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ICHIROYAのブログ

元気が出る海外の最新トピックや、ウジウジ考えたこととか、たまに着物のこと! 

★★★当ブログはじつはリサイクル/アンティーク着物屋のブログです。記事をお楽しみいただけましたら最高。いつか、着物が必要になった時に思い出していただければ、なお喜びます!お店はこちらになります。★★★


大きな業績を上げている部下が、職場で決められたルールを守らないとしたらどうするべき

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 もう30年以上前のことになる。
 マネージャー向けのある研修で、こんな質問が出された。
「たとえば自部門の売上の3分の1を占めるような大きな業績を上げている部下が、職場で決められたルールを守らないとしたらどうするか」
 ざっくりとしか覚えていないがそういう質問だった。
 ああ、そういう部下を抱えながら、どうすべきか悩むのが管理職というものなんだなと、その時、管理職の仕事の難しさに震えた。
 
 選択肢がふたつしかないとする。

A. その部下を叱責しルールを守らないなら他部への放出も辞さない構えで対応する
B. その部下の業績に注目し、ルールを守らないことには目をつぶる


 その時の講師の答えは、いくつかの付帯条件がついていたが、基本的にBであった。 
 いや、しかし、ほんとうにそうなのかな、とも僕は思った。
 たしかに、その部下を放出すれば、売上は3割下がる。
 だけど、その部下が評価されて昇進していくにしても、いつかはその部署を去る。どのみちその3割は失われる。しかも、チームにはルールを軽視する雰囲気、売上さえ上げればルールは無視してもよいという雰囲気が遺産として残る。

 僕は、いまでは、その時のその講師の問いも答えも、あまりにものごとを単純化していたように思う。それは状況によって、立場によって、組織の規模によって、何を求めるかによって、変わりうるので、いつもBが正しいとは限らないと思うのである。

 さて、僕は、なんとなく、Bが正しいのであろうと思い(達成すべきは収益であって、チームのルールではない)、その後、ある程度の業績をあげつつあった時、「その部下」のように行動した。
 上司は大変だったに違いないが、それが上司の仕事だろうと、僕は思っていた。
 基本的に、それが良い業績につながれば、お客様のためになるなら、社内の細かいルールなどは糞食らえと思っていた。
 で、結果、なんども書いているように、それだけが原因ではなかったにせよ、僕は組織人として失敗して、会社を去ることになった。


 話は15年ぐらい飛ぶ。
 この小さなECの会社を始めて7年目ぐらいのことだ。
 あるスタッフAさんの撮る商品写真がピカ一に美しい。アンティーク店のバイヤーなどは、彼女に写真を撮って欲しがった。
 僕らの会社は、着物や骨董品の写真を撮ってそれを掲載して販売するのが仕事だ。写真は綺麗であれば綺麗であるほど売れる。だけど、綺麗な写真を撮るためには、時間がかかる。商品はひとつしかないから、写真の美しさが売上につながるのは、そのものひとつである。そのため、どうやったらもっとも美しい写真を短時間で撮れるかということについて、色々とやってみて細かにやり方を決めていた。
 たとえば、メインの写真以外のトリミングはしない、一枚一枚の修正は基本的にせず、修正が不要なライティングやフレーミングで撮るというようなことである。
  どの程度の写真を使い、どの程度の説明文を書き、どの程度の値段をつけて、どんな配送方法と受金方法を提供するかは、それぞれの店が考えぬいて決めて実行していることである。
 店の生命線といってもよい。


 Aさんはそのルールを守ってくれなかった。
 当然、写真撮りできる商品量は減る。それをカバーするために、いつの間にか、彼女は休み時間にも仕事を続けるようになった。

 
 一生懸命やろうとする人は、求められている以上の完璧さを追求してしまいがちだ。
 そういう人たちにはそれが仕事の心地よさになってしまっているのだ。
 それはAさんに限らなかった。
「そこまでやらなくていい!」僕はスタッフに何度口を酸っぱくして言ったかわからない。たとえば、番号を書き間違えたタグを、わざわざホワイトで消して、上から丁寧に書き換えられていたりする。ホワイトを探し、ホワイトを塗り、乾くのを待って、新しい番号を書くまでにどれだけ時間がかかるんだよ。線をひいて消して上に書けば何秒かですむじゃないか。そういう話だ。

 さて、僕は休み時間には仕事をするな、と何度も注意した。
 彼女はそれでもやめなかった。僕が後ろにいる間はしなくなったが、僕のいない間にはしていた。
 パソコンを調べればどんなソフトをいつ動かしていたかぐらいはすぐにわかる。
 ほかの件もあって、僕は、あいかわらずルールを守ってくれない人がいると朝会で注意した。
 その後、Aさんは会社を辞められた。


 30年前の研修の問いが今も頭に残っているのは、それがさまざまな状況によって変わりうる難しい問題だからだろう。
 僕にもまだたったひとつの答えはないが、うちのようなサービスをする小さな会社が生き残っていくためには、かつての僕やAさんのような前向きな人たちよりも、特別な業績をあげなくても、きちんとルールを守りやるべきことをやってくれる人たちこそが必要であることは間違いない。
 おそらく、どうしてもそれを踏み越えて前に行きたい人たちには、組織の中で生きるのではなく、フリーで生きていくか、自分で作った組織のトップになるかが、もっとも相応しい道なのだと思う。


 
PS 都呂須 祐 (ユウタロス)さんの昨日のブログ記事に触発されて書きました。最後に書いて申し訳ないのですが、じつは、ユウタロスさんの記事のほうが面白いです。

 

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photo by micadew