ICHIROYAのブログ

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両親が80代になってはじめて知った9つのこと

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 たいていのことは、学校や本を読むことで学ぶことができるけど、ほんとうに大切なことは体験してみないとわからないってことも多いようだ。
 僕が言っているのは、「老いる」ということ、「老いた両親をみる」ということについてだ。
 僕は長男(妹がひとりいる)、嫁は一人娘だ。数年前に嫁のお母さんが亡くなるまで両方の親が存命で、いまもありがたいことに3人が生きてくれている。みんな80歳以上になった。
 3人のうちふたりは認知症になった。
 実際のところ、僕が失敗した便を始末しているわけではない。嫁のお父さんはうちの家にいて嫁がヘルパーさんに助けてもらいながらみているし、僕の母は父とふたりで住んでおり、父と妹が面倒をみてくれている。
 僕には介護についてあれこれと偉そうなことを言う資格はぜんぜんないのだけど、体験してみてはじめてわかったこと、事前に想像していたこととは違うように思えたことがたくさんあった。
 たとえば、何年か前に、高名な作家さんのこの本を読んで、なるほどと思ったものだが、いまでは相当無理なことが書いてあったんだなとわかる。

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 そこで、そういった知識をもう少し、事前に共有できたら良かったなと思ったので、僕が気づいたことをまとめてみた。
 プライバシーの問題もあるので、僕と嫁の両親の話だけでなく、親しい知人の体験談も一部題材にした。
 また、僕は介護の専門家ではないし、個人的な体験だからどの程度役に立つかはわからない。

 1.認知症は急激にすすむ場合がある

 認知症が進む速度は予想よりかなり早い。ちょっと話がおかしいなと思っていたら、半年ぐらいで急に悪くなったりする。脳の画像から、「萎縮はなさそうですね」と言われていても一気にすすんでしまう場合がある。
 介護施設や高齢者向けマンションの入居を検討するとき、認知症は遠いことと思って決めると失敗することがあると思う。

 2.安心しきると認知症はすすむ

 ひとりで住んだり、ふたりで住んでいる間はそれなりに毎日しなければならないこともあるし、心配ごともある。だけど、誰かの世話になりきって安心してしまうと、頭にはよくないようだ。くわえて、自分の死後のために、銀行口座の一覧や資産の状況などをまとめて子供に渡すなどをして、あとの憂いがまったくないという状況になってしまうと、そのことがさらに精神衛生上悪く作用する(と思う)。
 あるひとはそういうことがあって以降、堰が崩れたように認知症が進んだ。
  

3.骨折などで入院するとせん妄状態になるが退院すると回復する

 歳をとると転倒して骨折をしたりしやすくなる。入院して手術が必要となると、「老人性せん妄」という状態になる方も多い。急に被害妄想的になったり幻覚が見えたりする。入院するのは外科だから、病院はそこまでケアしてくれない。「手術すると認知症がひどくなりますが、本当に手術しますか?」などと言われたりする(老人性せん妄のことは一言も言わず)。夜間に騒いだりするなどひどい場合は、病院から24時間の付き添いを要請される。しかし、老人性せん妄は自宅へ帰るなど慣れた環境に帰ると収まるので、骨折の治療をまず優先してするべき。

4.認知症の治療は腰痛の治療にも似て。薬も場合によってはリスクがある

 認知症の治療は、腰痛の治療にも似ているなと思っている。脳の画像などを撮っても、「少し縮んでいるようですな」とか言われる程度だが、症状は「少しうんぬん」というような生易しいものではない。評判を聞いたり情報を集めて近辺の医者を連れ回ってみても病名もはっきりしなければ治りもしない。何種類かの薬は、突然同じ行動を繰り返しはじめたり、便所で呼吸ができなくなって倒れたりと、かえって病状が悪化した。効かないどころか、老いた身体にはかえって悪い場合もあるので、服用後はその変化を注意深くみる必要がある。

5.いちばん近い肉親、介護する子などとの関係が難しくなる

 認知症の初期は被害妄想的になる場合が多いようだ。その矛先が一番親しいもの、面倒をみているものに向く場合も多い。
 そうなると、認知症の診断はそもそも難しいから、認知症と知らずに、ほんとうは一番大切なひととの関係が悪化してしまうこともある。
 辛い。なにが辛いと言って、それが一番辛い。

6.認知症の診断がなくても判断力がまだらになる

 言っていることに論理的に明らかな間違いはなく、身の回りのことはちゃんとできて、話を聞く理解力はある状態であっても、もっとも肝心なことに関する判断力・行動力がないという場合がある。
 そういう場合、もちろん、医者に連れて行っても(医者に連れて行くのが難しいが)、医者からは認知症の診断はでない。でも、家族はめちゃくちゃ困っている。
  やっぱり、朝鮮出兵を決めた豊臣秀吉の晩年は、きっとそんな状態だったのだろうと思う。

7.介護では便の始末が一番大変。起きているようにさせるのが難しい。

 実際問題として一番大変なのは排泄の問題だ。身体に大きな病気がないのなら、起きていてくれたらいいのだけど、やることがないと言って一日中寝てしまう。寝てしまうと夜中に起きてくるなどの問題もあるけれど、一番の問題は排便で、排便に必要な筋肉や感覚がおちてなくなってしまうのだ。オムツをしても簡単には解決しない。
 だから、せめて昼間は起きていてもらおうとするのだが、起きていてもらうことが、とにかく至難の技なのだ。

8.ケアマネさんが親身になってくれる。神々しいまでに働くヘルパーさんたちがいる

  しかし、ケアマネージャーさんが本当に親身になって相談にのってくれてアドバイスをしてくださる。また、ヘルパーさんたちが素晴らしい仕事をしてくださり、助けてくださる。いつもお世話になっているヘルパーさんたちの仕事ぶりは神々しいばかりで、ほんとうに頭が下がる(ありがとうございます!)
 

9.超高齢化社会に向けて社会がどんどんすすんでいる

  僕の住む地域でもグループホームや高齢者向け住宅などの増設が急ピッチですすんでいる。もちろん、様々な問題はあり、まだまだ不十分だろうけど、福祉介護関係の政策、行政、民間の取り組みは目覚ましい結果を出しつつあると思う。
 基本的には、ぼくらの住むこの社会は、超高齢化社会の問題を解決するチカラがあると信じて良いと確信している。

 

*追記 介護や老いについて伝えきれない思いは短編小説にも書いています

 

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