世界を旅をすると、やっぱり、人生観は変わる(Maptiaの挑戦を見よ!)
ネット上で何度も繰り返される、定番の二項対立的な話題がある。
「厳しい仕事に鍛えられて、人間は成長する」VS「厳しい仕事を我慢しても成長なんてしない」
「英語は必要」VS「英語なんて不要」
「夢を持て。夢の実現のために努力せよ」VS「夢なんて、めったに叶わない。子どもたちに夢を持てというのはやめよう」
などなど。
もちろん、どちらの意見にも真実は含まれているが、おおむね、マスコミや会社、学校などの公の場では、前者の意見が喧伝されるため、ネット上では、後者の意見がホンネとして語られることが多い。
「世界を旅したら、人生観が変わる」VS「世界を旅しても、人生観なんて変わらない」も、そういった二項対立的な言質のひとつで、とくに、若いかたは、後者の意見をネット上で主張されることが多いようだ。
しかし、もちろん、表の世界、大人からは、こんな反論がされる。
世界を旅しても、何も変わらないなんて、いったい、お前は何を見て来たんだ?
インドのレストランで、テーブルの下で這いつくばって、一日中床を掃いている若者を、単に「見てきた」のか?
彼に話しかけて、彼がどんな気持ちで、その仕事をやっているのか、彼の両親はどんな仕事をしていて、どんな家に住んでいるのか、将来の設計や彼女のことや、神の存在のこととか、夢とか、訊ねてみたのか?
バイクに乗っているベトナムの若い女性を、たくさん「見て」、ただ当たらないように避けてきたのか?
彼女のうちの一人を呼び止めて、どんな工場で一日何時間働いているのか、給料はいくらなのか、どんな家に住んで、親たちはどんな仕事をしているのか、一番買いたいものは何で、将来の夢とか、ベトナム戦争を戦ったおじいさんおばあさんたちのこととか、訊ねてみたのか?
お前の旅は、上っ面を「見る」だけなのか?
それぞれの人たちには、それぞれの固有の人生と世界があって、それを相手の立場に立って理解してみよう、相手の目線で世界を見てみようという努力をしてみたのか?
それだけで、人生観が180度変わることはないかもしれない。
だけど、そういう体験をしたら、人生と世界をもっと多面的に見ることができるようになるし、少なくとも、あなたの世界を見る角度が、ほんの少し変わるかもしれない。
そして、そういう体験を重ねたら、いつか、劇的に考えが変わる可能性はある。
と、まあ、こんな具合だ。
有吉くんは立派なオトコだと思うが、この点に関しては、僕は、「世界を見たって、人生観は変わらない」よりも、「世界を旅したら、人生観が変わる」を圧倒的に支持する。
ところで、先日、旅に関する言葉を紹介したが、そのソースであるMaptiaというサイト(現在構築中)が何をやろうとしておられるのか、直近のブログで、はっきりとわかり、また、背筋に震えが来るほど感動した(カンドー、カンドーって安売りするのは、止せ! いや、今回限りのお買い得です!)。
彼らは、世界地図に、様々なストーリー(物語)を重ね合わせた、あたらしいウェッブサイトMaptiaをつくろうとしているのだ。
なぜか。
長く続いた「Introspection(内省)」の時代から、今は「Outrospection(アウトロスペクション)」の時代になっているという。
「Outrospection(アウトロスペクション)」とは、歴史文化学者ローマン・クルズナリック(Roman Krznaric)が唱えた概念で、他者を知ること、他者の世界観と目線で世界をとらえなおしてみること、を意味する。
自らの内面を見つめる時代から、狭くなった世界、あらゆる人との距離が短くなった世界、その世界と濃密につながって生きていかなければならない世界となった、ということだろう。
そして、「Outrospection(アウトロスペクション)」を得るためには、他者への共感(emapty)が一番大事だと。
それは、他者に同情したり、憐れんだりすることとは、違う。
いわば、その人の内面に乗り移って、その人の内側から、世界を見て、その人が感じていることを、同じように感じることなのだ。
もちろん、そうはいっても、他者への共感というものは、距離に反比例して感じにくくなっていくし、身近なものでも、時間がそれを隔ててしまう。たとえば、中央アフリカで起きている飢饉についての心配は薄くなりがちだし、地球温暖化が、未来の世代に及ぼす影響についての心配も、後回しになりがちだ。
しかし、その溝を埋めるのが、それぞれの個人がもっている独自のストーリー(物語)なのだ、という。
そのストーリー(物語)を共有することで、距離と時間を埋める共感が生まれる。
そして、それをするに、今はインターネットがある。
だから、彼らの新しい地図、Maptiaは、ネット上で、地図と物語の統合を試みようとしているのだった。
それは、今の時代に、一番必要な「Outrospection(アウトロスペクション)」を世界的な規模で醸成しようとする、きわめて野心的なチャレンジなのだ。
素晴らしくはないだろうか?
興奮しないか?
多くの若者たちが、「世界を見たって人生観は変わらない」と言い放つ日本。まるで、いまだに、「Introspection(内省)」の時代に閉じ込められているみたいだ。
しかし、「Outrospection(アウトロスペクション)」の時代にふさわしい希望に満ちたチャレンジをしようとするものたちが、海の向こうにはたくさんいるのだ。
僕は、Maptiaの始動をワクワクしながら待っている。
(追記)上記に書いたブログのほか、素晴らしい日本語の記事、「etrospect 2012 – 時間/空間/共感」も参考にさせていただきました。
(追記2)以前の記事を書いた時に、MaptiaさんのFacebookページに行って、紹介しましたと連絡したら、とても喜んでくださいました。もし、Maptiaさんのことを気に入って、応援したいと思ってくださったら、ぜひ、Facebookページで、日本からの「いいね!」を押してあげてください。また、みなさんも、それぞれのブログやメディアでどんどん紹介してあげてくださいね。なお、英語OKのかたは、上にも書いた直近のブログ、The Age of Outrospectionは、非常に勉強になり、また、刺激的なリンクも含まれているので、ぜひ、一読を。