都市郊外の農家のつくった花束が自転車で届く新しいサービスが素敵だ!(ニューヨーク)
photo by Maria Antonietta
多くのものが生産コストの安い海外の国で作られ輸入される。
その結果その国でその製品をつくっていた産業は衰退する。
衰退を跳ね返そうとさまざまな挑戦が行われる。成功して生き残りの方法をみつける場合もあれば、そうでない場合もある。
最近知った「Petal By Pedal」という新しいビジネスが、そういったひとつのチャレンジでとても素敵だなと思ったので紹介したい。
そもそも、名前が素敵だ。
「Petal」の意味は「花びら」、「Pedal」はそのとおり自転車の「ペダル」である。
このウェッブショップは、「自転車で生花を届ける」新しい業態なのである。
商品はニューヨーク近辺の生花農家が育てた花を、花束にアレンジしたもので、花が10本までの小サイズと18本までの大サイズの2種類のみ。(商品ページ)
届け先はマンハッタンのみである。
そしてそれを自転車でお届けする。
創業者のケイト・ギルマンさんは、その82%を輸入に頼っているアメリカの生花ビジネスに変革をもたらしたいとこのビジネスを始めた。輸入するためには飛行機や船で長距離を運ばなければならず、また輸入につきものの殺虫や燻蒸のプロセスが必要となる。それは環境に良いとは言えない*1。
ニューヨークの近辺の農家から仕入れて、それをマンハッタンのお客様に自転車でお届けすれば、もっとも環境に優しく花の美しさを楽しむことができるのではないか。中間のディーラーを省けば、値段も安くできるはずだ。
彼女のこの試みはうまく行っているようだ。
「Vogue」や「ELLE」などの有名メディアにも取り上げられている。僕が知ったのはこのネットの記事だ。もともと法律を学び弱者を救いたいと思っていたケイトさんが、なぜ突然にこのビジネスを始めたのかについても書かれており、とても興味深かった。(人々を助けたいという思いは、このビジネスの根幹にも流れている。しかし、クリエイティビティを発揮したいという強い思いが、このビジネスを興した理由のようだ)
本来、その土地その土地で、季節にあった花々が咲く。
僕もうちのスタッフたちも、いつの間にか自然と切り離されてしまって、恥ずかしながら野に咲く花の名前をほとんど知らない。
そして、何気なくお花屋さんで買う花は、遠くマレーシアやコロンビアで作られたものなのかもしれない。
すべての要素を細かく計算してみなければ、どの程度環境への負荷が減らされているのかはわからない。
でも、「近辺の農家の方がつくられた花束が自転車で届く」ということそのものが、なんだかワクワクする体験ではないか。
花の美しさを、さらにイキイキとしたものにしてくれるような気がする。
きっと、どんな産業にも、まだまだ戦い方はある。
*1:日本の場合切り花の輸入は20%程度のようです。輸入品が本当に環境に悪いのかどうかについてはさまざまな意見があると思いますので、詳しくは述べません。日本の場合は輸出(輸入の10分の1程度)もしているので、高付加価値のつく花をつくって国内消費とともに輸出も伸ばすという方向がベストかもしれません