ICHIROYAのブログ

元気が出る海外の最新トピックや、ウジウジ考えたこととか、たまに着物のこと! 

★★★当ブログはじつはリサイクル/アンティーク着物屋のブログです。記事をお楽しみいただけましたら最高。いつか、着物が必要になった時に思い出していただければ、なお喜びます!お店はこちらになります。★★★


Kimono Flea Market ICHIROYA's News Letter No.646

Dear Ichiroya newsletter readers,

Konnichiwa, this is Mari from Ichiroya.
Those Ichiroya customers may have received email from me after you made payment. Me
and my coworkers start writing Ichiroya newslatters from today on. Don't worry, Yuka
is one of us. We would like to introduce interesting movements, kimono topics and so
on from Osaka, Japan.

It is getting hotter and hotter in Osaka. It is already hitoe(not lined) kimono
season. In summer, I want to make people around me feel cooler by just watching me
in sumemr kimono. On the hot days, I wear "beaded" items to feel and look cool!

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Here is a beaded han-eri(decorative collar for juban).

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Whenever the cold beads touch my neck, I feel cool!
The shinny beaded haneri looks cool, doesn't it?

You can find several different colors of beaded han-eri at
Ichiroya.
http://www.ichiroya.com/item/list2/295382/
http://www.ichiroya.com/item/list2/295383/
http://www.ichiroya.com/item/list2/295384/
http://www.ichiroya.com/item/list2/295385/
http://www.ichiroya.com/item/list2/295386/


I also tie beaded Obijime.

 

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I crocheted it by myself.
If you love to crochet, it is easy to make one.
All you need is patience!!!!
It takes me a while to finish it because it is hard to
find time to crochet in my busy schedule.
If I could crocheting all day long, I couldn't be happier!!!

 

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Unfortunately, Ichiroya doesn't carry any beaded obijime.
If you want one, please contact me to order.
Just kidding! hahaha!

Actually, beaded items can be worn all year round, not only in summer!
Anyways, it is just a tip on how to look cool in kimono.
Enjoy wearing kimono!

 

 

短編小説10 『閉所恐怖症』

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                                                                                                   photo by  Mateusz R

 

 はじめて麗子を紹介された時、圭一はあやうくしどろもどろになるところであった。
 三十才前後と思われる麗子は、それほどの美人だった。
 どこにも欠点がないということではない。おそらく、鼻梁は細すぎるし、全体にやや尖った印象の顔である。だが、にっこりと笑って、よろしくお願いしますと圭一に言った時のその笑顔は、熱帯の孤島のジャングルに咲く花が、突然目の前で開いたような印象であった。
 だが、待て。
 圭一は麗子が自分の前を去ってからも、その姿を目の端で追いながら考えた。
 もうすでに、お手つきを二回している。一般的には、結婚に至らない社内恋愛は一回は許されても、二回目は許されないと言われている。が、圭一はすでに、2回、社内で付き合った彼女と別れてしまっている。
 ハンサムで仕事もでき、頭も良ければ人当たりも良い圭一のことだ。今のところ、2回目の破局を問題視する声は上がっていないようだが、さすがに3回目は許されないだろう。自分でもそれはわかっている。
 進学校から一流大学に入り、180センチ近い恵まれた身体をいかしてアメリカンフットボールのスター選手として鳴らし、卒業後は誰もが羨む有名商社に入って、まさに順風満帆な人生だ。色恋に溺れて、すべてを台無しにするなんて馬鹿げている。
 派遣社員として自分の部署の事務をするためにやってきた麗子が、いくら自分好みの美人だからといって、そんなリスクをとるつもりはない。
 
 すべてにおいて恵まれて、神様があえて人間を不平等につくりたもうたことの証明にでもなりそうな圭一にも、じつはひとつだけ弱点があった。
 閉所恐怖症であった。
 32歳の圭一が、自分が閉所恐怖症であるということを知ったのは、ごく最近のことであった。
 ベトナム、ホーチミンを仕事で訪れた時、郊外のクチという村を観光で訪れた。クチにはベトナム戦争当時、アメリカ軍と戦った人たちが掘ったトンネルがある。地下に、まるでアリの巣のような狭いトンネルが延々と掘り巡らせてあり、広く掘られた部屋には、病院や学校や兵器工場まで作られていた。
 ベトナム兵と戦うアメリカ人兵士は、イノシシでも捕獲するかのような刃物を立てた落とし穴を避け、このトンネルに篭って神出鬼没に現れるベトナム兵と戦わなければならなかった。
 圭一はおおいに興味を惹かれて、案内に従ってその狭いトンネルに入った。狭いトンネルを、大柄な圭一は身を屈めて前に進んだ。だが、だんだんと息苦しくなってきた。途中でトンネルは分岐しているが、案内に従って見学している人たちは、一列につながって順路になっているトンネルだけを進む。
 かなり進んだ頃、突然、列が止まって動かなくなった。圭一はその場で屈んで列が再び動き出すのを待った。だが、列は動かない。前にいるのは若いベトナム人の男性数人で、後は白人のカップルである。なにが起きているのか不安が高まった頃、遠くから人が叫ぶ声が聞こえてきた。ベトナム語なのか、意味はまったくわからない。だが、ひとりの声ではなく、ほかの声もそこにかぶさり、トンネルのどこかでなにか騒動が起きているように思える。
 圭一はそこでパニックに陥った。早くその場を離れたくても、前も後も人の行列は続いており、すれ違うスペースもない。
 ひょっとしたら、自分たちは観光用の順路をはずれてしまって、先頭がどこにいるかわからなくなっているのではないか。息も苦しい。こんな密閉されたトンネルでは充分な空気もないのではないか。ひょっとすると、自分はもうここから出られないのではないか、そんな不安に押しつぶされそうになった。
 狂ってしまうのではないか、パニックに襲われた圭一は、その場で脂汗を流し震えた。
 ギリギリのところで、なんとか列は再び動き出し、圭一は無事にトンネルの外に出た。
 そんなことがあったのだが、まだ、その時は、自分のその病に気がついてはいなかった。
 ここ数年、時折、差しこむような頭痛がするので、医師に勧められて脳のMRIを撮った時のことだ。
 肩が動かないようにおさえられて、狭い洞窟のような機械に頭を突っ込まれる。工事中のような変な音が脳内を叩いた。
 圭一は、突然、そこから逃げ出したくなった。肩がおさえられているので、頭をその機械から引き抜くことができない。
 なぜそんな強迫観念にとりつかれるのかわからないが、ともかく、その機械に頭を覆われて、そこから自分では出ることができないのではないかという不安感に、胸が締めつけられる。
 自由になっている両手両足で暴れて、医師に検査を止めてもらおう。
 いや、それも変だ。あと、ちょっと、あと、ちょっとだけ、我慢してみよう・・・
 圭一はなんとか検査を最後まですませた。
 医師によるとMRIによる脳の異常はみつからなかった。
 だが、圭一は、自分が閉所恐怖症であることを知ったのだった。
 
「麗子さんって、お子さんおられるってほんと?」
 席に配布書類を持ってきてくれた麗子を呼び止めて、圭一は訊ねた。
「ええ、いますよ」
「そうは見えないなあ」
「矢澤さんは?」
「まだ、独身ですよ」
「あら、矢澤さんこそ、そうは見えないわ。なぜ、美人揃いのこんな職場で、みんな放おっておくのかしらね」
「僕なんか、人気ないですよ」
「そうかしら。まだまだ、遊びたいだけじゃなくって?」
 いやいや、図星を突かれた圭一は笑って言った。
「僕って、欠点だらけですもん」
「えー」と麗子は言って、圭一のスーツを着た上腕に手を置いた。職場にふさわしい、薄いピンクのマニキュアが塗られた、綺麗な手であった。肌と肌が触れ合ったわけではないが、麗子との予想外の距離に圭一は胸が高鳴った。
「たとえば?」
「閉所恐怖症」
 麗子は圭一の目をのぞきこんだ。どこまで同情したらいいのか測りでもするように。 そして、言った。
「だとしても、ふだん、そんなにお困りじゃないんじゃなくって?」
「そうですね。でも、たとえば、LCCの飛行機とか、怖くて乗れません。窓際に座らせてもらって1時間ぐらいならなんとか耐えることができるかもしれないけど、そうじゃなければ、気が狂いそうになります。満員の商業施設で、身動きがとれなくて、パニックになったこともあるし、手術の時とかも、カテーテルとか点滴を繋がれてベッドから動けないと思ったら、それだけで耐えられないほど苦しいんです。それに、MRI検査じゃ、死にそうになるんです」
「そうなの・・・」
「わかってもらえないと思いますけど、身動きが取れない状況に追い込まれた時のパニック状態は、ひどいもんです」
「ひとはそれぞれ、見ただけではわからない悩みを持っているものね」
「麗子さんもなにか?」
「もちろんよ」
 麗子はそう言うと圭一の腕に置いた手を離し、資料の配布に戻っていった。
 後ろで小さく纏められた艶やかな髪。ほどけば、どんな素敵なロングヘアーになるんだろう。
 圭一は麗子の後ろ姿を目で追っている自分に気がついて、頭を振った。
――― しっかりしろ。人妻で、マザー。手の届かない人なんだ。それにしても、麗子さんの見かけではわからない悩みとはなんだろう。

 圭一が麗子の「悩み」を知ったのは、しばらくのち、所属する食品流通部1課の星田課長と会社の最寄り駅そばのバーで話をしている時のことであった。
 配慮の行き届いた星田課長が配下の部下のプライバシーを噂話に持ち出すようなことはないのだが、圭一に目をかけてくれているので、圭一が麗子に好意を持ち始めていることを察して、あえて知らせてくれたのだと思われた。
 麗子は離婚協議中であるという。
 夫はDVが酷く、麗子にも娘のユキにも暴力を振るう。
 麗子はユキを連れて家を出て夫から身を隠している。夫のDVを証明しない限り、娘の親権をとることができそうもないので、困っていると。
 派遣会社から身元を問い合わせるような電話があっても取り合わないでくれという依頼があり、また、職場では仮名で通してくれということだったので、不審に思った人事部に問い合わせたところ、そういった事情を聞かされたのだと言う。
 圭一はふと思った。
 なぜ、美しい女性は、かくも自分で不幸を招き寄せるのだろうか、と。
 人並みはずれて美しいということは、スタート時点で大きな下駄を履かせてもらっているに等しいと思うのだが、どうやらその「高い下駄」は、普通の幸せに続く道には、向かないらしい。
「わざわざ、お前に知らせた理由は、わかってるな」
 星田課長の強い口調に圭一は我に帰った。
 頷いた。
――― 麗子が欲しければ、人生をかけて、すべてを受け入れる覚悟をせよ。さもなきゃ、手を触れるな、ということだな。

 星田課長は第一選抜で課長になり、最速で部長になるのではないかと噂されていた。
 圭一にとって、星田課長は、直属上司のその上の上司であったが、自分に目をかけてくれているのが痛いほどわかっていた。
 星田課長についていきたければ、麗子のことは忘れてしまうのがベストだ。
 ここで自制心を発揮できなければ、仕事はできても、自制心がなく、将来オンナで問題を起こすヤツという失格の烙印を押されかねない。
 だが、麗子が、ことあるごとに、触れてくるのだった。
 ふたりで話す時、その距離が短く、ときどき、麗子の吐息が圭一の頬を撫でたりする。
 圭一にはわかっている。
 女性の中には、麗子のように、男と接する距離が普通より短い人がいるのだ。そういう女性には、とくになにかの意図があるわけではなく、よほど嫌いな男性でない限り、同じような距離で接している。だが、そうされる側にとっては、とくに麗子のような美しい女性であればなおさら、どっきりする。ひょっとして、この人は、自分に気があるのではないか、と思ってしまうのだ。
 麗子もそういった女性のひとりであるに違いない。
 圭一はそう思うのだが、やはり、冷静ではいられない。
 とくに、シャツをまくり上げた前腕に、直接、その冷ややかな手をそっと置かれた時などは。
「麗子さんの手って、綺麗ですね」
 ある日、圭一は自分の上腕に置かれた霊子の手を褒めた。もちろん、綺麗と思っているのは、手だけではないのだが、さすがにそこまで思わせぶりなことは言えなかった。
 麗子は男を蕩かす笑顔を見せて、言った。
「ありがとう。でも、案外、たくましいのよ、この手」
 その手を圭一から離して、手のひらを自分の方に向けた。
「そうですかね」
「叩くの」
「なにを?」
「オトコとか」
「?」
「嘘、嘘。太鼓とか、シンバルとかよ」
「ドラムやるんですか?」
「ええ」
 意外であった。ピアノやキーボードならなんの印象もなく聞き流していただろう。
 だが、ドラムとは。
 圭一はロングヘアーを振り乱しながらドラムを叩く麗子の姿を想像した。
 なんだか、ぞくっとした。
「へえ!いまも、バンド活動してるんですか?」
「いえ、バンドは、さすがに無理。でも、家で叩いてるよ、毎日のように。矢澤さんは、楽器は?」
「ギター弾きます。僕のほうは、就職してからは全然だけど」
 圭一は立ち上がって、ギターソロを弾く真似をした。
 圭一のエア・ギターに合わせて、麗子もドラムを叩く振りをした。
「おい、なにしてんだ?」
 係長の叱責が飛んできた。
 ふたりは赤くした顔を見合わせて首をすくめ、それぞれの席に戻った。
 圭一は麗子のドラムをバックに強烈なリフを「かます」ところを想像して熱くなった。
――― いつか、麗子と演奏できれば・・・
 自制心は残っていた。
 だが、圭一にとって、麗子はまた、特別な魅力を放つ存在になったのである。

 夜の8時を過ぎようとする頃、圭一の所属する食品流通部一課の外線電話が鳴った。
 一般営業の、顧客向けの外線ではなく、内部連絡用の外線であった。
 定時を2時間も過ぎているにもかかわらず、一課ではいつものように多くの社員が仕事をしていたが、ざっと見渡した圭一は自分が最も年下であることに気がついて電話をとった。
「はい、流通一課、矢澤です」
「山口です、山口麗子です」
「あれ、どうしました?」
「怖いんです」
 麗子の声は小さく、震えていた。圭一は受話器を握りしめたまま、ボタンを操作して音量を上げた。
「シュッショした主人に住所がバレました。今夜、遅くに来るって」
 シュッショ? 出所?
 暴力を振るうという離婚協議中の麗子の夫は、なんらかの犯罪を犯して服役中だったと言うのか。
 刑務所に出入りする人間と圭一は、まるで別の世界に住んでいる。麗子も、いかに美しくても、いや、あまりに美しいからこそ、そういう世界の住人になってしまっているのかもしれない。
 圭一は、体力には自信がある。180センチの長身に、アメリカンフットボールで鍛えた筋肉がまだたっぷりと残っている。
――― この俺が、「出所」という言葉に怯えているのか?
 頭のなかを様々な思いが巡り、圭一は答えあぐねていた。
 ふたたび、麗子の声がした。
「すみません。なんのことかわかりませんね。怖くて、混乱して・・・実は―――」
 麗子は、星田課長から聞いた内容とほぼ同じことを話した。  
 さらに、服役中であった夫は先週に出所してきたが、ついに麗子の住所を突き止めて、今夜、何時間も車を飛ばして、娘のユキを奪いにやって来そうなのだと言う。
「警察に連絡しましたか?」
「まだ、なにもされていないので、警察を呼ぶ理由がありません・・・でも、もし主人が力づくでユキを連れて行ってしまったらと思うと、怖くて怖くて」
「家を出て、どこかのホテルに避難されたらどうです?」
「はい・・でも、ずっとホテル暮らしをするわけにもいかないので、いつかは対決しなければ・・・」
――― 女子供に暴力を振るう、ムショ帰りの腐った男に、俺は怯えているのだろうか? いや、こんな時間に、麗子の家に行くことが面倒なのだ。
 星田課長に念を押されたように、変に勘ぐられたら、離婚を待って子持ちの麗子と結婚するか、この会社での出世を諦めるしか道がなくなってしまう。
 麗子のことが気になって仕方がないのはたしかだが、すべてを受け入れて結婚したいほど、愛しているはずがない。
 しかし、いま、麗子はほんとうに怯えている。わざわざ会社に電話をしてきて、会社の仲間に助けを求めているのである。やはり、放っておくことはできない。
「わかりました。僕が今から行きましょうか?」
「ありがとうございます。いいんですか?」
 星田課長はすでに帰ったか外出中で席にいない。直属の上司は席にいるが、麗子の境遇を知らされていないはずである。
 仕方がない、圭一は覚悟を決めた。
「住所、教えてもらえますか?」

 タクシーを飛ばした圭一が麗子のマンションの前に到着したのは、9時を少しまわった頃であった。
 ドアを少し開けて、チェーンの向こうから圭一であることを確かめると、麗子はドアを開けた。
 黄色っぽい花がらのワンピースを着て、真っ赤なカーディガンを羽織っていた。いつもはコンパクトにまとめていあげているロングヘアを、ざっくりとポニーテールに結んで背中に降ろしていた。これほど長い髪だったのか、圭一は麗子のエレガントな出立ちに惚れ惚れとした。だが、麗子の表情には濃い不安の色が浮かんでいた。
 部屋のインテリアは、木と生成りの白でまとめられたシンプルなものであった。
 壁にはいくつもの写真が貼ってあり、その多くは女の子のものであった。人形や女の子用の玩具がところどころに置かれていて、部屋の主に、インテリアの統一感よりも大切にしているものがあることがわかった。
「ユキちゃんは?」
「もう寝かせました」
 ソファに腰を下ろした圭一に、麗子はお茶を入れて持ってきた。
「ほんとうに、こんな時間に、こんなことに巻き込んですみません」
「いいんですよ」
 麗子は圭一の隣に腰を降ろし、肩を向けて、圭一をまっすぐに見た。
「主人が来た時に、男性がいたっていうことになると、変な疑いを抱かれるかもしれません。そうなると、親権の問題でさらに不利になるので、主人が暴力をふるったり、ユキを無理やり連れて行こうとしない限り、別の部屋に隠れていてくれますか」
「わかりました」
 圭一も麗子の不安げな大きな瞳をまっすぐに見返した。
「ほんとうに、ごめんなさい」
 また、麗子の手が圭一の前腕に置かれる。麗子との距離は、いつもより、さらに短い。
 圭一は思わず目をそらして前を向いた。
 麗子の顔がさらに近づいた気配を感じた圭一は、頬に柔らかで暖かなものを感じた。
 麗子の唇であった。
 圭一は慌てて立ち上がった。
「そんなつもりじゃ・・・」
「ごめんなさい」
 麗子はうつむいて小さな声で言った。赤いカーディガンが胸で膨らんで、見事なカーブを描いている。
「怖くて、怖くて・・・私、どうかしてるんだわ」
「いや、いいんです」
 夫がやってきて、とくに問題を起こすことなく帰っていったとすれば、その後、自分はさっさと帰ることができるだろうか。
 圭一は頬に残る麗子の唇の感触をいとおしみながら考えた。
 麗子がオトコとの距離が短いのはわかっているし、なにかと思わせぶりな態度をとることが習いとなっていることは理解していた。
 とはいえ、それだけで、頬にキスまでするものだろうか・・・

 来客を知らせるチャイムが鳴った。
 インタフォンに駆け寄った麗子は映像を見て、圭一を振り向いた。
 やはり、来たのだ。
 暴力をふるい、麗子からユキを取り上げようとするムショ帰りの男が。
「来て―――」
 慌てた麗子は、ひとつの部屋の前に圭一を導いて、言った。
「ここに隠れてて―――」
 圭一はその部屋に飛び込んだ。
 背後でドアが閉められた。
 一般のマンションにしては分厚いドアが閉められると、部屋は完全な暗闇であった。
 麗子は部屋の電灯をつける余裕もなく、夫が待つ玄関に向かったようであった。
 圭一は仕方なく、スマホを取り出し、懐中電灯のボタンを押した。 
  スマホの弱い光に、ドラムセットが浮かび上がった。麗子はいつも叩いていると言っていた。だが、マンションの一室である。この部屋そのものが、防音室になっているに違いない。だから、音を漏らさないように、ドアの扉も厚く、閉じた時には吸い付くようにぴっちりと閉まったのだ。
 そして、その奥に、なにかがいた。
 ライトを向けて一歩近づいくと、ふたつの小さな光が煌めいた。
―――あっ
 圭一の背筋を悪寒が走った。
 が、その不気味なものは、三角座りをしている小さな女の子とわかった。
「だれ?」
 圭一はさらに近づいた。
「だれ? ユキちゃん?」
 三つ編みにした少女は頷いた。
「ここでなにしてるの?」
「パパが来るから、ここにいるの」
――― ユキは先に寝かせたと麗子は言っていたはずだ。こんなに小さな子供を、真っ暗なこんな小部屋に押し込んで、いったい、どういうつもりだ?
「いつもここで隠れてるの?」
「うん。あと、ユキが悪いことをした時も」
「えっ・・」
 これは虐待の一種ではないのか。こんなに小さな子供を真っ暗な空間に押し込めておく。そんなことをすれば、心の傷となって、きっと、将来、この子は僕のように閉所恐怖症になる。
 圭一はスマホを壁に向けて、ライトのスイッチを探した。ともかく、ライトをつけよう。
 防音材を裏にしこんであるのかふっくらと柔らかそうな白い壁にスマホのライトの光をあてて、スイッチを探した。
「パパは怖いかい?」
「ううん。パパのところへ行きたい」
「なんだって?」
「ママが怖い」
「?」
 圭一は混乱した。
 この子はムショ帰りの暴力を振るう父ではなく、その父から自分を守ってくれているはずの母の麗子が、怖いと言っているのである。
 木製のドアのすぐそばの壁にふたつならんだスイッチがあった。
 圭一はそのスイッチをオンにした。
 なにも起きなかった。ぱちぱちと数度繰り返した。やはりなにも起きない。
「そのスイッチはだめなの。ママが外からやらないと、デンキはつかないよ」
 ユキは三角座りをしたまま、そう言った。
 圭一はそれを聞くと、ドアの取手に手をかけて回そうとした。
 が、びくともしない。
 両手で掴んで全力で動かそうとするが、それでも動かない。
 取っ手の下の鍵を回そうとしたら、それは簡単にくるりと回ったが、フックを噛んでいないのは明らかであった。
「鍵も、ママが、外から開けてくれないと、開かない」
 圭一は自分の置かれた状況を、ようやく、はっきりと理解した。
 もし、この娘、ユキが誰かかから虐待されているとしたら、それは母親である麗子にほかならない。 
 そんな麗子に、力いっぱいドラムを叩いても外に音が漏れない防音室に閉じ込められたのである。
 圭一と小さな女の子に与えられた空間はせいぜい数平米で、ドラムセットの周囲に人が通れる程度の空間があるだけである。
 閉所恐怖症のスイッチが入った。
 圭一はパニックに陥った。
 もう、誰が来ていようが関係なかった。ドアを力任せに叩いた。しかし、重いドアはびくともせず、大きな音もしなかった。
 いままで経験したことのないどす黒い不安が、圭一の中で破裂した。

 どうやら気を失っていたらしい。
 頬に冷たいものが触れる。
 気がつくと、床にうつ伏せに倒れ、床に置いた頬を何かが濡らしていた。
 自分の唾液だろうか、圭一は暗闇の中でかろうじて身を起こした。
 そして、自分の置かれていた状況を、徐々に認識し始めた。
 慌ててドアを探り、取っ手に手をかける。
 びくともしなかった取っ手は、静かに回った。重たいドアを押し開くと一瞬すべてが真っ白になるような光を感じた。。
 座ったまま、圭一は身体を廊下の外に投げ出した。
 助かった、圭一は安堵の息を吐いたのだが、すぐそばに見えたものに、驚愕した。
 男が仰向けに倒れていた。
 目が天井に向かって見開かれている。
 腹のあたりが血で真っ赤に染まっており、血溜まりがべっとりと広がって、圭一のいるところまで続いていた。
 圭一は自分の掌を見て、頬を濡らして圭一を起こしたのは、この男の血であることに気がついた。
 ふと、人の気配に気がついて、圭一は反対方向に振り返った。
 麗子が立っていた。
 長い髪を乱し、ワンピースのスカートを血で染めて、焦点の合わない目をしていた。
 手に血のついた包丁を持っている。
 圭一は麗子の手首をつかみ、その包丁をもぎ取った。
 玄関で騒々しい音がしたと思うと、大きな足音を立てて入って男が雪崩れ込んできた。警官たちであった。
 その警官のひとりに向かって、麗子は飛びかからんばかりに歩み寄り、身体を預けた。
 そして、圭一を指さして言った。
「この人が、主人を刺しました・・・」 
――― 俺が、この男を、刺した?

 圭一が目覚めた時、まっさきに飛び込んできたのは、星田課長の心配そうな顔であった。
 周囲を見回すと、麗子とユキちゃんもいた。
 しばらくして、やっと、自分が病室のベッドに寝かされていることに気がついた。
 麗子の表情に暗さはなく、意識の戻った圭一を見て、底抜けの愛情を表すかのような微笑みを向けた。
「よかった・・・わたし、うっかり、矢澤さんを防音室に閉じ込めてしまって。閉所恐怖症だったんですね。聞いたことがあったような気がするけど、すっかり忘れていました。すみません」
 圭一の意識に立ち込めていた霧はようやく薄れ、すべてがはっきりと見えてきた。
 あの血を流して倒れていた男と警官、血まみれの包丁を持っていた麗子の姿は、夢か幻想だったのだ。
 たしかに、そんなことがあるはずがない。
 そうか、防音室に閉じ込められた後、暴力を振るうという触れ込みだった夫は、ユキを強引に連れて帰ることも、暴力をふるうことなく帰ったのだ。
 圭一はようやくそのことをはっきりと理解して、高まりつつあった不安な気持ちを拭いさった。
 助かった。あれが現実なら、麗子の裏切りにあった自分は、あやうく殺人犯とされるところであった。
 それにしても、あの暗く頑丈に密封された防音室の閉鎖空間の恐怖は、凄まじいものがあった。パニックに陥った自分は、気を失い、こうして病院に運び込まれたのだろう。
 手足を動かしてみるが、どこにも怪我はないようである。
 ようやく圭一は気づいた。
――― 早く星田課長に麗子の部屋へ行った経緯を説明しないと。変なことになってしまう。
 が、ちょうどその時、麗子が星田課長に話していた。
「主人が来るかもしれないので、ときどき、矢澤さんはうちに来てくれていたんです」
――― ときどき、来てくれていた? ちょっと、待て。昨夜がはじめてだぞ。
「夜中に?」と星田課長の怪訝そうな声。
「主人が遅くに来るっていうもんですから・・・」
「しかし、そういうことは、警察の仕事でしょう」
「警察は実際に暴力でも振るわれない限り、動いてはくれませんわ。とにかく、矢澤さんは、不安なときには助けに来てくれました。ユキも、矢澤さんになついてますし」
――― なぜそんな嘘を?
 あまりのことに呆然として、口をはさむタイミングを逸していた圭一が叫んだ。
「待ってください!」
 圭一はベッドから起き上がって叫んだ。
「きのう、はじめて麗子さんの部屋に行ったんです。ユキちゃんだって、きのうはじめて・・・」
 星田課長は圭一に振り向いたが、黙ったままで、その目には深い猜疑の色があった。
 その時、黙って麗子に手を繋がれていたユキが、麗子の手を離れて圭一のベッドに近づき、圭一の太もものあたりに身体を投げ出した。
 そして、信じられないことを言った。
「ねえ、約束どおり、パパになってくれるんでしょ?」
 圭一は目を見開いて、麗子の顔を見た。
 麗子はあいかわらず、あの美しすぎる微笑みを圭一に向けていた。

 圭一は人生最大の閉所恐怖症のパニックに襲われた。
 それは、MRIの装置よりも、満員のLCCの真ん中の座席よりも、クチの洞窟陣地よりも、麗子の家の防音室よりも、いままで経験したどんな閉塞状態よりも抜き差しならない、最悪の閉塞空間に囚われたてしまったことを、圭一が悟ったからであった。

  

Kimono Flea Market ICHIROYA's News Letter No.646

 
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Hello from Yuka from Ichiroya. ogenki desuka? How are you?
We went to see Ichiro's parents today and on our way home, we decided to go to this curry restaurant for supper.
It is a famous chain restaurant called Coco Ichibanya. When we say `Curry' in Japan it means `curry and rice' ---curry sauce is poured over rice. Curry and rice is everyone's favorite and can consider, `Japanese' food.
 
This is a famous chain restaurant and you may find Coco Ichibanya almost everywhere in Japan. People call the restaurant `Cocoichi' as a nickname.
Today we like to tell about the founder of Cocoichi, Tokuji Munetsugu.
How he became to be a founder is such a great and most curious story.
I like to tell about his life from this article:
 
 
Tokuji was born in 1948 in Ishikawa prefecture. Soon after he was born, he was sent to an orphange in Hyogo prefecture. He was adopted by a relative in Nagoya when he was three years old. The foster father was a compulsive gambler and since his wife left, Tokuji lived with this foster father. He was often violent with Tokuji and they lived below the poverty line. They had no electricity, they used candles and often had to move because they could not pay a rent. Every six months, they moved a place to place. Tokuji had no lunch to bring to school, so he escaped from classroom during lunch time and waited until other classmates finished their lunch. They lived in poverty until he became 15 years old. He entered a high school and got a job at tofu shop of his classmate. He worked from early in the morning and could pay the school fee. His foster father died at that time. Even though the father was violent and helpless, Tokuji liked him a lot. The foster father gave Tokuji two apples when he was given a single sum from Public Employment Security Office. Tokuji recalls this as a good memory of his foster father.
Tokuji was asked why he did not join young gangs during the very hard and poor life, and he replied because he was a timid person.
He met a woman and got married- they started a small coffe shop. The curry and rice his wife made became popular and four years after they started the coffe shop, they founded Coco Ichibanya to serve curry and rice. This was the first restaurant-now they have 1000 restaurants all over Japan. His company supports charity activities too.
 
`Customers First' is the most important thing as a merchant', Tokuji says in the interview.
Devoting all his life to customers was what he was doing during his active career as a manager. He thought about nothing but customers all the time. He did not make friends or spend time of his own. `I just wanted to make customers happy, that's all'  he says.
‘I wanted to live up to people's expectations and did not want to waste my time for other things'. He says, as a merchant, nothing but keeping honest effort is the only thing to do.
`You have to be honest to be trusted by customers and workers. Being calculating and selfish, nobody trust you. And being humble also is the thing you cannot forget.'
During the interview, he was asked, `Did you ever think about being rich?' and he said `No, never. I never had a wish to be rich or successful. I just wanted customers to be happy and to be recognized. Nobody recognized me until I was 15 years old. I was in a desperate situation and was very lonely. I wanted people to recognize me, that was my motivation. If people become happy by my existence, by what I do, that meant a lot to me. That meant more than earning money.
As an advice for young people, he says doing the best with the work in front of you is the most important thing. Even the small work, you can try your best, you can wash dishes beautifully, or you can reach office faster to start working early and so on. 
You cannot reach top suddenly. You have to keep working hard-your effort will be recognized. Your continuous effort brings wonderful result.
As a manager, the feeling of `Kansha' is the most important thing. Being grateful to customers, workers and people doing business with, he says this is the thing you never forget.
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See the menu-Coco Ichiban has so much variety of curry sauce.
Curry sauce with vegetables, beef, pork, chiken and seafood. I chose curry sauce with vegetables with chiken cutlet as topping!
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You can choose the sauce and topping. You can choose the amount of rice and also `Karasa'(how spicy the sauce is). They have `hottest' to `mild' with 8 grades, so you can choose the taste you like. See the chart of the left page- you can choose the type of sauce, rice amount, spice level  and topping.
Here is the menu, they have menu in other languages too.
 
We could understand how much they care about customers, their menu contains a lot of information about ingriedients and we saw many families with small children came into the restaurant. Small children can choose not hot curry sauce, and they have salad and other variety of side dish also. We had really nice supper, the curry was so oishii(delicious!)
Cocoichi is a casual and friendly restaurant and the curry they serve taste familiar.
If you find Cocoichi while you travel Japan, try it! Japanese love curry and rice and we hope you like the Japanese style curry too.
 
 
 

短編小説9 『イレギュラーバウンド』

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Kimono Flea Market ICHIROYA's News Letter No.645

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photo by koizumi  

 

Hello from Yuka. Our Golden Week holidays are over. Some lucky people had ten days off but most people had a bit less days separated by one or two work days in between, I wanted to go somewhere warmer (packing is easier) and Ichiro wanted to visit all southern islands of Japan in his life, so this year we decided to visit Iriomote-jima Island. 

https://en.wikipedia.org/wiki/Iriomote-jima

Iriomote-jima is the second biggest island among the Yaeyama islands of Okinawa, but only 2000 people live there while Ishigaki-jima, the biggest island has almost 50000 people. About 90 % of Iriomote-jima is jungle where nobody lives and the roads are only 54 kilo meters long in all the island. There is no air port, no shopping mall or convenience store. There are 17 hotels including small inns in Ishigaki-jima and people come for activities in nature such as diving, treckking and cycling.

We flew from Kansai Air Port, Osaka to Ishigaki-jima island and took a ferry to Iriomote-jima. Mobile phones can work and the hotel we stayed had a really nice service.

 

https://nirakanai-iriomotejima.jp/teaser/en/

 

We arrived at the hotel in the afternoon and stayed two nights, but we had to leave early on the third day to catch the air plane at 10:40 at Ishigaki-jima so , actually we only had one whole day and a half day. It was a short stay (took almost 9 hours from our home to get there) but it was unbeliebvably relaxing trip, as if time has stopped. 

Seeing various kinds of tropical plants, colorful butterflies, hearing the calls of animals and the sound of waves. No noise of traffic, just repeating sound of waves. No smell of cities, no hustle and bustle.

When we woke up, we went to the beach for stretch. They do stretch program in every morning either in the mangrove jungle or on the beach. In front of the hotel is the Tsukigahama (Todomari) beach(the photo on top).

We enjoyed kayaking in the misterious mangrove jungle and trekking through the jungle to see the heavenly beautiful fall. When we reached the fall finally, the guide gave us onigiri (rice ball) made by his wife and sweet pineapples. We will never forget the blissful moment:-) with the scenery of the fall and the sweet taste of pineapple!

 

 

This time we were too early to see sagaribana(barringtonia flowers)- this delicate flower bloom at night and close in the morning drop on the river. The floating flowers on the river with sweet scent - it is like seeing a dream, they say.

It happens in late June to early September at Nakama river in Iriomote-jima. I know it will be difficult to get the good timing but I am dreaming to visit the island again and wishing to see this scenery.

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photo by koizumi 

Spending time only seeing the colors and hearing the sound of nature was great. I enjoyed walking along the beach with dreamy state of mind, Ichiro was way behind me, trying to find crabs in the small holes on the beach, like a five-year-old kid.

He had a great time too, he wrote a short story inspired by this trip to Iriomote-jima. I am so happy for him. 

We both came back with a little mustle ache from trekking but it was a nice and most refreshing trip.

You probably have such relxing place in your country, but if you are looking for a place to really `relax' in nature in Japan, it is a bit far from Tokyo or Kyoto, but we definitely recommend Iriomote-jima.

 

短編小説8 『老紳士のひとり旅』

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 奇妙な雰囲気の人がいるなと気づいたのは、西表島のホテル、ニラカナイのジャングルブックカフェという施設に入った時のことであった。
 そこはホテルのすぐそばまで迫っているジャングルの中に作られたオープンなカフェ空間で、鉄にビニールを張ったロッキングチェアが置かれ、本棚にはブルータスのボタニカル特集号とか、『日本名詩百選』とか、『西表島の生物図鑑』などという本が、透明なビニールカバーをかけて置いてあった。
 飲み物はセルフサービスで、コーヒーマシンが置いてあり、ホテル宿泊者向けの無人、無料の施設である。
 デイゴの花の艶かしさ、恐竜時代を彷彿させる椰子の新芽の不思議さ、名前も知らぬ樹木の葉の大きさのアンバランスに、僕も妻も興奮していた。
 一瞬、誰もいないと思ったのだが、そのメインの場所から一段下がったところにあるロッキングチェアに、ひとりの白髪の老紳士が座っていた。
 藍色一色で染められた地味なアロハを着て僕らに背を向けていたが、その背中には人とのかかわりを拒絶するような孤独感が漂っていた。
 だがコーヒーメーカーをセットしながらその紳士のテーブルをなんとなく見ると、テーブルにはカップがふたつおいてあり、誰かと一緒に、その熱帯雨林の豊穣さを味わっているかのように見えた。
――― きっと、後から、お連れさんが来るのだろう。
 僕と妻は目配せして、ふたりきりでないことをちょっと残念だねと言い、椅子に腰を降ろして、ジャングルの濃密さを存分に楽しんだ。
「子どもが孫を連れて帰ってくるにしても、今の部屋数はいらないよね。一室を温室にリフォームして、サボテンとか熱帯の植物を育て、家の中に不思議空間をつくろうか」
「それもいいわね」 
 六十才という年齢が近づいていくると、手の届く範囲のたいていの楽しみは試してしまって、わくわくするものが減ってくる。やったことがなくてもなんとなく想像がついて、すり減ってきた好奇心はよほどのものでない限り息を吹き返しはしない。
 だが、熱帯雨林のもつエネルギーが、きっと僕らの心のどこかに眠っていた好奇の種に火をつけたのだろう。   
 そういえば、 かつて、多くのおじさんやおばさんたちは、僕らの年齢、心境になった時、盆栽や庭いじりに静かな楽しみを見出していたように思う。昔は、小さな家が細い路地のぎりぎりまで建てこめられた下町の家々でも、鉢を階段状に置く棚が家の前にあって、そこに小さな盆栽が並んでいたものであった。
 子供だった僕にはわからなかったが、たぶん、老境に足をつっこんだもの同士で、この枝ぶりは良いとか、この角度は残念だとか、品評をしあって楽しんでいたのではないかと思う。
 だけど、盆栽はいつの間にか、ダサい趣味の代表のようになり、僕の年代で「盆栽が趣味」という人をほとんど見かけることはない。ところが、ほかの日本のアートや工芸品などと同じく、日本で見向きもされなくなってから、盆栽は「BONSAI」として欧米で人気を博し、ハイブロウな趣味のひとつとしておおいに評価されているという。
 とはいえ、僕や妻が面白いねと思ったのは、松や桜の幹をくねらせる日本の伝統的な盆栽ではなく、ブルータスに紹介されていた、アフリカや中南米の風変わりな植物たちで、彼等を愛でる毎日は、きっと特別なアートと命の香りがするのではないかと想像したのである。
 サンテグジュペリの『星の王子様』に出てくるバオバブの樹や、アンデスの高地にしかないようなサボテンを、温室に改装した部屋で育てる。休みの日には、彼らが息をする温室にいっしょにこもって、モーニングコーヒーを飲む。ジャングルブックカフェに毎日来ることはできないけれど、家にそういう温室を作れば、死ぬまで楽しめるかもしれない。
 細かな趣味の相違はあるかもしれないが、どうやら、ふたりの意見は一致をみたようだ。僕らはそれを懸案事項、これからのふたりの共通の楽しみの候補のひとつとしてとりあえずキープすることにして、ジャングルブックカフェを後にした。
 その時、あの老紳士はまだその場に座っていた。
「あの人、ずっと待たされてるわね」
 妻が小声でそういうので、喧嘩でもしたのかもと、僕も小声で答えた。

 西表島への旅は、ほとんど事前の情報収集なしに、妻に切符の手配を任せてやってきた。
 たまたま、僕は自転車で転倒して右こめかみに大きな傷をつくり、まだ治療中であったので、サンゴ礁の海に囲まれていても、シュノーケリングなどで豊穣の海を楽しむことはできない。
 となると、カヌーでマングローブの中を探検するか、ジャングルの中を歩いて植物をみたり鳥の鳴き声を聴いたりするほかすることはない。
 だが、水中に潜らなくても、熱帯雨林のジャングルに生きる生物たちは、普段目にするものとはまったく異なっており、見るものすべてが新鮮である。
 ヒルギという汽水域に生えるマングローブ林の代表的な木の生態ひとつとっても、驚異に満ちている。木になった種から、落ちる前に芽が出て伸びる。ペンのように十分伸びた芽は切り離されて落ちる時、大地に刺されとばかりに真っ直ぐに落ち、砂地に刺さったり、浅い海底に先を触れさせて水中で上を向く。根っこは、一本の木から何本も水中に伸びて海底に達して、まるで根本はせり上がったメッシュの塊のようになっている。しかも、新しい根っこは上部から伸びてきて、海面に向かって垂れ、あろうことか、そのまま海底について根になるのである。葉っぱの中には黄色いものが一定量混じっているが、それは、枝の最初の一枚に海水から吸収した塩分を集中させて、ほかの葉にいかないようにするためらしく、そうやって人身御供にされた一枚の葉は、塩分まみれになって早々に落とされてしまうのである。
 ホテルから海岸に出て歩けば、見渡すかぎりの三日月状のなだらかな海岸線には、数人の人しかみつけることができない。サンダルの下の砂はあくまで細かくさらさらで、砂浜に落ちているものは、流木か植物の種と少しの貝殻や魚の死骸のみで、人工物はほぼ皆無である。
 これほど手付かずで美しい砂浜がホテルのすぐ前に残されていることに、僕らは心底驚いた。
 ところどころに、穴が開いている。掌でふさいでようやく足りるような大きなものから、誰かが傘の先を突き刺した跡のような小さなものまで様々で、その住人が砂をはじき出してつくった小山があったり、なにかが砂浜を這った跡が続いていたりする。それは蟹の穴らしく、たまたま外出中の小さな真っ白な蟹をみつけて追いかけると、彼らはとんでもない速さで穴に隠れたり、海に飛び込んで砂に潜ったりする。
 普段はふたりで小さな会社を忙しく経営している僕らにとって、それは最高の時間であった。
 が、同時に、老いの迫っている僕らにとって、それは限りの見えた時間の中での貴重な体験であることがわかっていた。
「どっちかが車椅子になれば、この浜に来て、散策することなんて、無理ね」
  妻が言った。
  たしかに。だからこそ、ジャングルブックカフェで出会った老紳士の孤独そうな姿が、ことさらに僕の目に、そして、おそらく妻の目にも焼きついたのであった。 

 その夜、ホテルのレストランでも、ふたたびその老紳士を見かけた。
 バイキング形式のメニューで、僕らが指定された席から少し離れた席に老紳士はいたが、僕らには背を向けており、顔は見えなかった。
 彼は僕と同じようにオリオンビールの瓶をとり、コップに入れてそれを飲んでいるようであった。小瓶の向こうにもうひとつコップが見えた。
「また、あの人・・・ひとりだね。誰か待ってるのかな」
 僕の視線を辿って、妻が紳士を見つめた。
「ほんとね、コップはふたつだわね」
「あれかな―――」僕は想像を膨らませた。
「あの人は相方と死に別れた。あの人は、妻の霊と一緒にこのホテルに来ているつもりになっている」
「まさか」
 妻は僕の想像に呆れた。
「そんなめんどくさいことをする、感傷的な人なんて絶対いないわ」
「そうかな」
 結局その夜も、僕らが先に席を立ったため、老紳士の相方を見ることはなかった。
 僕にはその想像が妻が言うほど非現実的なものとは思えなかった。たぶん、男とは、そういう感傷的なことだってやりかねない人種なのである。

 翌日、まだ暗い早朝からサガリバナの群生地を訪れるツアーにでかけた時、僕らはまた彼の姿を見たのである。
 白み始めたマングローブの林の中をぬって流れる川をカヌーで行く。
 カヌーは一人用のものと二人用のものがあり、選ぶことができるのだが、僕は妻とふたりで二人用のカヌーに乗った。二人用のカヌーは一人用より大きく、一人ならわざわざより軽くて進みやすい一人用を選ばない理由はない。
  大気に舐められたかのような水面は、僕らのカヌーを受け入れて、その波紋で目覚める。まだ光の行き渡らないジャングルの奥から鳥の甲高い鳴き声がする。
 そして、甘い香りがどこからともなく漂ってきた。
  ほら、咲いてます、ガイドさんの指差す方向を見たら、クラゲのような艶かしい花がジャングルの樹の一角にいくつも垂れ下がっていた。カヌーを進めるに従って花は増え、いくつかの花は、水面をゆっくりと流れていった。
  やがて、ここが一番の群生地ですとガイドさんが言う場所に到着した。ちょうど夜が完全にあけて、サガリバナが一夜限りの命の花を落とす時間であった。あちらこちらで花が落ち、見る間に水面が花で覆われた。
  熱帯が見せる景色はとてつもなくエロチックであると思ってはいたが、その幻想的な光景は想像を遥かに超えていた。
  その時、周囲には別のガイドに連れられた何組かのツアー客がいた。
  その中に、僕はまた、たしかにその老紳士の姿を見たのである。
 その日、サガリバナツアーに出かけたツアー客は僕らだけではなく、川は色とりどりのカヌーでも彩られていて、ふと気がつくと、少し離れたところにカヌーに乗った彼がいて、ゆっくりと去っていくその背中が見えたのである。
 そして、やっぱり奇妙なことに、彼の乗ったカヌーは彼の座る位置からして、二人乗り用のようであった。
「あの人だ」
 サガリバナの幻想的な光景に我を忘れて見とれている妻の背中に注意を促した。
「ひとりで二人用のカヌーに乗ってる」
「そうね、あの人のようだけど・・・二人用かしらね」
「間違いないよ」
「そんなカヌーなんじゃないの」
 妻はサガリバナを見るのに忙しく、僕の奇妙な思いを共有してはくれなかった。
 が、やはり、彼は誰か空想の相手とともに旅行をしているのではないか、僕は確信をもってそう思った。

 明日は帰るという夜。到着からずっと雲に覆われていた空がやっと晴れ渡り、楽しみにしていた満天の星空が頭上に広がった、
 僕らは懐中電灯を手に浜に出て、砂浜に寝転がって空を見た。
  あまりに多い星。その星々が大小様々に瞬いていることで、夜空という宇宙空間に無限の奥行きがあることがわかる。星々に圧倒されていると、たしかに自分たちは、光を発することもない小さな小さなひとつ惑星の上にいるに過ぎないのだと納得する。
  背中には何万年もかけて砕かれた島の岩が微細な砂の粒子となって厚く敷き詰められている。
 そして、この長い浜のどこかでは、ウミガメが産卵のために今まさに這い上がってきているかもしれないのである。
 結婚して三十年。ふだんからそこにあるはずなのに、そんな星空を一緒に見上げたのは、その時が二回目のことであった。
 こんな星空をふたりで見ることができるのは、これが最後かもしれない。
 六〇才を間近にした僕らのこの先は、失うものばかりに違いない。
 友は去り、肉親は去り、訪れることのできない場所が増え、できないことが増えて、いつか僕らも去る。つまり、死ぬ。ふたりで飛行機事故にでも会わないかぎり、僕らも必ずどちらかが先に死ぬのである。

 部屋に戻って、星空の見納めにと思いベランダに出た。
 満点の星は変わらず、無限の奥行きをもって輝いている。眼下には照明に照らしだされた青いプールが見えた。
 そして、そのプールサイドのビーチチェアのひとつに、あの老紳士が座っているのが見えた。
 腕時計を見ると、すでに十一時を回っている。
 そんな時間に誰もいないプールサイドに座っているなんて、奇妙だ。しかも、彼の隣のチェアには、白いバスタオルがひいてあって、その椅子は誰かのためにキープされているように見えた。
 僕は妻を呼んで、プールサイドの紳士を指差した。
「やっぱり、あの人は、誰か、死に別れた人と一緒にいるんだよ」
 妻は彼をみつけると、少し驚き、言った。
「そうかもしれないわね」
「人並みはずれてロマンチックなのかな?」
「さあ、どうかしら。認知症で妄想がすすんでいるのかもしれないわね」
「そうかもしれないけど・・・でも、きっといま、あの人の中では、相方といっしょに星空を眺めているんだろうな」
 そして、僕は思った。
 いつか、そんな日が、旅行へ行くにしても、妻の思い出をお供にするしかない日が、確実にやってくるのだと。もし、それが僕に訪れないとしたら、妻にそういう日が訪れるのである。 
 その老紳士の姿は遠く、向きもあってはっきりと顔を確認することはできないが、どこか僕に似ているその老紳士の姿は、僕の脳裏に焼きついた。

 翌朝、僕らは早い時間にホテルを後にして港へ向かった。
 石垣島へ渡る高速船に乗る。高速船の客席は冷房がよく効いていて寒いほどだ。
「リラックスできたね」と妻が言う。
「また来たいね。何回か来ていたら、いつか、イリオモテヤマネコに会えるかな」
 何十年万年も前から、わずか百匹程度でこの島の食物連鎖の頂点に君臨してきたというイリオモテヤマネコの小さいけれど凛々しい姿に、僕も魅せられていた。もちろん、写真でしか見たことはない。その小さな王様は、ヒョウのような模様を持ち、イエネコとは違ってトラやライオンと同じく、いつも爪はむき出しのままなのである。
「旅行で来るぐらいじゃ無理でしょ。地元の人でも、何年かに一回、見れるかどうかなんだから」
「でも、見たいな・・・」
 僕の夢想はイリオモテヤマネコから、あの老紳士の元へと巡った。
「ねえ、あのお爺さん、なんだか、気の毒だったね」
「お爺さん? お爺さんって、誰?」
「ほら、いつもひとりでいて、誰かを待っているみたいな」
「えっ・・・『おばあさん』じゃないの?」
「『おじいさん』だったよ」
「ジャングルカフェで会ったり、レストランやプールサイドにいた人だよね」
「ああ」
「あの人なら、どう見てもおばあさんだったわ。ちょっと、私に似ていたかしらね」
「・・・僕には、僕に似た人のように見えていたんだけど」
 ふたりは驚きの顔を見合わせた。
 
 たいていの不思議な話と同様、僕らのこの体験談にも、明確な説明はできない。僕らがそれぞれ何を見たのか、実際に何があったのかを今から知ることはできない。
 だが、おそらく、僕らは僕らのそれぞれの未来、いつか来るがそれを信じたくない未来の姿を、その人に投影していたに違いない。
 そもそも、その人が存在していたのか、ふたりが同時に見た幻なのか、今となっては確かめる術はない。
 だが、僕らがさほど遠くないいつか、僕らの人生の旅路が、ひとり旅になることは、間違いのないことなのである。

 * * *

 アキちゃんの旦那さんのアツシさんから聞いた西表島のみやげ話は、おおむね以上のような内容であった。
 私たち夫婦は晩ごはんに招いてもらってホストのその話を聞かされて、とても不思議な気分になった。ただ、その幻想的な話は、下手に触ると壊れてしまいそうだったので、その夜は根掘り葉掘り聞くことはためらわれた。後日、電話でアキちゃんと話していて、その時の話が出た。
 アキちゃんは明るい声で言った。
「ああ、あの話ね。あの老紳士って、ただのスケベジジイなのよ」
「あれ? アキちゃんには、女性に見えたんでしょ?」
「嘘よ、嘘。お金持ちのジイさんだね、あれは。アツシは見てないけど、私は見たのよ。足と胸元をがっつり露出して、リゾート地のホテルには不似合いなしっかりと化粧した若い女と合流するところを。合流が遅れたのか、喧嘩して、くっついたり離れたりしてたせいなのか、知らないけど。たまたま、アツシが見た時は、いつもひとりだったのね。カヌーの時だって、おおかた、濡れるのが嫌だとか揺れるのが怖いとか言って、直前に乗るのをやめたんでしょうよ」
「そうなんだ。なら、なんで、旦那さんに、あんな嘘を?」
「だって、あんなもの見せられたら、嫌な感じになるでしょ。できるなら、ロマンチックな夢を見ていたほうがいいに決まってるわ」
「なんだ、アキちゃんらしいわ。結局、旦那さんが、アキちゃんに先立たれるのをいかに怖がっているかっていう話?」
「そうだよね」
 アキちゃんは少し笑ってしみじみと言った。
「でも、まあ、そんな甘ちゃんで感傷的なアツシだから、代わりがいないことは確かね。私もひとりで残されるのはゴメンだわ」
 私は合点した。
「つまり、話の大筋は、あの通りでいいってことなのね」
 電話の向こうでアキちゃんは、今度はたしかに大きな声をたてて笑っていた。
 

photo by BelindaTPE

Kimono Flea Market ICHIROYA's News Letter No.644

 

 

ド・ローラ節子の和と寄り添う暮らし (とんぼの本)

ド・ローラ節子の和と寄り添う暮らし (とんぼの本)

 

 

Hello from Yuka from Ichiroya.

Ogenki desuka? How are you?

Here, we see many tourists from abroad enjoying sightseeing and visiting both cities and local area also. We see more tourists than before. We hope all tourists enjoy the time in Japan!

 

Today, we like to introduce a unique Japanese woman living in France. She is de Rola Setsuko born in 1943.

(La Comtesse Setsuko Klossowska de Rola)

She is a widow of the French painter Balthus (he is a great painter, who was often 

ranked with Picaso), and now she lives in La Grand Chalet in Rossiniere, Switzerland.

Balthus died in 2001 but she still lives there and her unique life style is very interesting.

She is a painter and artist also. Balthus and she started living in the Chalet from 1977. The house was built in 1954 as a hotel. Victor Hugo used to stay in this hotel, and it was a biggest wooden architecture in France with a long history.

She keeps living there, wearing kimono most of the time. She enjoys working in the garden, painting in her atelier(she was appointed as Unesco's Artist For Peace), and also working as an honorary President of Balthus Foundation. She writes essay too.

 

At first, she started wearing kimono because her husband liked kimono but gradually she feels comfortable wearing kimono in her daily life and also travelling. Her mother sent kimono from Japan to her beloved daughter and among those kimono there were beautiful and fashionable kimono from her aunt. Setsuko surely has a sense of beauty and her kimono coordination is very elegant. Most of the time she wears kimono in traditional way but sometimes her coodination is inspired from European taste.

Her creative and rich life in La Grand Chalet is getting a lot of attention.

Here is one of the event in a major department store (Hankyu) which took place recently. In that event,  more than 180 pieces of her things from the  Chalet were showing, not only her paintings but her small hand craft goods used in the Chalet also.

Here is the page telling about this event:

http://www.hankyu-hanshin-dept.co.jp/lsnews/06/a01/00388096/?catCode=601006

This is not the first time- the exhibition showing her things has been held in other places in Japan also. 

People are not just curious about this women living in a huge Chalet- her eye for beauty show in her kimono coordination and somehow looks so impressive in the Europeian scenery. People are amazed by her coordination and the rich life surrounded by her handmade item.

She uses lacquereware given from her grandmother to celebrate new year's day and arrange flowers in Japanese bamboo vase matched with wooden screen from India. She wears obi made of Indonasian Batik with her kimono  in Chalet. She walks in her deep red sha kimono on the Sahara Desert together with her elegant red parasol. Married to a great painter when young but she keeps her identity and enjoys the fusion with the culture from where she was brought up.

She might have had hard time adjusting herself in different culture, but the photos of her wearing kimono in Chalet all show how happy and confident she must be. Her eyes for beauty must have been sharpen in Western upper society and she must have had harmonized the different culture in her.I wish I could show each page of the book on top of this newsletter, because the photos are great.

There are many other books showing her life style available at Amazon Japan. 

 

 

ド・ローラ節子の和ごころのおもてなし (とんぼの本)

ド・ローラ節子の和ごころのおもてなし (とんぼの本)

 

 

ド・ローラ節子のきもの暮らし ヨーロッパ三都物語

ド・ローラ節子のきもの暮らし ヨーロッパ三都物語

 

 

 

見る美 聞く美 思う美―「画家バルテュス」とともに見つけた日本の心

見る美 聞く美 思う美―「画家バルテュス」とともに見つけた日本の心

 

 

 

きものを纏う美

きものを纏う美

 

 

 

めぐり合う花、四季。そして暮らし―『花時間』特別編集

めぐり合う花、四季。そして暮らし―『花時間』特別編集

 

 At  first, I thought she was just a loyal wife devoted her life to her husband and wore kimono just to please him but it seems she is a strong woman with firm identity! Her beaming (and elegant) smile shows she enjoys her life throughly and truly.

Japanese women are not so weak???? (It is often said Japanese women have backbone!)