目の前に次の電車が扉を開けて待っているのに、「乗り遅れてしまった!」と行ってしまった電車を嘆くなかれ
30年ほど時計の針を戻してみよう。
1985年、昭和60年。
僕は26才、入社2年目である。
夏目雅子がこの世を去り、スーパーマリオブラザースが発売された。
久米宏の『ニュースステーション』が始まり、『 8時だョ!全員集合』が終了した。
前席のシートベルト着用が義務化され、1ドルは200円台から100円台に高沸。
さてその頃、ドメインネーム(◯◯.com)の登録は、誰にでも無料でできた。
巨万の富へのチャンスは、誰にでも平等に、これ以上ないほど広く開かれていた。
もし、タイムマシンがあって、その時代に帰れたら・・・
でも、そのチャンスの扉はもう閉じられてしまった。
では、20年、針を戻す。
1994年。アマゾンが創業された年だ。その頃に、もし自分が起業家だったら、アマゾンのような巨大なオンラインショップをつくるチャンスがあったかもしれない。
いた、確かに、そのチャンスは誰にもであった。
しかし、そのチャンスの扉はもう閉じられてしまった。
1997年。楽天創業。
17年前に戻れれば、楽天のようなオンライン・商店街をつくれたかもしれない。
そして・・・
1998年。グーグル創業
2004年。フェイスブック
2005年。ユーチューブ
2006年。ツィッター
2007年。iPhone
こうして、現在の主なウェッブサービスが出揃った。
それぞれのサービスが開始されて、それが世界を席巻し、僕らの生活を変え、そして同時に、チャンスへの扉は次々に閉じられた。
もちろん、ほとんどは、自分にはその時点で想像もできなかったことを、現実のものにした天才起業家たちの仕事だけど、最初にあげたドメイン名の登録のように、気づいてさえいれば誰にでも開かれていたような扉もある。
そして、その扉が開かれていた時代を羨み、自分がもしその時その場にいればなあと思ってしまう。
だけど、ちょっと考えれば、もっと大事な真実に気がつく。
たった今、現在も、大きなチャンスの扉は、誰にでも平等に開かれているのに、そのことに気がついていないのだ。
30年前の自分と同じように。
もしタイムマシンがあって、30年後へ行き、そこから起業家を連れてくれば、2014年に開かれている多くのチャンスに大喜びをして飛びつくことになるだろう。
2050年に、技術がどこまで人の生活を変えているか想像するのは難しい。だが、30年前を振り返って考えてみれば、それが現在とは相当異なるものになることは明らかだ。
しかし、それを想像するのはかなり難しい。
この30年、ビジネスのチャンスをずっと追ってきたものが、こんなことを考えていたと告白すれば、若い人は「なんたるバカ!」と思うだろう。しかし、たとえば僕は、正直に言えば、その時々にこんなことを考えていた。
パソコンを買おうかな、それとも、ワープロを買おうかな?
インターネットでファッションなんて売れるようになるんかな?
やっぱり、携帯、持たなきゃだめかな?
ユーチューブなんて、短くて画像も荒いし、面白くないじゃん!
ブログって、なんで、わざわざネットに日記書かなあかんのん?!
iPhoneみたいな長方形の板みたいなカタチ、電話として使いたくないわ!
今、冷静に考えれば、未来はインターネットとモバイルがまったく違うものに変えてしまうことは、火を見るより明らかだったのだ。
だが、人間は「今と過去」を見るのは得意だが、「今と未来」を想像するのは、相当苦手だ。
たぶん、それは僕だけではないだろう。
ついつい、過ぎ去った列車の後ろを見て、「乗り遅れてしまった!」と思ってしまう。そして、目の前で扉を開けて停車している電車に、気がつきもしないのは。
僕らの目の前には、いまも、最高のチャンスが開かれている。
新しいサービスや事業を始めるのに、遅すぎるということは決してない。
常に、「今こそ」が、人類の新しい歴史を始める、最高の時なのである。
*WiredのKevin Kelly氏のMediumの記事『You Are Not Late』にインスパイアされて書きました。最後の2行はKevin Kelly氏の記事の最後の文章とほぼ同じです。(原文:What you may not have realized is that today truly is a wide open frontier. It is the best time EVER in human history to begin. You are not late.)
photo by jay mantri