「うっかり」さん一族にお許しを!
photo by Michael Fielitz
一昨日のこと、年末年始の休みの初日。
やっと腰を据えて頼まれている原稿に取りかかる時間ができたので、一日パソコンに向かっていた。正月休み明けには原稿をお渡しする約束である。
夕刻6時半ごろ、少し満足感を覚えながら、心地よい疲労感とともに、ラブの散歩に出ていた。
と、携帯がかかってきた。
旧友のIくんからだ。
「どこにおんねん!」といつものだみ声。
「どこって、散歩中やけど?」
電話の向こうで、絶句しているのが、聞こえた。たしかに、聞こえた。
で、僕も思い当った。
「あれ、今日やっけ?」
「・・・・・」
そうだった。
昔の会社の仲間で飲む約束をしているのは、たしかに、その土曜日であった。
「2次会から・・・」
「あほ!すぐ来い!」
僕は「うっかり」さんである。
この件も、うっかりしていた。
詳細に説明すると、約束そのものは忘れてはいず、ちゃんとAppleカレンダーに書きこんで行くつもりでいたし、とても楽しみにしていた。
ただし、年末でイレギュラーでもあり、会社を金曜日から休みにして、会社のパーティーをしたりしているうちに、曜日の感覚が飛んでしまい、その宴会の日はその日の次の日であると思っていたのである。
会社勤めしているときも、僕は、この種の「うっかり」をよくやってしまっていた。仲間の宴会に1時間遅れるぐらいなら、お詫びしてなんとかなるが、偉いかたたちも参加される会議をダブルブッキングして青ざめたことも、何度かある。
もちろん、会社では、「うっかり」さんは笑って水に流してくれるものでもないので、手帳とにらめっこして、そういうことがないように、気を使ってはいたのだが、それでも時々、冷や汗を流し、叱責を受けてうなだれた。
僕の場合、何かに夢中になると、本来、別領域で意識しておかなければならないことを、飛ばしてしまう傾向にあるようだ。
「うっかり」が起きやすい性格という自覚はあって注意はしている。だけど、散々それで注意されても、やはり時々、やってしまうのだ。
さて、僕の知人に、僕の何十倍もの「うっかり」さんがいる。
その人ーXさんとしようーの「うっかり」さん具合は見事なもので、彼の場合は、そのマイナス面を補ってあまりあるプラス面がある。アルキメデスばりに、次から次へ新しいことを考えついて実行していくのである。そのため、今では、その分野では誰も追いつけない地平にいる。
そのXさんともうひとりのYさんと僕の3人で、ある時、ミーティングをすることになった。
僕はしっかりと手帳にその日付を書いて、予定通りに約束の場所、Xさんの事務所に、約束の時間、午前10時に着いた。
Yさんがなかなか来ない。
30分経ってもまだ来ない。
結局、僕とXさんは、車で数十分走って、ある場所でYさんと落ち合うことができたのだが、時刻はすでに午後1時を回っていた。
会ってから、Yさんは白状した。
すっかり忘れてました、ごめんなさいと。
Yさんも「うっかり」さん一族であることが判明した。
僕もXさんも、忙しくないわけではないのに、Yさんのために結局丸一日を棒にふってしまうことになった。
お互い言いたいことはあったが、もちろん、天に向かって矢を放ってもそれは自分に向かってくるだけということがわかっていたので、にこにこと穏便にことはすんだ。
しかし、チームのなかにひとりの「うっかり」さんがいるぐらいならなんとかなるが、3人が3人とも「うっかり」さんで構成されたチームがその後どうなるのか、さすがに僕は不安を覚えた。
Xさんも僕以上に不安を覚えたらしいが、Xさんが不安になるのも滑稽じゃないかと僕は思った。そんなことを感じる権利があるのは、3人のなかでは一番「うっかり」さん度が低いと思われる僕しかいないということは、火を見るよりも明らかだったからだ。
ともかく、「うっかり」さん一族に、お許しを。
彼らに迷惑をかけられ、腹が立つ気持ちはわかります。
しかし、彼らは好き好んでそうしているわけではなく、そのせいで誰かに迷惑をかけ、また、自分のキャリアやチャンスを狭めていることは、重々承知しています。
3人を代表して、ここにお詫びしたいと思います。