好きなことだけは、仕事にするな
平安王朝図 名古屋帯
昨夜、AKB48選抜総選挙を、娘たちと見て、感動しました。
「ともちん」とか「こりす」とか、口慣らしに言ってみたら、娘には、「パパが言ったら、きもい~」と言われ、「ともちんが可愛いやんけ」と言ってみては、「ともちんがいい、っていうのが、ひく~」などと言われ、それでも、がんばって見続けました。
「ともーみ」がコメントで、「万馬券があたってえ」と言うのにぶっとび、最年長の「麻里子様」が、後輩たちに「あたしを潰していけ」という啖呵を切るさまに、ぶったまげました。
どうやら、僕には、みんなが好きになったり、話題にしたり、夢中になっていることに、あえて背を向けたい性癖があり、いつも反省しています。
それでは、商売人として、失格です。
AKB48選抜総選挙を見逃すような感度で、大多数のお客様が、いま、何を望んでおられるのか、どうやって感じ取ることができるでしょうか。
ところで、ある方のブログ記事を読んで、すっと腑に落ちました。
「好きな事を仕事にすると上手くいく?」
そうなんですよ、好きで好きで仕方がないことを、仕事にしたからといって、うまくいくとは限らないようなんです。
着物では、あまりに話が、生々しいので、昔、和食器のバイヤーだったころの話。
初めての和食器、初めてのバイヤー職で、僕は急いで、和食器のことを勉強しました。
本や雑誌を読んだり、作家さんの話を聞いていくと、手作りのもの、デザインの優れたもの、モダンなもの、伝統的な民芸調のものなど、がどんどん好きになります。
そして、新人バイヤーは、自信満々で、それらを品揃えに反映してみました。
が、雑誌で大きく特集していた、モダンな味わいもある萩のある作家さんのものは、かっこ良くても、一点も売れません。
ろくろで成形し、簡単な柄を手描きした、民芸の陶器も、その素朴な味わいに惚れ込んでも、ぼってりと厚手すぎるのか、柄があっさりしすぎているのか、あまり売れません。
呉須で細かく手描きした素晴らしい模様の皿も、お客様は手にとってくださるものの、お買い上げには至りません。
知人の奥さんが来られたので、そういったものを薦めてみたら、結局買われたのは、プリントのお皿のセットでした。
僕は、そのとき、供給先に好きなもの、売れそうなものを探すよりも、まず、お客様をとことん見ることから始めるべきことを、初めて、実地に学びました。
そうなんです。
自分が好きだから、お客様も好きになってくれるだろう、ということだけでは、なんだかうまくいかない気がします。
お客様の笑顔を見たいから、お客様に喜んで欲しいから、を出発点にしたほうが、お客様が本当に求めておられることを、曇りなく見つけることができて、商売もうまく回ると思うんです。
「好きだから」を一番根っこにおいて仕事を選ぶと、好きでなくなった時、どうするのかなあ、とも思います。
もし、釣りが好きだった僕が、釣具屋になっていたら、今では熱が冷めてしまってほとんど釣りにいかないので、釣りに行かない釣具屋になっていたでしょう。
もし、Jazzの好きな僕が、Jazz喫茶やJazzバーをやっていたら、キース・ジャレットやマイルスの定番を、毎日、毎日、お客様と聴くはめになり、彼らの音楽を嫌いになってしまったかもしれません。
扱うものが好きだから、というのは、もちろん、あればあったで、素晴らしいことなんですが、やはり、それも、お客様に喜んで欲しいから、お客様の喜ぶ顔が見たいからが先にあってこそ、仕事や商売は価値のあるものに、なっていくような気がします。
そんな、こんなで、お客様は、何を望んでおられるか、AKB総選挙に、なぜ、こんなにも多くのひとが熱狂して、さらに、世界を巻き込もうとしているのか、僕も体験してみようと、娘たちに気持ち悪がられながら、ライブ放送に見入ったわけなんです。
それにしても、ひとりで1000枚以上の投票をするファンも続出した、とネットでは話題になっています。
1000枚の投票するには、たしか、1400円程度のCDを1000枚購入しなければならいはずで、140万の買い物をされたことになります。
もちろん、大量に買ったCDはすぐにBook Offへ転売、ということになっているようですが、高価で買取ってくれそうにはなく、100万を超える出費であることは間違いなさそうです。
そうか!
100万円の着物が飛ぶように売れる方法がわかったぞ!
やっぱり、AKB総選挙に学べば、いいんだ!
来年は、うちも、総選挙するぞ!