ビジネススクールにでも行っときゃよかった!
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若いやる気のあるビジネスマンなら、経営についてもっと学びたいと思っているのではないだろうか。
僕も若いころそう思って、さまざまな本を読んだ。
しかし、もうひとつ、身についたという感覚がなく、読み過ごした情報量だけ増えていったように思う。
昨日、頼まれていた長い原稿がやっと終わったので、温めている小説のストーリーを考えていた。それを完成できるかどうかわからないのだけど、地方百貨店の再建を40代のビジネスマンの人生の再生とからめて書く予定である。
おおむねプロットはできていると思っていたのだけど、細部まで考えてみると、さまざまな問題が出てきた。
実際に設定した状況のなかで登場人物を動かしてみると、会社の意思決定の仕組みや資本や負債などの経営指標をリアルに感じることが必要になり、実際の地方百貨店の歴史やバランスシートをかなり時間をかけてみることになった。
そして、本来何度も見たはずの言葉、たとえば、バランスシート上の「流動負債」と「固定負債」*1の違いみたいな基本中の基本まで、見なおして確認しなければならないことに気がついた。
骨董や古裂の世界では、買ってみなければわからない、ということが常識となっている。
美術館や本などで、いくらでも情報を得て、それを覚えることはできる。
でも、「仕入れる」「買う」、それも、商売上の行為としてやらなければ、ほんとうに自分の知識とならない。
その違いは、経験のない人が想像するより、もっと歴然とした、リアルなものだ。
骨董の世界で成功するには、勉強も大事だけど、度胸が必要と言われる。何百万円、何千万円のものの真贋を短時間で判断して、買う判断をしなければならない。度胸のある人はそれができるので、高価なもの、ほんとうの意味で、価値のあるものを、自分の知識にしていけるのだ。
勉強だけして度胸がないと、知っていたはずなのに、何百万をつぎ込むことに躊躇する。そして、その機会を逃し、また次の機会をと思って勉強するのだが、つぎの機会にもまた、どこか不安が残って、大金を投じることができない。
そうして、結局、ずっとそいうものを、本当の意味で知ることはできないままなのである。
経営を学ぶことも、骨董と同じではないかと思う。
いくら本を読んでも、日経新聞を読んでも、わかったようになっているだけで、その本質は、やってみなければわからない。
僕が会社にいたとき、「経営企画部」というようなところにいたことがあるし、かなり本も読んで勉強したほうだと思う。
それなのに、今頃、「流動負債」と「固定負債」の違いはなんだっけ?と思うのは、借金や出資が本当のところどういうものか、血肉のように身体に染み込ませていないからだ。
12年、小さな会社を経営しているから、会社勤めしている時より、経営についてその本質を知った部分は大きいと思うが、現金商売であり、目利きが必須のファミリービジネスという事業の性格から、他人資本について、あるいは、スケールするということについては、何も知らないも同然なのだ。
さて、しょせん、やってみなければわからないとは思うのだけど、昨日、プロットを考えていた時、ああ、これは、僕の知らない部分の経営の良い勉強になるなと気がついた。
リアルなプロットを考えるためには、それぞれの登場人物になりきって、与えられた状況でどう判断するか、考えなければならない。
そう思ってバランスシートと損益計算書を見ると、いままでとは違う深さで見えてくるのだ。というか、疑問が次々に湧いてきて、それを調べることで、さまざまな要素が腑に落ちていくのである。
先日、最速で学ぶには、学びながら教えることであるという記事を紹介したが、経営を学ぶことについても、実際にやってみる以外に、単に本や新聞を読むだけではなく、きっともう少し身につくやり方があるなと思った。
たとえば、今の僕のように、ビジネス小説を書いてみるとか、あるいは、どこかのビジネススクールに行って、徹底的にケーススタディをやったらどうだろうか。
会社員時代の僕は、どちらかと言えば、ちゃんと読めば足りるでしょうと思っていて、ビジネススクールに行く必要性をあまり感じなかった。
しかし、そこで、何人かで発表したり、徹底的に議論して、その場その場の経営者の判断が正しかったのかどうかを議論してみたりすることは、おおいに理解を深めるだろうと思う。
そういう体験は、本を読むだけでは得られない、よりリアルな学びになるように思う。
もちろん、よく言われるように、株を買ってみることは、株主として、「実際にやってみる」ことになるので、とても有効だと思う。
ただし、頻繁に売り買いするのではなく、バランスシートや損益計算書をちゃんと読み込んで、将来性があると思える株を買って、長期保有するのだ。
それも経営を学ぶ良い訓練になることは間違いないと思う。
ふう。
しかし、会社員時代の僕は、ほんとうに、どちらもしなかったなあ。
何してたんだろう・・・