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ICHIROYAのブログ

元気が出る海外の最新トピックや、ウジウジ考えたこととか、たまに着物のこと! 

★★★当ブログはじつはリサイクル/アンティーク着物屋のブログです。記事をお楽しみいただけましたら最高。いつか、着物が必要になった時に思い出していただければ、なお喜びます!お店はこちらになります。★★★


いろいろと頑張ってます!

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                                                                                                  photo by marin

 以下は、その推敲のために書いた自分への覚え。
 最近もっとも感動した『64』を何度も読んで、そのテクニックを学ばせてもらおうと思っている。とくに、書きながらずっと迷っていた点。なにを書いて、なにを省略すべきか、どのように表現すべきかというようなことを『64』をお手本に学びたい。
 とりあえず、昨日から学んだことをまとめた。誰の役にも立たないだろうけど。

■省略について

  1. 主語の省略
    • 最初に主語(三上義信)が出てくるまでに8行。それまでは、文章はすべて主語が省略されている。
    • 視点者の主語は可能なかぎり省略する。省略することで、感情移入しやすくなる、また、リズムが出る。
  2. 行動の省略
    • 登場人物の行動をすべて説明記述する必要はない。たとえば、電車に乗るシーンは、「駅舎に向かった。」「新幹線のホームにアナウンスが流れた。社内は空席が目立った。窓際に美奈子を座らせ・・・」のふたつの文章で描かれている。切符を買ったこと、改札を通ったこと、ホームにあがり電車を待ったこと、電車に乗ったこと、席を探しておそらく自由席に座ったこと、などはすべて省略。心理描写もはさまず、改行のみで省略できる。
    • 「◯◯が言った」は第1章にわずか、3回。そう書かなくてもわかるように書かれている。あるいは「◯◯は虚ろなままだった。◯◯は言葉を濁した。◯◯は同情顔だった。」などとその言葉を言った状況や行動の描写で置き換えられている。
  3. ディテールおよびプロフィールの省略
    • 主人公の歳、職業が出てくるのは、章の後半。差し出した名刺に相手が目を落とした場面で、「ーD県警本部警務部秘書調査官<広報官> 警視 三上義信」と名刺を描写することで紹介される。三上の歳、三上が着ているものについての描写はなし。
    • 「美奈子」が妻であり、「あゆみ」の母であることは、わざわざ「妻の」とか「母の」とか「娘の」というように説明されてはいない。行動や主人公の心理描写を読み進めるうちに、それがわかってくる。
    • 「美奈子」の歳、着ているものは最後まで言及なし。「美奈子」は美しく、「あゆみ」は主人公似で醜いという設定(具体的にはどう醜いのかは描写されていない)。
    • 第3章では、逆にはじめて出てきた記者を、最初にこう説明している。「口火を切ったのはブレザー姿の手嶋だった。『東洋新聞サブキャップ。H大卒。26才。思想背景なし。生真面目。敏腕記者症候群』。三上の手帳にはそうメモ書きしてある」。1,2章とはまったく違う。この場合は、同じシーンにつぎつぎに記者が出てくるので、混乱しないためにそうしている(ほかの記者の紹介も同じようにしている)。つまり、必要な時には、そうするが、必要でない時はしない、ということ。

■表現について

  1. 短文の積み重ね。主語ひとつ述語ひとつのような短文を何回も重ねることを躊躇しない。
  2. 過去形(~た。)をベースにしながら、一連の行動をスピードをもって描く時は現在形(~する。)をはさんで、最後にまた、過去形で落ち着かせる。
  3. 「ー」を文頭に置いて、感情描写を書く。(例「ー朝っぱらからやる気か。」と一文を書けば、「と三上は思った」と書かなくても良い。考えたことだなと読者は直感的に理解する。
  4. 「ー」は文末におかれる場合もある。「・・・」との違い、効果は要研究。
    電話の会話の描写では、
    「◯◯◯◯◯」
    <■■■■>
    「☓☓☓☓☓」
    というように「」(視点者が喋ったこと)と<>(電話の向こうの相手が喋ったこと)を使い分けている。
  5. 冒頭、歩いているのは主人公の三上と美奈子だが、当初は美奈子が付き添って歩 いていることは書かれず(読者はひとりで歩いているのかと読んでいて)、「肘の辺りに、コートの生地を通して食い込む美奈子の指先を感じていた。」という 素晴らしい一文が出てきて、はじめて、美奈子が肘をつかんでついてきたいたことがわかる。そのテクニックによって、主人公がいかに緊張して、いかに普通の精神状態でない状況で、警察署に訪れ、死体安置室に向かったかということを、うまく表現している。
  6. 死顔を見て、それが自分の娘でなかったことがわかったことの描写。「凍りついていた空気がふっと動き、美奈子の額が肩口に押しつけられた。肘を刺していた五指が弛緩していくのがわかる。」。僕なら、まず、「娘ではなかった」と書いてしまいそう。そう書かずに行動を描くことで、より効果的に描かれている。