反論もあり!「フォントを変えるだけでアメリカは2億ドルの節約ができる」という少年の大発見の行方は?
フォントを変えるだけで、アメリカ連邦・州政府の印刷代が、年間2億3400万ドルもの節約になるという研究成果を14才の少年が発表して話題をさらっている。
U.S. could save millions by changing font type, teen finds
(アメリカはホントを変えるだけで何百万ドルもの節約ができるーティーンの発見)
一般的に使われているTimes New Romanや Century Gothicを、Garamondに変更するとプリンターのトナー消費量が29%減る計算になるという。
そんな簡単なことで、日本円で200億円も浮くとしたら、凄いことだなと、感嘆した。
しかも、それをみつけたのが14才の少年であるということも驚きだった。
あやうくこの記事だけを読んで、『熱い』記事を書いてしまうところだった。
しかし、その後、こんな反論も上がってきていることに気づいた。
No. Switching Typefaces Will Not Instantly Save The Government $400 Million
(NO! フォントを変えるだけでは政府は4億ドルの節約はできない)
反論はこうだ。
それぞれのフォントはこんな形をしている。
Garamond (黄色)
Times New Roman (ピンク)
Century Gothic (水色)
これは同じサイズ(190ポイント)のフォントを並べたもの。
それを重ねると下のようになる。
たしかに同一の『ポイントサイズ』のものなのだが、水色のCentury Gothicが一番大きく、 Garamondがもっとも小さい。
でも同じ『ポイントサイズ』で、なぜこうも違うのか。
実際に72ポイントで印刷してみたら、『x』の高さは以下のようにことなっていた。
Garamond 0.95cm
Times New Roman 1.1cm
Century Gothic 1.3cm
つまり、同一の『ポイントサイズ』でも大きさが異なるのだ。
Century Gothicのほうが全体的にかなり大きく、インクの消費量が減らせそうであることは実感できる。
しかし、同じ程度の『実寸』に合わせてみるとどうだろうか。
『x』の小文字の高さを同じサイズに合わせて重ねてみると、下のようになり、ほとんど面積的には変わらないことがわかる。
この例では Garamondが190ポイント、Times New Romanが165ポイント、Century Gothicは140ポイントで重ねて、おおむねXのサイズが一致した。
結局のところ、同一の『ポイントサイズ』で比較したと思われた研究の『同一』が同一ではなかったという話になる。
『12ポイントサイズ』のCentury Gothicより、『12ポイントサイズ』のGaramondのトナー消費量が少ないという結論は正しい。
だが、そもそも『12ポイントサイズ』のCentury Gothicと『12ポイントサイズ』のGaramondでは、Garamondの実寸のほうがかなり小さいものなのだ。
では、アメリカのそれぞれフォントの『ポイントサイズ』は、どうやって決めているのだろうか?
まことに申し訳ないが、上記の記事にも、そのあたりのことは書いておらず、調べようとしたが時間切れになってしまった。(もし、ご存知のかたがおられたら、ご教示ください)
反論記事を書いたひとの結論は、『ポイントサイズよりも、実際の文字の大きさで、トナー消費量を調べるべき。その少年の研究の結果は、とどのつまり、小さいフォントのほうがトナー消費量が少なくてすむという、当たり前の話。追求するべきは、極力小さな印字面積で、読みやすいフォントを探す、つくるということ』であった。
なるほどと思ったが、肝心のフォントの『ポイントサイズ』の決め方がわからず、こちらもちょっと消化不良。
さて、日本でも、エコフォントというのがある。
Gigazineさんの紹介ページがわかりやすいが、フォントを穴あきにして、インクの量を約20%節約するという。
たしかに、こんな例を見ると、「では、政府の書類は全部Garamondに変えてしまおう!」と言う前に、もうちょっと、工夫のしようがあるように思える。
なお、この少年が使ったソフトは、APFillというもので、印刷前に用紙の何%がインクで覆われることになるかを計算してくれるそうだ。
これで日本語のフォント毎のインク使用量を調べることができるのかどうかわからないが、プリンターのインクに関しては、まだまだ節約の方法はありそうだ。