起業するのにベストな年齢はあるのだろうか?
僕は42才のときに会社を辞めて自分のビジネスを始めた。
12年経ってみると、すでに54才で残り時間が気になり出した。
もし時計の針を逆回しできるなら、何歳まで戻して、いつ自分のビジネスを始めるのがベストだったのだろうと考えることがある。
大学卒業後すぐに起業していたら、たぶん失敗を重ねていただろう。
失敗から何度も立ち上がるエネルギーがあったとも思えず、そのまま沈んでいたような気がする。
結局19年、会社でビジネスを学ばせていただいたわけだけど、どのあたりで充分な知識・経験を積んだのだろうか。
最初の5年は、ほとんど耐えることしか学ばなかったような気がする。
おそらく、その次の5年ぐらいから、マネージメントなどの最低限のことを経験させていただいたのではないだろうか。
実際のところは、そのあとの9年、とくに課長時代に学ばせていただいたことが一番大きく、その期間を抜きにして、ほんとうに最低限のことは学んでいたと言い切る自信はない。
だが、最初の10年でおおむね学んだとすると、起業は35才ぐらいのときに挑戦したほうが良かったのかもしれない。
そもそも、シリコンバレーでは、35才までに事業をモノにするかマネジメント層にいなければ終了!とみなされるらしい。
その考えでいけば、35才で始めたとしても、すでにギリギリアウトである。
早い年齢で起業することのメリットは、創造的なアイディア、新しい技術への対応力、経験による抑制から自由でいれること、引きずっているものが少ないことで、事業にフォーカスできることなどがあげられる。
実際のところ、 現代のスター経営者、たとえばBill Gates, Steve Jobs, Larry Ellison, Michael Dell, Sergey Brin, Larry Page, Mark Zuckerberg などは、すべて10代後半もしくは20代に会社を創業している。
しかし、一方、遅い年齢での起業もメリットがないわけではない。
経験から学んだことはたくさんあるだろうし、「学び方を学んでいる」「消費者や従業員、関係者のホンネを探り当てる能力がある」ような人は、新しい事業を始めてもうまく回る可能性が高い。
35才でオワリと言われているIT業界でも、Jimmy Wales(ウィキペディア)の創業は35才, Michael Arrington(TechCrunch)も35才, Reed Hastings(Netflix)は37才, Craig Newmark(クレイグズリスト)は42才, Robin Chase(Zipcar)は42才である。
結局のところ、起業の最適年齢は、「柔軟性」と「経験」のバランスによって決まると考えるのが一般的なようだ。
もし、僕が35才のときに脱サラしていたらどうなっていただろうか。
いまよりももっと、事業拡大のスピードをあげることができただろうか。
若い分、もっと貪欲に、もっとハードに働いたかもしれない。
新技術の取り込みももっとスピーディーだったかもしれない。
そんな風に考えると、たしかに、もうちょっと早くスタートしてみても、人生は面白くなったかもしれないなとは、思うのだ。
でも、その思いには、今の僕は、そろそろ歳だからという現在の事業規模に対する言い訳も多分に含まれている。
IT業界以外では、中高年の起業の成功例も数多くある。たとえば、ドン・フィッシャーがドリスとギャップを創業したときは41才、サム・ウォルトンがウォールマート1号店を開店したのは44才、ハーランド・サンダースがケンタッキー・フライド・チキンの創業したときは62才である。
やっぱり、年齢は関係ない。
「もうちょっと早く辞めるべきだった」などと言いながら、ほんとうのところは、自分でわかっているのだ。
もし僕が35才で自分のビジネスをスタートさせていたとしても、いまと変わらぬ心のなかの壁が存在していて、事業規模はさほど変わっていなかっただろうってことが。
そして、最近さらにこんな風に思うことがある。
若いころ文章を書くのが好きで作家を夢見た。
諦めてサラリーマンを力いっぱいやって色々学んで、壁にぶちあたった。
死ぬ気で会社を辞めて、自営をはじめて、なんとか軌道にのせることができた。
そして、やっぱり書きたくて本気でブログを更新し続けたら、嬉しい反響をもらえることもでてきた。
何歳で起業するのがベストかなどというタイミングはない。
ひとはそれぞれ、与えられた道、どうしてもその道しか歩くことができない道に、結局のところ、導かれていくのだな、と。
*参照サイト
How Old is Too Old to Start a Great Company?
What's the Best Age to Start a Business?
photo by jim3