ビジネス、才能、そして「書くこと」
僕に投げかけられたふたつの問いが、頭の中をぐるぐると回っている。
それには、自分なりの答えを出したはずのものなのに、まだ、頭から消えてくれない。
その場では、もちろん、いつも考えている答えを言わせてもらったのだが、例の調子で、ちゃんと喋れたとも思えず、伝わってないなとフラストレーションだけが残った。また、いまだに頭にこびりついているところをみると、やはり、自分としてもはっきりした答えを持っていなかったんだなとも思う。
その問いとは、
(1)事業と書くことについて
Aさん:なぜ、君は、そこまでやれているのに、なぜ全力で、事業を拡大しようとしないんだい?
僕:してます
Aさん:なら、本なんか書いてる暇ないだろう
(2)書くことと才能について
僕:毎日、毎日、1時間でも書いていたら、3年後には、自分がほんとうに語りたいことがみつかるよ。自分の声が。
Bくん:はい、僕も書くこと始めました。
Aさん:いや、書いても書いても、結局は、才能だよ。『火花』、読んだかい?あれは素晴らしかった。結局、書くことは才能で、そういう人は言葉が頭の中で渦巻いて破裂しそうになっている。そうでない人が書いたところで、たいしたことは書けないよ。
僕:・・・
おそらく、仕事をもち、家族をもち、なお、書いている人たちの多くは、そういう問を投げかけられることがあるし、また、ご自分でも常に考えられていると思う。そして、もちろん、答えはそれぞれ違う。
僕も、自分の頭を整理するために、いま、これを書いている。
1.頭の中に言葉が足りない。大江健三郎氏やガルシア・マルケスみたいにはなれない。純文学的な才能がないことはわかっている。
2.それでも書きたい本能がある。
3.一流の起業家になる資質がないことは、わかっている。
4.従業員のため、それでも、安定した拡大はしたい。だが、そのために、無理な販売を従業員に強いるような会社にはしたくない。自社が安定して発展できるようなポジションを必死で探し、現在、それを実現しようとしている最中である(説明にはかなりの時間がかかる)
5.自分がもっともインパクトを持って伝えることができるのは、自分が経験したことである。それが、ブログ、ビジネス本、小説、とどんな形態をとるにせよ。純文学的な才能のない自分は、自分が体験し学んだことしか、自信を持って書けない。おそらく、それにしか、価値がない。
6.だから、僕は、自分の事業を伸ばすという旅を続けるしかない。そして、そこで感じた風景や体験を書くしかない。
7.それが、僕が50数年かけて見つけた、僕の人生である。
8.(1)も(2)も、真理である。ただし、それは、僕にとっての真理ではない。
photo by Kristina Alexanderson