく姿勢が大事かと思う。
4.言いたくない話こそシェアする
自慢話がしたいのは、やまやまだ。
でも、無名の人の自慢話を聞きたい人は、世の中になかなかいない。
一方、失敗した話や後悔した話、辛い話は、誰かが聞いてくれる。
あるいは、自分に役立つ話は、わざわざ探して読みにきてくれる。
実名のブログの場合、失敗した話は恥の上書きになるし、自分が見つけ出した商売に便利な方法などは、ライバルに水を送る行為になってしまう。
だけど、実名ブログを書くということは、自分の愚かさもさらけだし、あるいは、内緒にしておきたい役に立つことも共有するということだ。
世間に良いインパクトを与えるための踏み台になる。
僕もそれがまだまだ不十分だけど、少なくともそういう姿勢で書いていきたいと思っている。
世間はその姿勢に充分過ぎるものを返してくれると信じている。
5.役に立つか立たないかは、書いてみるまでわからないことを肝に命じる
僕は自分の商売をはじめて13年目だが、僕の業界にはこの道何十年という方も多くいる。
何かを書こうとする時、いつも自分がそのことを充分知り尽くしているとは思えず、自信を失う。そして、いつか、僕が彼らの域に達したら、そのことを書こうと思う。
その姿勢では、何も書けなくなってしまう。
始めたばかりの選手は、始めたばかりのフレッシュな感想が書けるし、その道13年選手は、13年目の意見が書けるし、その道30年選手は、30年目の意見が書ける。
その道に長くいることで、もちろん専門知識は広く深くなる。が、何十年も前の始めたころの気持ちはすでに忘れてしまっており、そういう人たちの琴線に触れることは書けないかもしれない。
とにかく、現時点で、自分ができる最高の情報提供をする。それが役に立つかどうかは読み手が決める、ということで良いかと思う。
6.想像より読まれなくても3年は続ける
とにかく、読まれない。
実名のブログなら、書ける範囲がある程度決まってくるし、基本的には面白い内容にならない。
匿名ブログなら、まあ言えば、週刊ポストのような楽しみを提供することだってできるけど、実名ブログは新聞ぐらいにしか「砕ける」ことができない。また、あちこちに配慮する必要もあるので、どうしても記事の切れ味が鈍くなる。
とにかく、読んでもらえないと覚悟して、3年は続けることが必要だと思う。
反応が薄くても、はてなブログで3年続けると、いつかは記事が爆発的にヒットすると思う。あのちきりんさんも、人気化するまでに3年間の無名時代があったことを考えれば、「石の上にも三年」はブログにもあてはまりそうだ。
2,3か月で人気化するかたもおられるけれど、そういう方は一種の達成感を味わってしまい沈静化してからモチベーションが保ちにくい面もありそうだ。その点、静かな2年、3年を経ていると、沈静化してもモチベーションを保つことができる。
7.書くことがなくなってしまう心配はいらない
このブログを書き始めたころ、1か月ぐらいはネタがあるけど、その後はどうなるんだろうか、と思っていた。ネタ切れの前に、ある程度、読んでくれる人が増えたらいいなと。
たしかに、1か月ぐらいでネタは切れた。かつ、読者も増えなかった。
僕の場合は、やがて、海外のサイトで役に立つ情報を探してきて紹介することを始めた。それなら、自分の身内に書きたいことが見つからないときでも、読みに来てくださる方に役に立つ情報を提供することができる。
また、自分が体験した同じ内容だけど、違う角度から、違う編集で、違うたとえで書くことも、また、読者の役に立つことがあることがわかってきた。何度も書くことで、書く技術、伝える技術も向上した。
ともかく、書くことがなくなる心配はいらない。
8.実名で書くことのリスクを学ぶ
可能な限り多くの人に配慮し、人を傷つけないように書く。
だけど、それを突き詰めれば、書けることがなくなってしまう。
たとえば、「父としては、娘に良い結婚相手を選んで欲しいけれど、それよりなにより、自立のスキルを身につけよと伝えたい」というような記事を書くとする。
だが、世の中には、自立したくても病気やさまざまな理由でそれができない人もいる。そういう人がその記事を読まれたら、苦い思いを抱かれるだろう。
あるいは、娘を持つことの素晴らしさを書いてそれが拡散されれば、子供が欲しくてもできない方々には、見たくないものが流れてきたと思われるかもしれない。
注意深く書いたとしても、そういったことはおきる。
そのリスクを学びつつ、書ける範囲を手探りで探していくほかない。
9.批判、嘲笑、断罪への耐性をつける
「あほ、馬鹿、間抜け、またおまえか、黙れ◯☓△☓???☓◯☓△☓???☓◯☓△☓???☓
◯☓△☓???☓◯☓△☓???☓◯☓△☓???☓◯☓△☓???☓◯☓△☓???☓
◯☓△☓???☓◯☓△☓???☓
◯☓△☓???☓◯☓△☓???☓◯☓△☓???☓!!!!」
どんな名著であっても、一定数のそれを認めない人がいる。
ブロガーさんや、著者の多くがその辛さについて語っている。
ずっと黙って下を向いているか、少しづつ、それへの耐性を培っていくか、どちらかの道しかない。
10.信じる
実名ブログを始めるということは、自分の未熟さや弱味を晒してたとしても、声をあげて生きていくという決意だ。
自分のブログに価値があるかどうか、僕も、時々悩み、やめてしまいたくなる。
実名ブログを続けるということは、そのブログが、誰かにとって価値があると信じることだ。
自分の生き様が、誰かにとって価値があると信じることだ。
自分のやっていることが、誰かにとって価値があると信じることだ。
自分の声が、誰かにとって価値があると信じることだ。
僕も、信じる努力を、続けていきたいと思っている。
Photo from Death to The Stock Photo