ICHIROYAのブログ

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2014年のたった一回きりのお盆

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  昨日、娘の祥子が孫の一乃を連れて旦那さんより一足早く帰省してきた。
 うれしいことに、もうすぐ一歳半になる一乃は、僕の顔を覚えていた。
  新大阪で娘に抱かれて待っていた一乃は、僕を見て「パパ!」と言った。

  一乃の僕の呼び名は、「パパ」である。戸籍上、生物学上は「おじいちゃん」になるはずだが、婿側のおじいちゃんもいるし、「ひいおじいちゃん」になると3人もいるので、ややこしくて仕方がない。そこで、一乃には、それぞれ呼んで欲しい名前を、早い者勝ちで登録制とすることになった。母親の祥子は「かーか」で、嫁(つまり「おばあちゃん」)の由佳は、「ゆーちゃん」である。
 僕は多忙にかまけ、自身の名前を登録し忘れてしまった。そのため、祥子が僕を呼ぶ呼び名をそのまま覚えてしまい、「パパ」となったのである。
 この失態を僕はかなり深刻に受け止めている。
 昨日も、大阪駅のとある焼肉屋さんで昼食をいただいたのだが、歩き回る一乃が、いろいろなものを指さして、「パパ見て!パパ見て!」と大声で言うのである。
 そのたびに僕はそばに行って、「見たよ!すごいね!」と言う。
 その店はたまたま視線の高さまでの仕切りでテーブルは仕切られており、好奇の視線を浴びることはなかったが、あの仕切りがなければ、「いい歳をして」というあきれ顔の視線を向けられることは必定だ。

 大阪駅から僕の母親の施設に行った。
 そのとき母の部屋にいたのは、6人。
 ややこしいので、ちゃんと続柄と年齢を明記すると、

 母 道子   84歳
 父 邦雄   85歳
 僕           55歳
 嫁 由佳   54歳
 娘 祥子   28歳
 孫 一乃   1.5歳
 
 ひとつの小さな部屋に4世代がそろったことになる。
 認知症の進んだ母は、訪れたときはベッドに寝かされていたが、起こしてみると案外元気で、ひ孫の笑顔を見て、自分も子供みたいに顔をくしゃくしゃにして笑った。
孫が来たからか、母は上機嫌で良く喋った。
  母が僕らに語った新事実がふたつあった。
 ひとつ目。ひとりの男性介護スタッフが、彼女(母)に恋をしている。残念ながら自分にはその気がないので、せめて手紙を書いて自分の気持ちを伝えようと思っている。
 ふたつ目。妊娠した。
 施設を去る時、母は鬼の形相で、一緒に連れて帰れと父に言ったらしい。

 家に帰ると、留守番をしていたラブが、飛びついてくる。
一乃はラブのことも覚えていて、家に到着する前から「らぶちゃんは?らぶちゃんは?」とご執心だ。だが、ラブの方は、力の加減なく尻尾や耳を引っ張られたり、餌を食べているときに近くに来て大きな声を出されたりするので、逃げ回っている。
 ラブラドールだから、一乃より何倍も大きい。ラブは一乃を傷つけないように、転ばせたししないように気を使っているが、頭の性能はやはり犬だ。扉をどんと開いた向こうに一乃がいるかもしれず、ラブと一乃から目が離せない。

 宅急便が山梨から届いた。
 祥子の嫁ぎ先のご家族が、米や収穫したばかりの野菜を一杯に詰め込んだ送ってくださったのだ。
 新聞紙に包まれた野菜のみずみずしさと、土の香りが部屋に広がる。

 まだ来ない旦那さんの代わりに、僕が一乃を風呂に入れる。
 以前入れたときは、 湯船の中で持ち上げていなければならかなったのに、身長も伸びて湯船の中でしっかりと立っている。
 以前は必ず泣いていたのだが、今回は頭を洗っても泣きもしない。
 いつものようにラブも入ってきて、湯船の外から湯を飲む。なぜか、僕らの家族が入っている湯船の湯が大好物だ。
右には一乃、左にはラブ。ややこしい。

さきに一乃を引き取ってもらい、湯船にぼんやりと浸かっていると、脱衣場にラブが帰ってきてしゃがみこんだ。
 両足を前に出してその間に頭を乗せ、目はまっすぐに僕を見ている。
みんなのいるところへ行っとけと言ってみるものの、ラブはその目を僕に向けたままだ。
 なにか言いたそうだけど、ラブはしゃべらない。
でも、もちろん、僕はラブの気持ちはわかる。

で、ラブは何歳だっけ?
 この文章を書くために、ラブの年齢を嫁に確かめた。
 ぼんやりと4歳ぐらいだったかな、と思ったら、すでに7歳だった。
 すでにシニア犬用のフードを試してみたよと言う。
  
 今日、たった今、多くの親たちは帰省してきた息子や娘、孫たちと大切な時間を過ごしているだろう。
 親たちはみんな知っている。
 子供たちは毎年帰ってくるけれど、同じお盆はひとつとしてない。
 今年のお盆は台風と一緒にやってきてしまって、何かと心配だけど、
 皆さんに、幸あれ! 

 

photo from Death to the Stock Photo