ICHIROYAのブログ

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「ルール5」で1000万部のベストセラー本をつくった話

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                                                                                            photo by Michael Ruiz

  

 会社員の時代に、大いに心を癒やされた本に、『こころのチキンスープー愛の奇跡の物語』というシリーズ本がある。いわゆる「いい話」を集めて紹介した本なのだが、世界中でベストセラーになり、39ヶ国語の翻訳され、1000万部以上を売った。
 こころが落ち込んでいるときは、ほんとうに癒される内容で、そんなときにはお薦めの本なのだが、今日、僕が書こうと思ったのは、この本の紹介ではない。

 

こころのチキンスープ―愛の奇跡の物語

こころのチキンスープ―愛の奇跡の物語

 

 

 Mediumの少し以前の記事(The Rule of Five: How to Achieve Your Goals Faster)で知ったのだが、この世界的な成功となった本の共著者のひとりJack Canfieldさんが、『The Success Principles(成功の原則)』という本も書いておられ(2006年)、そのレビューの非常に高い本のなかで、この『こころのチキンスープー愛の奇跡の物語』を大成功に導いた方法を紹介されているようだ。

 Sam Thomas DaviesさんがMediumの記事にそれを紹介されているので、そこからかいつまんで紹介する。
 
 Jackさんたちは、出来上がったこの本を、ニューヨーク・タイムズのベストセラーNo1にしたいという目標をもっていた。
 その目標を達成するために、15人のベストセラー作家に話を聞きにいったそうだ。
 有効そうなアドバイスをたくさんもらった。
 だけど、あまりにするべきことが多くて、ふたりは途方に暮れた。
 そのことを師であるRon Scolastico博士に相談すると、

「充分に研いだ斧で毎日5回切りつけたら、どんな太い樹でも倒すことができるよ」


 と教えられた。
 そこで、ふたりは、「The Rule of Five」(5のルール)と呼ぶものをつくり、それを毎日実践することにした。
 それは、毎日5つのラジオインタビューに出る、毎日5人の批評家や編集者にレビューのコピーを送る、5人のエージェンシーやモチベーションをあげたいセールスピープルを抱えているひとたちに電話をして自分たちの本を買って欲しいと直接頼む、最低5人以上の人が集まるセミナーを主催して本を売る、というようなルールだったそうだ。
 その労力は報われた。
 O.J.シンプソンの裁判に世間の注目が集まっている時、彼らはテレビもニュースも見ることを禁じられている陪審員たちに、その本を送った。彼らのひとりからお礼の手紙をもらっただけでなく、4人の陪審員がその本を読んでいることを報道陣に話してくれたために、その本は一躍注目されることとなった。
 そして、2年間、ふたりがこの「5のルール」を実践した結果、望み通り、ニューヨーク・タイムズのベストセラー本の1位に輝き、1000万部のセールスを達成することになった。

 さて、この話は、もちろん、どんな偉業も、小さなことの継続から生まれることを教えてくれるし、小さな行動にブレークダウンして習慣化してしまうことが、どれほど大事なことか、あらためて考えさせてくれる。
 
 しかし、もうひとつ僕には、はっとする点があった。
 本というのは、もちろん、宣伝が大事なことはわかっているが、基本的に内容次第であるし、人々の好奇心がそこに集まっているのかどうかということが、商業的な成功を決定づけると思っていた。
 『こころのチキンスープー愛の奇跡の物語』という本の内容は、僕自身は大好きだったが、売れそうな内容か、人々の興味をそそるものか、という点ではこころもとないところがある。
 じわっとくるのだが派手さに欠けるのだ。
 おそらく、出版社も、この本を出す時、1000万部の大成功などはとうてい見えていなかったのではないかと思う。
 しかし、彼らは彼らの本の価値を信じ、地道な努力を2年間続けたのだった。
 
 僕は出版のことは知らないし、本を出したこともないのでほんとうのところはわからない。だが、本というのは、出しっぱなしの一発勝負で、売れるか売れないかは、すぐに勝負がつくのが普通なのではと想像している。
 そんななかで、出版してから2年間も、売るための努力をし続けることができたということは、ほんとうに非凡なことだと思う。
 『こころのチキンスープー愛の奇跡の物語』という本には、「こころから誰かにためになりたいと思って行動したことはきっと報われる」というようなメッセージが含まれているのだが、Jackさんたちは、それを本の中で語るだけでなく、この本を売るという行動でそれが真実であることを証明してみせたのである。

 この話は本だけでなく、ブログや自分のクリエィティブな作品を、どうやって多くの人に見てもらうか、ということにも、大きな示唆をくれるではないか。
 短期的に耳目を集めるセンセーションなものを創れば、一夜にして成功を手にできるかもしれない。
 しかし、たとえそれが地味だとしても、自分がほんとうに価値があると思えるものをつくることができたら、それだって多くの人に届けることができるかもしれない。
 だが、その場合は、僕らはきっと肝に命じなければならないのだ。
 作品を完成させたとしても、そこで仕事は終了しない。
 やっと半分来たに過ぎない。
 残りの半分、それを見て欲しい人に届ける努力をやりぬくまでは、仕事は終わらないのである。