ICHIROYAのブログ

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未来は修理を必要としている! ~新素材sugruの挑戦

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Do-it-yourself派の人が増えたとはいえ、何かが壊れてしまったら、新しいものを買い替えることしか、考えない人が多い。
僕だってそうだ。

たった今、気になっているのは、iPhoneの接続コードで、iPhoneとの接続部分のビニール部分が折れてしまって、中の線が見えている。
しばらくはもつけど、今度ヨドバシにでも行ったら、絶対に買わなくちゃ、と思っている。

それを自分で修理する、という選択肢はない。

でも、sugruがあれば、この通り、簡単に修理することができる。

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そういえば、すでに新しいのを買っちゃったけど、車のキーのプラスチック部分が壊れてキーホルダーにつなげられずに困ったことがあった。

それも、sugruがあったら、ほらこの通り。
簡単に直ってしまう。

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僕は知らなかったのだが、sugruは、タイム誌が選ぶ2010年の発明Best50に選ばれた、少し前に話題になった新素材なのだ。

自由に整形できて、24時間後に固まる。
固まると、耐熱、耐水効果もあり、柔軟性もある。
同種のほかの素材との一番の違いは、sugruがほとんどすべてのものとくっついて固まるということだ。

プラスティック製品が壊れてしまったら、瞬間接着剤で修理することはできるが、そのためには、とれた部分が残っていなくてはならない。
その点、sugruは、部品の成型の役まではたしてしまうのだ。

その使い道については、たとえば、こんなページを見てみて欲しい。

Top 10 DIY Miracles You Can Accomplish with Sugru

amazonの評価のページを見ると、ほかのもっと安い素材もある、と書いているひともいる。たしかに、簡単に成型して固める素材は、ほかに安い素材もあるようだが、sugruのように、くっつくことはできない。


あまりに素晴らしい発明に、びっくりしてしまった。
そして、sugruが世に出た道のりを読んで、また、いたく感動した(おい、おれ!感動、感動っていうな!まあ、今回だけは、許せ!)。

創業者のジェーンさんがそのストーリーを語っている動画があるが、sugruのページにも、2003年には、プロダクトデザインの学生にすぎなかったジェーンさんが、どのようにして、sugruを発明し、製品化にこぎつけたのか、という話が、Our Storyのページに紹介されている。

2003年。学生だった彼女は、そもそも、こう考えていた。
「いつも新しいものを買うのはいや。すでに持っているものを工夫して、自分にとって、より使いやすいものにしたい」と。

シリコンを使った試作品をつくってみたが、たしかに使いやすいけど、製品にするのは、無理。
もちろん、彼女の専攻は、化学ではない。
しかし、彼女は、それを製品にしようと決心し、専門家たちに援助を依頼し、チームをつくる。

2005年、彼女たちは賞を受け、約500万円をえる。
素材開発のため、その資金を利用していくつかの試験を外部に依頼するが、たった3つの試験で、75万円かかる。
自分でつくるしかないと決心したジェーンさんは、小さな研究所を設立して、自分で開発を始める。

2006年、消費者向け商品をつくっているいくつかの大企業と、コラボして一気に製品化することを試みる(たとえば文具の会社とか)

2007年、だいぶん製品は完成度があがってきたが、「どんなもににも、くっつかせる」ということが最大の課題。

2008年、大企業との歩みは遅く、自分たちのブランドをつくらないとダメ、と決心する。
また、この年、「sugru」という名前をおもいつく。アイリッシュで、「遊ぶ(play)」と言う意味。
しかし、リーマンショックが彼女たちを襲う。
資金は底をつき、資金提供者は現れず、彼女は、泣く。

2009年、新しい解決を思いつく。もう、人の言うことは聞かない。自分の思う通りやる!
そして、6月、充分な資金を提供してくれる資金提供者が現れる。
しかし、完成までに6か月というリミットを、自ら課す。
夏、機械を買い、デザインを決め、ウェッブサイトをつくる。
最初の1000パックを11月につくる。
12月、製品を有力ブロガーに提供し、満点のレビューを得る
そのレビューから訪れたひとたちで、1000パックは6時間で完売!

こうして、プロダクトデザインの一学生だった彼女の夢は実現したのだ。



Jane ni Dhulchaointigh: The Magic Is in The Process from 99U on Vimeo.


ところで、sugruだけど、日本ではあんまり盛り上がっている雰囲気がない。
話題になった当時は、日本のネットショップでも買えたようだが、現在そのショップの品ぞろえからは消えているようだ。
(アメリカのアマゾンから買える)


いわゆる「世界を変える」素晴らしい製品のように思えるけれど、実際のところ、どうなのだろう。
つまり、人々は、「ものが壊れたら新しいものを買う」から、「ものが壊れても、なおして使う」という方向にシフトしてくれるのだろうか?
コンセプト自体は素晴らしくても、結局のところ、「新しく買ったほうが、便利で安い」ってことになると、需要は伸びない。

もちろん、僕は、sugruが、現在の、使い捨ての大量消費というみんなの意識を変えて欲しいと願っているけれど。

最後に、彼女たちのモットーを紹介したい。

The future needs fixing. (未来は修理を必要としている)