親と子の定番ストーリー
父親や母親と子供の価値観が大きく異なることは、いわば定番であり、いつの時代にもあり、多くのドラマや小説になっている。
そんなことは、何度も擬似体験している、百も承知していると思いながら、人は親になり、ふと気がつくと、子どもたちとの価値観の違いに直面していて、びっくり仰天するのである。
わかっていたはずなのに、親たちはあたふたとして、まず、子どもたちに、自分の価値観がいかに正しいか、子どもたちの考えがいかに甘いか、世間というのはどういう仕組になっているのか、一生懸命説明しようとする。
しかし、たいがいそれは受け入れられない。表面上は受け入れられることがあっても、それが心の芯で受け止められることはない。
子どもたちは大人になり、いつかのタイミングでそれがあらわになる。
親はやっと納得する。
親子の対立、価値観の違いは、映画の中の他人の話ではなく、まさに自分におきることだったのだと。
親たちもそこで成長する。
子どもには自分たちとは違う価値観が生まれて、それがしっかりと育っていることを知る。子どもたちはすでに自分たちの庇護の中にはおらず、自分たちで幸せに生きていく道を見つけなければならないことを受け入れる。そのためには、子どもたちのそれを認めて、せいぜいその成長を祈ることしかできないことを、知るのである。
そして、親たちは、自分の価値観、つまり、自分の人生が、誰あろう自分の子どもたちに否定されたと思い、なんだか自分が錨の切れた船のように漂流しているように感じるのだ。
その船で漂っている海には、「老い」の匂いがする。
しかし、これがきっと、子どもを育てるということだ。
これこそが、無事に子どもたちを成人させるという、人生最大の仕事のひとつのゴールであるに違いない。
明日、娘の、結婚式だ。
幸せになれ。
photo by peter castleton