でっかく遊べ50代! レースにデビューするぞ!
昨日、師匠から電話がかかってきた。
11月のレースに出ろ、と。
昨夜、眠れぬ夜を過ごした。
カーブを曲がりきれず、高速カーブに突っ込んだらどうしよう。
接触してコースアウト、壁に激突したらどうしよう。
一度だけ、サーキットのちょっとしたレースのようなものに出たことがある。
みんな猛者である。
タイムトライアルで、ぶつかっちゃったよ、と言って、
ひん曲がって、タイヤにかぶったボディを、カナテコでがんがん打ち出して、また、コースに戻っていく猛者たちなのである。
僕も、また、あの猛者たちに混じって、レースを走るのか?
寝汗をかいて、がばっと飛び起きる。
できることなら、レースから引退したい。
なぜ、走らなきゃいけないのか・・・
自問しながら、目を閉じる。
あれは半年前。
師匠の運転技術を見て、おいらも、走るんだと決心したのだった。
それまでのおいらは、後ろからくる車にはかならず道を譲り、横に走る車の前には決して出ず、制限速度を守り抜き、ゴールド免許歴ウン十年だったのだ。
しかし、師匠との出会いで目が覚めた。
いまでは、カーブと見れば、血が騒ぐ。
アクセル全開で突っ込んで、ガツン!とブレーキを蹴りこみ、横Gを感じながら、ブレーキをゆるめ、ぐいとアクセルを踏み込んで、立ち上がっていく。
エアゲージを買い、生まれて初めて自分で空気圧を測り、車高調を入れて足回りを硬くした。
タイムアタック用に、計測器も導入したのだ。
もちろん、スピードリミッターもカットしてあるのである。
でも、やっぱり、レースは怖い。
セナだって怖かったのだ。
ついつい、横で寝ているラブを揺すり起こして聞いてみる。
やっぱり、走らなきゃ、だめかい?
そしたら、ラブが言うのだ。
もう、50超えてるんでしょ、でっかく遊ばなきゃ!
いくら、ひとの役に立つことがしたいって言ったって、どの程度の影響力で、どの程度の大きさで、どの程度のたくさんのひとの役に立てるかは、見えてるんでしょ?
ちょっとぐらい仕事をサボったって、誰も困らないよ。
どうせそのうち、誰もあなたを必要としなくなって、そこをどけって言われるのがオチ。
だから、軸足を、少しづつ、移していくのよ。
さあ、おもいっきり遊ばなきゃ。
で、どうせ遊ぶなら、いままで経験したことがないレベルで、遊ぶのよ!
さあ、レースに出ますって、師匠に電話しなさい。
たしかに、ラブのつぶらな瞳は、僕にそう語りかけてきたのだ。
わかった。
11月29日。
僕は、生まれて初めて、レースに出る。
53才の秋に記す。
by yacknonch