理想の小売業態ってどんなだろう(ユニクロvsドン・キホーテ)
お前のその、青臭い、ロマン主義的な面がなあ・・・
と、敬愛する鬼上司(「そこまでやるかと言われて普通」)によく言われた。
・・・のところには、もちろん、「それがなけりゃ、もっと使いやすいオトコなのに。馬鹿!」と、鬼上司の心のなかで続いている。
ところで、僕は、ドン・キホーテさんの仕組みを、圧倒的に支持する。
もちろん、百貨店経営に一家言も百家言ももつ鬼上司や、現在の百貨店経営者から見れが、「祭の露天みたいなもの」とバッサリであろう。
ドン・キホーテさんでは、売場は細分化され、それぞれの売場に大幅な権限移譲がおこなわれており、仕入も、それぞれの売場の担当者が自由におこなうという。
この、部門を細かく分けて、仕販一体の仕組みをつくり、それぞれで競い合って、効率を上げていく、というやりかたが好きなのだ。
小売業の楽しさのエッセンスは、やはり、「自分が買ったもの(仕入れたもの)を自分で売る」という点にある、と思う。
仕入は本部・本社の偉いさんがやる。
現場は、ただ、それを最大限の効率で売れば良い。
それが、大手小売業の現代的で効率的なやり方である。
ユニクロさんをはじめ、ほとんどの成功例はそういったやりかたであり、もちろん、百貨店業界もその方向に向いている。
しかし、青臭い、ロマン主義的な立場から見ると、
ユニクロさんは、ひとりのプレーヤーと99人の自動販売員をつくり
ドン・キホーテさんは、50人のプレーヤーと50人の予備プレヤーをつくる
ように見えるのだ。(あくまで比喩とイメージです。あしからず)
もちろん、どちらにいても、プレーヤーでいるということは、その力量が、簡単に数字になって可視化されるということであり、厳しい生存競争の立場に身をおくことになる。
しかし、その厳しさは、すり減っていくばかりの毎日を耐えるような種類のものではなく、仕入や販売方法の工夫が、ダイレクトに数字となって帰ってくる、大きな楽しみの源泉ともなるものだ。
うまくまわりだしたら、厳しさは、なにものにも替えがたい達成感や高揚感に変わるだろう。
かつて、僕が勤めていた百貨店も、家庭用品売場は、じつは、そういったロマン主義的な方法で運営されていた。
たとえば、僕がマネージャーをさせていただいた和食器売場は、一般社員・定時社員・契約社員全員で売場を細分化し、みんながそれぞれの部分の仕入を分担していた。、
レジにお客様が並んだ場合などは、みんな一体で販売するが、基本は、それぞれの売場は担当者に任されており、仕入商品の選定、在庫の発注・補充、展示、POPの作成など、すべてを任されていた。
バイヤーとしての仕事は、方向性を示すこと、仕入れ業者政策、スポット商品の選定などに限られていた。
それも十数年前の話である。
いまでは効率の低い家庭用品売場は縮小されてしまったし、仕入も本部が一括しておこなっているのではないか、と思う。
売場の運営は、より近代的に、集中化され効率化されたに違いない。
しかし、かつての和食器売場が単に良かったか、というとそうでもない。
部門別に利益を計算すれば、おそらく、大きなマイナスだったはずだ。
いまから思うと、やはり、百貨店という効率を求められる場で、そういった仕組みを実践するには、決定的に「厳しさ」が足りなかったのでは、と思う。
残念ながら、人間というものは、それが当然となってしまうと、そのありがたさを、そして、結局、その楽しみも喜びも感じられなくなってしまうようなのだ。
マネージャーの手腕と言う面もあったかもしれないが、やはり、会社全体が、かつての「小売業日本一」時代の緩さと理想主義に満たされていたことが大きいと思う。
しかし、その時代、辛いこともあっても、たしかに、みんなの眼は、輝いていたのだ。
ところで、そういった非近代的な、泥臭いやりかたで、ドン・キホーテさんの売上は12年6月期で、売上5400億円、営業利益293億円である。
いっぽう、ユニクロさんは11年8月期で、売上8200億円、営業利益1160億円である。
もちろん、ユニクロさんのほうが売上、利益とも大きい。
が、ケタ違いに小さいわけでもない。
そして、ロマン主義な僕は、圧倒的に、ドン・キホーテさんのほうが好きだ。
きっと、ドン・キホーテさんのほうが、眼が輝いている若者が多いのではないか、と思うのである。
もちろん、僕は、ユニクロさんでも、ドン・キホーテさんでも働いたことはなく、あくまで、漏れ聞く両者の仕組みから考えたイメージにすぎない。
と、ここまで書いて思った。
それはそうと、ユニクロさんとドン・キホーテさんでは、僕の利用頻度は、圧倒的にユニクロさんのほうが多い。
50代という歳のせいかな。
最近は、さすがに、ちょっと行きにくい。
そろそろ、ドン・キホーテさんも高齢化社会に対応して、年寄りにも、入りやすい店にしてくれなくっちゃ。
あんまり利用しなくても、こうして、ドン・キホーテさんのファンなので、ほんの少し、株をもっているのだ。
一株主としては、高齢化社会対応をどんどんすすめていただきたい。
そうすれば、さらに株価も上がって、ぼくは、ちょっとにっこりできるのだ。
ドン・キホーテさん、よろしく!
( 写真は アンティーク 垂涎の薔薇の散歩着 バイヤーのわたし、強烈プッシュです!サイコーと思います!)