ICHIROYAのブログ

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「今日から会社員になった人たちへ:会社との「距離感」を意識しよう」を読んだ

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これは、最近ゲットしたアンティークの袱紗なんだけど、柄の意味がわからない。
もちろん、蓑亀(尻尾のように苔がついた亀)は、長寿を願う意味が込められている。
亀たちが積み上がっているのは、親も子も孫もと、全世代の長寿を願っているのだろう。
そして、その亀には、めでたい赤い紐がかけて結んである。
そこまでは、わかる。
でも、蟹が2匹、その紐に取りついている。
紐を解こうとしているようにも、切ろうとしているようにも見える。
そもそも、亀たちも、なんだか迷惑気な顔をしている。
いったい、この絵は何を意味するのだろうか。何を願ってつくられた柄なのだろうか。


ところで、4月1日から、新社会人たちが新しい職業人生を始めた。
その新社会人たちに贈る言葉も、あちらこちらで見られる。
たとえば、このエントリーはたくさんの共感を集めているようだ。

今日から会社員になった人たちへ:会社との「距離感」を意識しよう


で、この袱紗を見ていて、このエントリーを思い出した。
積み上げられて、首をすくめて耐えているような亀たちは、まるで組織人、サラリーマンのようである。
ほとんどの亀たちは、上下の亀に挟まれて、首をすくめて耐えている。
上にいくほど、微妙なバランス感覚が要求されるし、窮屈だ。
そして、なぜだか蟹は、そのピラミッドから離れて、自由に紐と戯れている。
会社のなかにいて、しかし、会社の価値観に染まらない、自由人のようにも見える。


会社の価値観に染まるな、会社と距離をおけ、個人でも生きていけるような技量を磨け、というアドバイスは、確かに正しい。
ブラックな会社もあれば、限りなくブラックに近い上場企業もあり、ちゃんとした会社だと思っていたら、40才過ぎてリストラされたりと、もう、会社が頼れないのは、火を見るより明らかだ。
そして、大きな組織で、取締役まで出世するひとは、ほんの一握りだ。
会社にすべてを捧げたとしても、9割以上のひとは、失意のままに会社を去ることになるのだ。
おまけに、昨今の厳しい労働環境では、精神的に潰されかねない。


会社からは距離をおけ、自分のスキルを磨いて、会社に勤め続けるにしても、自立せよ、というアドバイスはまったく正しい。
袱紗の図で言うと、亀になるな、蟹になれ、と。


だが、である。
話はそう簡単ではない。
新入社員諸君は、会社の偉いさんから、会社の一員として価値観を共有するように、会社が求める人材になるように、訓示を受けただろう。
そして、ある程度、反発する気持ちももっただろう。
そのあとに、上のようなエントリーを読むと、そうだよね!と納得して、その話を鵜呑みにしてしまうかもしれない。


だが、ちょっと待て。
僕は大企業に入って19年勤めた。
その後も10年以上、同僚や上司、部下たちがどのように出世の道を歩むのか、興味津津でウォッチしてきた。
僕は、会社人としては、間違いなく、敗者であった。
そして、身近な人達が、取締役に、そしてそれ以上に出世するのを見た。


その差がなんであったか、いまではよくわかる。
理由はふたつ。
ひとつは、能力の問題である。
出世した身近な人達の仕事のスピード、深さ、広さ、柔軟さで、かなわなかった。


そして、もうひとつは、僕が、亀ではなく、蟹であったことだ。
自分は亀になるもんか、蟹になるんだ、と意気がっていた。
社内の付き合いは大事にしなかったし、正論を吐き、上司を困らせることにかけては、超一流であった。
だけど、やっぱり、最終的に、出世したのは、積み上げられた亀のように、自分の分を守り、上も下もよく見れる、バランス感覚の良い人たちだった。
さらに、その人達は、入社してから、何十年という長い間、ずっと、そのバランス感覚を保ったまま、最終目標を見ていた。しかも、たいていの人は、入社以前から。
長い長いレースを、ずっと、積み上げられた亀のように、最高のバランス感覚で耐えぬく。
その間には、不遇の時もあるし、たまたま、ライバルが先に行って、自分の上司になるかもしれない。
しかし、そういった人たちは、不遇にあたっても、絶対に腐らず、変わらぬバランス感覚で、前を見ていたのだ。


蟹であれ、という。
たしかに、そのアドバイスは、正しい。
だけど、蟹になれば、その組織で、最重要な判断を任されるようなポジションには出世できない。


新入社員の全員が蟹になれば良いが、あなたの隣の親切そうな同期は、すでに、亀となって組織のトップに登りつめようと覚悟を固めているかもしれない。


組織に属したら、自分が亀になるのか、蟹になるのか、なるべく早く、その姿勢を決めたほうが良い。
中途半端が一番だめだ。


そして、


蟹になるなら、覚悟せよ。
いつか、同期の連中を上司と仰ぎ、膝まづく日が、必ず来ることを。
それが嫌なら、会社を去るか、独立するしかない。
会社を去ってより良い会社に移籍できるほどの職業能力をつけることも、独立して会社員時代を越える収入を得ることも、至難の技だ。
だが、蟹になると決めたら、それを目指して、がんばるしかない。


亀になるなら、覚悟せよ。
私生活も、趣味も、社外の友人たちの付き合いも二の次にして、会社にすべてを捧げよ。
運に恵まれたら、取締役になれるかもしれない。
が、亀に徹しても、長い長いレースを頑張りぬいても、
報われないまま終わる場合も多いと承知せよ。
ひょっとしたら、順調に出世していても、会社自体が破綻していまうかもしれない。
だが、出世したければ、同期に負けたくなければ、亀になって頑張るしかない。


ふう~~
新入社員諸君!
ま、事ほど左様に、会社勤めとはたいへんなもんなのじゃよ。
でも、それがホトホト嫌になったら、古着屋になるって道もあることだし、まあ、会社勤めがどんなものか、楽しんでやってみてくれろ~~~


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