あなたがもっとも恐れていることはなんですか?
あなたが最も恐れていることはなんだろうか。
嫌で仕方がないが、ときどきそれをやらなければならない時がやって来る。
そんなことがあるだろうか。
アメリカで人気のブロガーで起業家のGary Vaynerchukさんが最新の記事で自分の恐れを告白している。
彼は、「人前で原稿を読むことができない」そうである。
彼は自分でつくったメディアにも頻繁に登場しているし、講演家としても人気があり、パブリックスピーキングが苦手であるというわけではぜんぜんない。
ただ、原稿を持たされると、どうしてもうまくそれを読むことができないそうである。
リチャード・ブランソン氏がデイスクレシア(難読症)であることは有名だけれど、Garyさんがそういう苦手意識を抱えているとはまったく知らなかった。
彼ほどの起業家がそういう悩みを抱えていたことに驚いた。
もちろん、彼は、自分のそういう弱点のために人前で話すことから逃げたわけではなく、そういう弱点が問題にならない方法を探して、自分の伝えたいことを多くの人に伝えてきた。
その記事に書かれた彼のアドバイスは、「誰しも苦手なことがある。それでも自分ができるやりかたがきっとあるはずなので、それを探しだせ。そのためには、何年もかかるかもしれないが」ということであり、僕の胸にも沁みた。
さらに、僕が感じたことがいくつかある。
ひとつは、ひとは僕らが外からは想像がつかないような「苦手」があるということだ。人前で流暢に話せる人が、原稿を渡されたり、プロンプトを使えと言われると途端にしどろもどろになるなどということは、普通は想像しがたい。簡単になりこそすれ、難しくなるとは想像できないからだ。
おそらく、こういったことは僕らが普段気がつかないだけで、想像を超えた千差万別の「苦手」があるのだろう。
そして、他人はそれを簡単に克服できるかのようにアドバイスするが、当人にとってはどうしてもできない場合だってあるのだということだ。
それでも、ゲイリーさんが言うように、その弱点を回避して目的を達する方法は、探し続ければきっとあるのであろう。
ゲイリーさんは起業家であり、幸運にも自分のスタイルを貫くことができる。
しかし、大きな企業に属していると、そういうひとつの「弱点」が生涯のキャリア形成に不利に働くことも多そうだ。大きな組織では減点主義になりがちだし、少しの差が将来の大きな差になってしまうから、「弱点」は痛い。
かく言う僕も、人前で話すことが苦手で、会社員時代、大きな会議で話したり司会をしたりしなければならなくなることを、なにより恐れていた。
今、僕は小さな会社を経営している。
20人強しかいないし、なにか新しいことをやろうとするときは、まず既存のスタッフでそれができる人がいないか考える。
それぞれが、僕と同じように、さまざまな「苦手」を持っていて、その「苦手」がはっきりと見えている場合もある。だけど、小さな組織ではそんなことは言っていられないので、その場その場で必要とされるスキルやガッツを持っているかどうかだけが問題になる。
そうやってあらためて探してみると、「えっ!君、英語書くのはダメっていってたけど、そんなに立派なビジネスレター書けるじゃないか!」とか「えっ!簡単なプログラムならかけるじゃないか!」というようなこともあるのである。
多くの人は「弱点」を抱えている。
ゲイリーさんが言うように何年もかけてその弱点を回避して自分なりのやり方をみつけることが最良の方法だろう。
だが、組織や会社がそれを許してくれないなら、自分を「弱点」とともに受け入れてくれて輝かせてくれる場所を、自分で探しに出ることも必要なのかもしれない。
それは、別の部署かもしれないし、別の会社かもしれないし、あるいは、僕のように独立することかもしれない。
photo by philhearing