諦めなければ、ありえないと思っていたことも起きる!(ポジティブ思考がもたらすもの)
そんなことは無理だ、起こり得ないことも、強く望めば、案外起きるもんですね。
今日のお話は、コンタクトレンズがおこした奇跡、二題。
大学を卒業してからは、ほとんど、ずっと、眼鏡をかけていますが、大学のころはソフトコンタクトレンズをしていました。
現在は、老眼に乱視もすすんでいますが、それでなくても、近視がひどく、裸眼では、0.02~0.03ぐらいの資力しかありません。朝とか眼鏡をどこにおいて寝たか忘れてしまうと、眼鏡を探そうにも、目がろくに見えず、探せないようなことになってしまいます。
大学時代、コンタクトレンズだったのは、色気づいていたこともありますが、体育会のアイスホッケー部に所属していたので、どうしても必要だったという事情もあります。
アイスホッケー部のことを書くと長くなるので、またの機会にしますが、僕らの世代のチームは、ぼちぼちって感じでした。僕が副将で第一フォワードのウィングだったせいで、ここぞという試合に弱く、いいところまでいくのに、最後の試合や、大事な定期戦は、ことごとく落としてしまいました。
さて、ある日の朝、洗面所で、コンタクトレンズを入れようとして、レンズが指の先から消えてしまいました。
目にも入っておらず、顔や服にもついていないようです。
足を踏みかえると踏んづけてしまうかもしれないので、足は動かさず、足元のカーペットを探します。
でも、やっぱりありません。
服もすべて脱いで、服についていないか、目を皿のようにして探しました。
なんせ、コンタクトは、さっきまで、指先にあって、狭い洗面所から動いていないんです。
絶対そばにあるはずです。
アルバイトでクラブにかかるお金と生活費、学費を稼いでいた僕にとって、コンタクトの紛失はとっても痛い出費です。たしか、当時、片方で2万ぐらいはしたと思います。
1時間ぐらいは探したでしょうか。
そろそろ、服を脱いだり、足も踏みかえたりしたので、狭い洗面所とはいえ、どこかへ紛れてしまってみつからないような気になってきました。
ついに諦め、真っ暗な気持ちで、学校へ行きました。
コンタクトのせいで、また、2日、バイトしないといけないなあ、とほほ。
その日は授業だけで、練習もバイトもなく、夜、家に帰って来ました。
風呂に入ろうとして、服を脱いで、かかり湯をします。
そのとき、TAMAに、なんだか、違和感があります。
できもののようなものが指に触れるではありませんか。
あのせいか、このせいか、いや、そんな覚えはない。
僕はぞっとして、そのモノを触って、沸き上がってくる黒い不安と戦いました。
で、それは、かさぶたのようになっていて、ポロっととれるではないですか。
赤黒い病巣を想像しながら、つまんだものを、恐る恐る眼の前にもってくると・・・
かさぶたではなく、失くしたコンタクトレンズでした。
どうやら、TAMAと眼球では、サイズが同じで、首筋から下着の中に落ちたコンタクトレンズは、ちょうど、TAMAを眼球と勘違いして、ぴったりと収まって、張り付いたまま、一日を過ごしたようです。
もちろん、あまりの嬉しさに、さっと洗って、すぐに眼に装着しました。
見えること、見えること!
さて、大学時代のコンタクトレンズの奇跡は、これだけではないのです。
4回生、最後のリーグ戦の最終戦の前の試合。例によって、そこまで全勝で来ており、落とせない試合です。
第一ピリオド始まってすぐのことです。
敵ゴール付近で、顔に肘打ちを食らってしまいました。
あまりの痛さに、しばらく戦列を離れたあと、ポジションに戻るべく走っていると、視界に濃い霞がかかっているようで、何も見えません。分厚いグラブをした手で、眼をこすってみますが、視界は戻りません。
コンタクトがずれたかな、と思い、行ったんベンチに帰り、グラブもとって、眼のあたりを探ります。
眼にコンタクトレンズは残っていないようです。
チームメートに、「おい、コンタクト落とした!顔か胸についてへんか?!」
コンタクトはみつからず、眼鏡も持ってきておらず、交代できるメンバーもおらず、フォワードのチェンジの指示で、そのままリンクに戻りました。
でも、もちろん、何も見えません。
自分だけ濃霧のなかにいるようで、パックもだいたいどのへんにあるかしかわからず、点をとるどころか、ひとり氷の上で夢遊病者のように、ふらふらしているだけです。
ああ、最後のリーグ戦なのに、これで優勝逃したか~気持ちは真っ暗です
第一ピリオドが終わり、ピリオド間の休憩になりました。
無駄とわかってはいたんです。
リンクは、洗面所の何千倍も広く、床は白い氷で、透明で小さなコンタクトレンズを見つけるのは、どう考えてもミッション・インポシブルです。しかも、選手たちが、エッジのきいたスケート靴で、その上を走り回っているんです。すでに、まっぷたつどころか、散り散り粉々になっていても、なんら不思議はありません。
でも、僕は、皆に、「コンタクト落とした。探すの手伝ってくれ!」と頼んで、リンクの上、敵ゴール付近に向ました。
もちろん、チームメートもリンクに戻ってくれましたが、途方にくれるばかりで、あまり、真剣に探してくれそうにありません。
僕は、肘打ちを食らったとおもわれる地点に戻り、ばさっと俯けに寝転がりました。
眼の前の氷は、スケート靴のエッジに刻まれてギザギザで、削られた氷などで、かなり荒れています。
絶望しながら氷の表面を見て、そりゃみつからんわなあ、と思ったそのときです
なんと、まさに、僕の目の前に、コンタクトレンズが、あったのです!
ちゃんと、レンズの曲面を保ったまま、コンタクトは、目の前に、ぽつんと落ちていたのです!
あったあああ!
その日、コンタクトレンズを再装着した僕は、選手生活のなかで、最高の日を迎えることになりました。
戻った視界が、あまりに、鮮やかで、ビビッドなため、ふだんにはなかったことなんですが、文字通り、「後ろまで」見えたんです。リンク上のチームメートの動きがはっきり見え、当たられ弱いはずの僕は、チェックも跳ねかし、自由自在に抜いて、パスにシュート。まさに、獅子奮迅の活躍で、チームを勝利に導きました。
主将の川崎くんが、「おいっ、いつもと違うぞ!チェックされても、相手をひっくり返してるやん!どうしたんや!」と叫んだほどでした。
僕の生涯最高の日でした。
でも、コンタクトレンズの奇跡は、その日しか持たず、次の日の優勝がかかった試合では、僕はふだんの当たられ弱い自分に戻り、優勝を逃してしまいました。
この話の教訓は、
ありえないと諦めていたことも、強い意思で望めば、起きる。
ただし、それで得られる幸運は、たいしたことない
ってことですね。