野田首相のどじょう弁論術と原発問題
野田首相の評判があがっているようだ。
橋下市長をはじめ、対立した小沢氏からも、たいしたものだ、と評価したという話が漏れている。
たしかに、今回の消費税増税と小沢氏の離党の経緯に関してだけでなく、感じることがある。
野田首相の国会での答弁などを聞いていると、いつも、反論が鮮やかである。
自陣への攻撃は、あるときは神妙に、あるときは、論点をずらしてやり過ごし、敵陣の弱みを堂々と正論で突く。
ついつい、なるほど、と頷いているうちに、嘘八百のマニフェストで政権について、いまだ平然と国民を導こうとしているという、根本的な問題は忘れてしまう。
むかし、サラリーマンだったころ、遠慮のない部下が、僕と僕の上司Mさんを評して、
「和田さんは、信念がある。Mさんは、白を黒と説得するチカラがある」
と言った。
一瞬、褒められたものと思い喜んだが、よく考えたら、まったく失礼なやつである。
僕に対する評価は、「自分が正義と思うことには強いけど・・・・・」であり、Mさんの評価は、「組織として必要なことは、どんなことであれ、周囲を説得してその方向に導くチカラがある」ということである。
腹が立つことに、彼女は慧眼であった。
僕は耐え切れずに会社を去り、Mさんはさっさと取締役になられた。
野田首相の答弁を聞いていると、部下のこの悔しい話を思い出すのだ。
どじょうだ、不人気だと自嘲しながら、いつのまにか、白も黒といいくるめてしまうチカラ。
たしかに、良い政治家は、そんなチカラを持っているのであろう。
そして、国が危機にあるとき、そんなチカラこそが必要になるときもあるであろう。
僕もおおいに、野田首相の力量を認めるものではあるけれど、このままいくと、ふと気がつけば、原発も継続止むなしと、説得されてしまうのでは、と怖くなってしまう。
僕の意見は、中長期の脱原発はどんなことがあっても達成しよう。そのための、現実的な目標と方法を国民で共有しよう! という、ごく中庸なものである。
野田首相と、原発即時停止派がディベートし、それを国民が優劣をつけるとすれば、おそらく、野田首相が優勢に終わるであろう。
しかし、たとえば、橋下大阪市長と野田首相がディベートしたら、どうなるだろう。
僕は、いい勝負になると思う。
野田首相は、6月8日、大飯発電所3、4号機の再起動時の記者会見で、こう述べられている。
「一方、直面している現実の再起動の問題とは別に、3月11日の原発事故を受け、政権として、中長期のエネルギー政策ついて、原発への依存度を可能な限り減らす方向で検討を行ってまいりました。この間、再生可能エネルギーの拡大や省エネの普及にも全力を挙げてまいりました。
これは国の行く末を左右する大きな課題であります。社会の安全・安心の確保、エネルギー安全保障、産業や雇用への影響、地球温暖化問題への対応、 経済成長の促進といった視点を持って、政府として選択肢を示し、国民の皆様との議論の中で、8月をめどに決めていきたいと考えております。国論を二分して いる状況で1つの結論を出す。これはまさに私の責任であります。」
基本的には、「原発への依存度を減らす」方向をもって、中長期のエネルギー問題を考え、8月にその結論を出す」とおっしゃっているのである。
しかも、それまでに「政府としての選択肢を示し、国民の皆様と議論する」とおっしゃっている。
すでに、もう、7月12日である。
少なくとも、僕は、政府がどんな選択肢を示したのか知らないし、一国民として、議論した覚えもない。
日本の未来を決めるこの大事な節目の日まで、あと40日しかない!
野田首相!
まさか、このまま、「国民と議論した結果」などと言うつもりじゃないでしょうね!
いくらあなたが、白を黒といいくるめるチカラを持っている大政治家だとしても、それはあんまりというものだ。
( 写真は 浦島太郎の袱紗 しばらく竜宮城で遊んで未来の日本に帰ってきたいな)
(7/18日 追記)野田首相!失礼しました!こちらに至らぬ点、追記しました