ICHIROYAのブログ

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俺様はクレーマー、文句あっか!?

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どうやら俺様は、クレーマーらしい。

たぶん、ときどきこのブログを読んで下さっているかたや、実生活でお付き合いのあるかたはご存知かと思うが、俺は、曲がったことが嫌いである。
ところが、この世は、まっすぐを突き詰めると、クレーマーと呼ばれるらしいのである。

7,8年前のことである。
会社で使っているデジカメが壊れた。

デジカメというのは、本当によく壊れる。
毎日数台のカメラで写真を撮りまくっていると、何日かにひとつ、壊れる。
もちろん、スタッフが落としてしまうこともあるが、たいていは、部品のどこかがやられてしまう。
なので、買うときに、なるべく保険に入って、壊れたら無料修理に回し、予備のカメラを使うことにしている。

さて、いつものように、また、ひとつ壊れた。
残念ながら、保証期間、保険期間を過ぎていた。
それを近くの電気専門店に持って行って、修理をお願いした。

数日して、電話がかかってきた。
そこでどういったやり取りをしたのか、はっきりとは覚えていない。
でも、新品を買うより高い値段を言われ、しかも、普通はやっていないけど、特別にその値段でやってあげます、みたいなことを言われたのである。

修理代が高くても、仕方あるまい。
しかし、新品を買うより高い、とはどういうことか。
しかも、そのカメラを気に入って、修理しても長く使おうとするものに、それは廃棄して、新しいものを買え、とばかりの対応は、なんだ。

たぶん、その店員の言い方にも、カチンときたのだろう。
俺様は、頭に血を上らせて、店に行って、その店員を呼んだ。
奥の椅子に座らされて、その店員が向かいに座る。
そのそばには、ふたりほど、ほかの店員が立って、俺らを見守っている。

「◯☓◯△◆□◯●!」と、俺。
「いえ、そうはおっしゃられても、メーカーが・・」と店員。
「☓□◯☓◯△◆□◯●●◯!」
「ですから、それは、メーカーが・・」

「お前じゃ話にならん、店長を呼べ!」と、俺。
きっとその声は怒りにうわずって、少し大きかったのだろう。

そのとき、後ろに待機していたひとりの店員が、俺に歩み寄り、屈んで言った。
「俺が店長や、大きな声を出すな」

そのとき、俺様は、自分が、クレーマーであることに、気づいたのである。

たしか、デジカメの修理に関して、普通のことを、普通に言っていたつもりなのに、有名電気量販店の店長様に、タメ口をきかれている。

俺様は、大いにショックを受けて、すごすごと店をあとにした。

でも、それで引き下がる俺様ではない。
クレーマー扱いされて、さらに、俺様の怒りは燃え上がっている。
販売店が話にならないのであれば、そのメーカーに直接話をしようではないか。

俺様はそのメーカーのHPを開き、社長様の経営理念を熟読した。
そして、そのデジカメの修理に関して、自分がどういう状況に置かれたか、経営理念から導かれる、当然あるべき、対応とはどんなものか、諄々と語り聞かせるような文章を書いた。
我ながら名文である。
そして、それを、社長宛に送付した。

さて、この世の片隅で、ひっそりと生きる一介の古着屋からの、渾身のメッセージを、その社長さんはどういう風に受け止めるのか。
そもそも、返事が来るのか、クレーマーの俺様は、興味津々で待った。

1週間ぐら待っただろうか。
メールだか、封書だか、忘れてしまったが、それは、そのメーカーの部長クラスの人の手によるもので、とにかく善処するので、その故障したカメラを送ってくれという旨のことが書かれていた。
俺様は、やっと話の通じる相手を得たと喜び、カメラを送った。
すると、しばらくして、修理されたカメラが送り返されてきた。
なかには修理に関する詳細な写真付きのレポートが添付されていた。

カメラが修理されたのは嬉しいが、保証期間も保険期間も過ぎてしまっているのである。
修理代が当然かかるものと思っている。
修理代が惜しくて、わざわざ社長様に長文の手紙を書いたわけではないのである。

クレーマーの俺様が、一番問いたかったのは、製品を送り出せば、あとは修理するより新品を買ったほうが安く、修理して長く使おうというユーザーを迷惑もの扱いする、その経営思想である。

しかし、結局、お願いした請求書が送られてくることはなく、俺様も、肝心のことには言質を与えない部長さんをこれ以上問い詰めるのが気の毒になってきた。
きっと、部長さんは、この俺様、社長にまで手紙を書いてくる一流クレーマーの俺様に、とにかく黙ってももらわなくては、会社での立場もなくなってしまうのであろう。

俺様は、そう考えて、鉾をおさめることにしたのである。

たしかに、俺様は、まっすぐで、ごく当然のことを、ごく普通に主張しただけである。
しかし、その件のあと、俺様は考えた。

製品は潰れたら、修理して長く使おうなどとせず、即廃棄して、次の新製品を買うように、世の中ができているのである。
それがおかしい、とか、嫌だとか、大きな声で言ってみても始まらない。
世の流れに逆らえば、クレーマーの烙印をおされるのである。
だから、たしかに、俺様は、そのとき、クレーマーだったのだ。

それ件以降、俺様は、何があっても、どんな扱いを受けても、すべて受け流すことに決めている。

真っ直ぐなことがいくら好きでも、クレーマーとして生きていくほど、俺様は強靭な精神を持ち合わせていないのである。