自分でつくるセーフティーネット~小さな会社の生存戦略
最近、ある方の考えているプロジェクトに誘っていただいて、ワクワクしているのだけど、その方に触発されたり教えられたりして再認識したことがひとつある。
いままでは、どちらかと言うと、小さな会社は自分たちができることで完結しておかないと、いざという時に沈没してしまうと警戒していた。たとえば、大口のお客様少数に支えられるのはそのお客様次第になってしまうし、海外の仕入先ひとつに頼った場合、相手が自社で販社を設立するとなると、すべてがパーになってしまう。
リスクを減らすために、なるべくなら、多くのお客様と多くの仕入先をもち、必要なノウハウは自社にあるようにしようと思っていた。
しかし、お互いの得意なところを持ち寄って、協同でよいもの、よいサービスをつくることの重要性を教えていただいて、なるほどそうだなと思っている。
たとえば、Aはブランド力があり、Bはデザイン力があり、Cは製造力があり、Dは実店舗の販売力があり、Eはネットでの販売力があり、Fは小売のウェッブ製作に、それぞれに優れているとする。
それぞれの会社は自社で一貫してすべてができればベストだと考えているが、それをするためには長い時間がかかり、また、時間をかけても自社が得意でない部分でどの程度のパーフォマンスを発揮できるようになれるか心もとない。
が、その会社が集まって共同でなにかをすれば、調整は必要だが、すぐにベストのものができ、チカラを発揮することができるようになるだろう。
とくに昨今のように変化が激しい時代に、小さな会社が生き延びていこうとすると、そういう共同での取り組みが威力を発揮すると思う。
そうしようという時に、問題になるのは、お互いの利害の調整である。小さな会社の経営者たちはそれが一番の難題になることを知っているし、とくに付き合いが浅い相手には警戒心をもって接するのが普通だから、上に書いたような共同での取り組みをしたほうが良いとわかっていても、疑心暗鬼になって躊躇してしまいがちだ。
もし、この協業が小さな会社のこれからの重要な生存戦略になるとすれば、僕らが目指すべき会社の姿というのは、いままでとはやや違っているかもしれない。
佐々木俊尚さんの言われるように「善い人」「性格の善い経営者」であることが、それには一番必要だと思うからだ。
つまり、そういう協業に誘ってもらうためには、
1.自分の得意な分野、得意なやりかたで、徹底的に良い仕事をしている
2.爪の長い人間ではない
3.それを継続する力がある
4.適正な利益を上げてきている
というようなことが必要だと思う。
とくに『爪の長い人間ではない』というところ、つまり、『自分の利益を優先しない』ということについての信頼感があることがもっとも重要な点だと思う。
そして、そのことが、『見えている』必要がある。
業界内だけの共同なら、業界の噂話で相手の性格はだいたいわかるが、異業種との連携を模索するときには、相手がそういった人間なのかどうか判断するのが非常に難しい。
しかし、SNSでその人が長期間に渡ってちゃんと活動をしていれば、その人となりというのはだいたいわかってしまうのだ。
つまり、先のリストにはもうひとつ付け加えるべきことがあって、それは、
5.SNSでその人となりがわかるようにしている
ということかと思う。
僕は、いま僕が一緒に取り組ませていただいているいくつかの共同プロジェクト(Kimono アーカイブ含む)に、ほんとうにドキドキときめいている。
そのすべてを成功させたいと思っている。
小さな会社の社長と言えば、よほどのアイディアマン、もしくは特殊な技能をもっている人か、生き残るためにはガツガツと泥水の中も行くというイメージだが、『善いひと』であることが、そして仲間とうまく協力していくことこそが、小さな会社の第一の生存戦略になってくれると嬉しいなと思う・・・・のであった!