ICHIROYAのブログ

元気が出る海外の最新トピックや、ウジウジ考えたこととか、たまに着物のこと! 

★★★当ブログはじつはリサイクル/アンティーク着物屋のブログです。記事をお楽しみいただけましたら最高。いつか、着物が必要になった時に思い出していただければ、なお喜びます!お店はこちらになります。★★★


好きをつきつめて、お金持ちになる方法(コレクションの魅力)

f:id:yumejitsugen1:20120612053434j:plain
アンティーク 幟旗 絞り
  

佐々木芽生さんがプロデュース・監督した、Herb & Dorothy という映画をご存じだろうか。
郵便局員と図書館司書というごくつつましいご夫妻が、60年代からニューヨークで現代アートを蒐集し続け、当時は無名だったアーティストたちとの交流を通じて、何千点もの作品を集め、時を経ていまでは最高の現代アートのコレクションとなり、それをワシントンDCのナショナル・ギャラリーに寄贈するお話である。(僕は未見)

さて、この話は、アートコレクターの特別な話と思ってしまいがちだけれど、案外、身近な話である。
僕らのお客様のなかには、袱紗の世界的なコレクターとか、アジア染織品のヨーロッパの権威の方とか、戦争柄(War Propaganda)の著名コレクターの方もおられ、なかには、あれよあれよという間に大正期の着物を買い集めて、立派な本を出版し、大規模な展覧会を催されたかたもいる。

敬愛する大先輩のKさんは、幟旗(端午の節句や神社のお祭りの際に立てられる長い旗)のコレクション、研究の第一人者で、今度は、オランダの博物館で展覧会をされるそうだ。
Kさんの話によると、幟旗に集め始める前、幟旗に大きな価値を見い出しているひとはいなかったそうだ。そのため、Kさんが、その魅力に取り憑かれ、本気で集め始めたときは、いまよりずっと価格的にも安く、集めやすかったそうだ。
Kさんにコレクションのコツを聞いたら、こうおっしゃっていた。
「買い集めていると、流石に、お金も足りなくなるでしょう。それでもいいものを持ってきてくれたら、自分の持っているものの中で、比較的価値が低いとおもわれるものを、売ってお金をつくるんです。それを続けていると、コレクションの質が、どんどん上がっていくんです」

Kさんほどの有名人でなくても、いまでは価格の高騰してしまった銘仙を、安い時期にたくさん買い集めて持っていて、いったいいくらの価値があるのかと、羨望をもって噂されている知人もいる。

やはり、価値のあるコレクターに共通するのは、そのものが、世間一般に注目されてしまう前に、収集をはじめている、ということである。
世間一般に注目されたあとでは、いくら収集しようとしても、価格は高沸しており、また、すでに大方の珍しいものは、世の中からなくなっており、効率良く集めることができない。

そういう眼で、周囲を見回すと、収集する対象は無限にあり、20年もすれば、宝の山に化けるコレクションの対象物は、日常的に、僕らの目の前を通り過ぎているのである。
それを見つけるためには、まず、モノの価値の固定観念を捨てる必要がある。
僕ら古布を扱うものや骨董商は、そういう点で、一番乗り遅れがちである。
それは手作りじゃないから、それは手描きじゃないから、それはしょせん工業製品だから、それはしょせん子供のおもちゃだから、それはしょせん数のつくられたものだから、それはしょせん安モンだから・・・
そんなことを考えている間に、いつも新しい価値が生まれる波に乗り遅れてしまうのである。
銘仙しかりであるが、海千山千の骨董商たちが、レトロ玩具のブームに乗り遅れたことは記憶にあたらしい。

で、もちろん、そういったコレクション対象を選ぶときに一番大切なのは、自分の感性である。
それが好きでたまらないから、という基準ほど強いものはない。
周囲がなんと言おうと、そのものと心中したいほど好きなのであれば、それはコレクションとして成立し、やがて、大化けする可能性がある。

いつになく、まじめにここまで書いた。

僕自身は、どうなのか。
そういえば、まだ小学生のころ、記念切手のコレクターだった。
趣味週間「月に雁」と「見返り美人」を両親にねだって、ねだって、買ってもらい、それを宝ものにしていた。
貧乏だった親が、たしか3万円を超えるお金を出して買ってくれたのだ。
僕も相当入れ込んでいたに違いないし、親は親で、値上がりを見込んで投資してくれたのかもしれない。
あの時集めた僕の切手コレクションは、いったい、いまどこまで値上がりしてるのか?!
40年も寝かせておけば、仮に2%の金利だったとしても、66,240円になる
どきどきしながら、いま、その2枚のヤフオクの落札価格を調べた。

「月に雁」    1、611円
「見返り美人」  1、300円


そういえば、なんだか、切手の魅力そのものよりも、それがいくらの価値があるか、ということに、眼がくらんでいたような気がするなあ。
小学生のくせに!


ちなみに、ハーブさんとドロシーさんは、コレクションの数点を売りさえすれば大富豪になれたにもかかわらず、ただの一作品も売らず、いまも新婚当時から住み続けているアパートに住み、わずかな年金でコレクションを続けているそうである。


とどのつまり、うまくコレクションをすれば、お金持ちになることもできる。
ただし、お金持ちになろうとして、コレクションをしても、よいコレクションはできない、ってことのようですな。