世界一級の美術品の模造と盗難が一掃される日が来そうだ!(イスラエルの凄いスタートアップの話)
新しいビジネスのアイディアには、聞いたとたんに、これはいけそうだな、スケールしそうだな(大きくなる)と思うものがある。
とくに、自分が知っている分野でそういう話を聞くと、はっとさせられる。
昨夜Mediumの記事で知ったArtsignetという会社がそうだ。
Protecting the World’s Most Valuable Art with Artsignet(世界でもっとも価値のあるアートをArtsignetで守る)
記事の概要はこうだ。
*Artsignetはイスラエルに本拠をおく、まだ2年のスタートアップ
*最近ではファインアートの市場の15%は偽造品であると言われている
*たとえば、中国の村Dafen Villageはアートのレプリカをつくることが主産業でありそのほとんどを輸出している(下部のYoutube参照)(あくまで産業としてのレプリカの話。ニセモノとして作って村全体で犯罪行為をしているという糾弾ではないので注意)
*ファインアートの世界の市場規模は650億円。偽造品のマーケットが100億円。
*彼らは持ち込まれたアート作品を鑑定し、ホンモノとわかれば、RFIDタグを特別な糊でつけて、マルチスペクトル(復数波長)のカメラで写真を撮り、彼らのデーターベースに保管する
*それ以降、そのアート作品のすべての売買は、Artsignetのデーターベースに蓄積・追跡される
*彼らのエキスパートやコレクターに本物と鑑定されたら、わずか20ドルで登録することができる
*現在、7000ピースのデーターベースができている
*資金として400万ドル(約4億円)を集めたが、あと100万ドル(約1億円)の資金提供先を探している
*ここ10年で10億ドル(約1000億円)の収入をあげる計画を立てている
このアイディアは凄いなと思った。
アンティークの世界でも偽物や盗品は数限りなくあり、ディーラーもコレクターもそれを避けるために相当な努力を払っている。
最近でも、日本の各地のお寺にある仏像などの古美術品が盗まれる事件が多発しているが、もし、世界の価値のあるアート・古美術品のすべてに、消えないタグをつけて、世界の誰かが一元で管理すれば、偽物や盗難などのリスクは劇的に軽減されるだろう。
彼らが1000億円を目標とする根拠は不明だが(彼らのページに「ビジネスモデル」のページがあるが、会員しか読めなくなっている)、やろうとしていることの技術的なこと、意義、ビジネスとして収益性があるかどうか、ということについては、ほぼ問題がないと思う。
残る問題はひとつで、それは、それを彼らがやることを、世界が認めるのかということにつきる。
オークションの大手であるサザビーズやクリスティーズが共同でやるというなら、美術界がプレイヤーたちが納得して話がまとまるのは早いだろうが。
しかし、ともかく、世界のファインアートの一級品を登録追跡するシステムは始まった。誰がどのようにそのシステムを存続させるかはまだ不明だが、そういったシステムが世界標準として利用される日がくることは間違いない。
まったく、世の中には、素晴らしいことを考えだして、軽々と実行に移してしまう人たちがいるもんだな。
彼らのスタートはわずか2年前。
この2年間で、僕は何をしたかなあ・・・