岩になるな、スポンジになれ!
スタッフの採用について、知人に話を訊いていたときのことである。
彼の会社は僕のところより規模も大きく、採用活動もずっと続けていて、採用にあたってのトライアル&エラーをうちよりもずっと多く経験している。
で、そんな彼が言う。
「経験者は採用しない」
「え・・でも、経験者のほうが、一から教える手間が省けて、ずっと効率いいんじゃない?」
「いや、ある種の経験者は自分の考え方ややり方に固まってしまっていて、こっちがこんなやり方をしてくれと言っても、なかなか直せないことが多い。結局、未経験者を一から教えるほうが、ずっと能率が良い」
Mediumで「Be the sponge, not the rock(スポンジになれ、岩になるな)」という記事を読んでいて、そんな彼の話を真っ先に思い出した。
Mediumの記事にも、「その道何十年」というような人材で、業界の経験則で岩のように固まっている人よりも、未経験者で、スポンジのように柔軟で吸収力の高い人のほうが、いかに戦力になるかということが書かれている。
印象的な場面として紹介されているのは、ブログが出始めたころ、ニューヨーク・タイムズの社主に招かれて、経験豊かな一流編集者を集めた会合でのことだ。筆者はすでに、ブログのもつ可能性を理解していた。
つまり、編集者の仕事、間違いを正し、記事本来の目的とはずれたものを排除し、読みやすいものに整えるという編集の仕事を経ていないブログが、いかに可能性を持っているかということ。それぞれの分野では(たとえばラブラドールの飼育についてとか、サボテンの育て方について)、とんでもない情熱と知識と経験を持ち、かつそれを表現したいという人たちがたくさんいて、そうい人たちが勝手気ままに書いたものが、一流の編集者が選び抜いて磨いてきた少数のものより、全体としてエキサイティングになりうるということ。
筆者がそういう話をしたところ、一流編集者たちは、彼の言うことがまったく理解できずぽかんとしたそうだ。
いや、まったく、耳が痛い。
僕だって、ブログというものが出始めたころ、その可能性について、まったくのところ、「ぽかん」であった。
一流編集者ならなおさら、その未来を予測することは難しかっただろうと思う。
こういう話を聞くと、いつもスポンジのように柔軟で、なんでも吸収していきたいと思う。
だけど、言うのは簡単だが、現実にそのように行動するのは、なかなか難しい。自分が詳しいことであればあるほど、それと気づかずに、岩となっている場合が多いのではないだろうか。
ときどき、自分の頭を叩いてみて、岩のようになってしまっていないか、確認する必要がありそうだ。
(追記)
treve2013 さんにこんなブックマークコメントいただきました。
「私の経験から反論させて頂くと、何もできないくせに岩のような未経験者もいるし、スポンジのように貪欲に技術を習得する経験者もいるので一概に言えないと思います。ただ優秀な人は間違いなく皆スポンジでした」
ありがとうございます。「一概に言えない」まったくそうだと思います。
経験者でかつスポンジ頭が最高ですね!さらにいえば、ほかのこともやったことがある経験者でかつスポンジ頭が最高最強なのかもしれません。
この記事の趣旨は、「経験者=悪」ではなく、「長年の経験は経験則や固定観念を知らぬ間に強固にしてしまう傾向があるので注意が必要だなあ」ということです。経営者として「経験者」を採用するかどうかは、それぞれの事業内容やステージ、経営者の考え方によって異なると思います。
それと、今、思いついたのですが、そういう経営者もいるので、仕事に応募するときは、「経験がいかに豊富で即戦力であるか」ということと同時に、「いかに柔軟性があって、自分がスポンジみたいか」ということを相手に伝えたほうが良いということになりますね。
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