70年寄り添った夫婦が15時間半の間に相次いで亡くなった~「結婚ってどんなもの?」
夫婦の関係って、ほんとうにはどんなものか、外の人間にはわかりにくい。
オシドリ夫婦と思えたふたりが突然別れてしまったり、喧嘩ばかりしながら長く添い遂げるカップルもある。
まだ、今よりも若かったころ、会社の同僚や先輩たちと「結婚」の話になったときは、ネガティブな方向に向かうことが多く、「結婚ってのは、そんなものか」と思ったこともある。
もちろん、自分の結婚生活について、実名のブログで何を書いても、意味がないから書かない(恥ずかしい過ぎる)けど、事実としては、今年の春でちょうど30年間夫婦でいたことになる。
30年というと長いような気もするが、今朝読んだニュースのカップルは、結婚して70年。
そして、奥さん(ヘレンさん)が亡くなったあと、15時間半後に、ご主人さん(ケネスさん)も、息を引き取っている。
ふたりが結婚したのは、ケネスさんが19才、ヘレンさんが18才の時。
ポケットに5ドルずつ持ち、親に嘘をついてケンタッキーの裁判所に行き、婚姻届を提出した。その時、ほんとうは、ケネスさんは結婚できる年齢に2日足りなかったそうだが、待ちきれなかったという(それでも婚姻届は受理されたが、さすがに両親には言えず、それぞれの数週間はそれぞれの家に戻って過ごしたようである)。
おそらく、現代社会で人間が結婚して、夫婦でいれる可能なほぼ最長に近い時間、70年を一緒に過ごし、かつ、わずか15時間半の時間差で亡くなった。
ふたりは本当に仲が良かったようだ。
たとえば、わずか1日、フェリーの二段ベッドで寝ないといけないとき、ふたりは下段の狭いベッドに一緒に寝たという。
子供は8人おり、ケネスさんは複数の仕事をこなし、ヘレンさんとともに、教会の日曜学校の先生をするなど、地域のひとたちに様々な面で貢献する生活を送っていたらしい。
ヘレンさんは「ホールマークビジネスをやっている」とジョークのネタにされるほど、地域のひとたちのことを思いやり、誕生日や様々な局面でカードを贈ることを欠かさなかったという。
この話は、いま感動の美談として、アメリカで大きな話題になっているが、ふたりの温度計は70年間変わらず高く、嵐に会うこともなく、順風だけに恵まれたのだろうか。
わからない。
だが、僕らが知り得る事実は、70年間の子供と地域に恵まれた結婚生活ののち、ヘレンさんが亡くなった後、15時間半後にケネスさんも後を追ってなくなったということだ。
嫁の両親は、50年ほどの結婚生活だった。
ちょうどお母さんがヘレンさんのような、情の溢れる人付き合いをする方で、少し子供のような意固地なところもあるお父さんを、最大限にたてておられた。
お母さんを最後は家で看取られたのだが、献身的に介護をされていた。
嫁が手伝いに行って、風呂に入れようとするのだが、危ないからダメだといって、自分で入れて嫁には風呂に入れさせなかった。
長い介護の末亡くなられて、1周忌の集まりをすませるまで、気丈だったお父さんだったが、1周忌を終えてほっとしたらしく、その後、急速に認知症が進んだ。
僕の両親の結婚生活も50年を超えた。
うちの両親は頻繁に喧嘩をしており、僕が成人してからは、何度か、母親から、「もう、離婚するから!」と言われていた。
どんどん頑固になる父と、身体が弱り、認知症もすすむ母。
ついに、先日、母がひとりでは立てなくなった。
強く抱くと痛がる母を、父はそっと抱きかかえ、手をひいてトイレに連れて行く。母が「痛い!」と叫び、父がなだめて、わずか3mの距離を、何百の言葉とともに半歩半歩、にじり歩かせる。
頻尿の母を1回トイレに連れて行くのに、30分。
それでも、自分で、自分の家でみると言い張った父。
むかし、たしかに、「結婚って、そんなものか?」と思ったこともある。
だけど、そう、たしかに、「結婚って、こんなもの」でもあるのだ。
*ケネスさんとヘレンさんのニュースはこちらを参考にしました
Couple's love story spans decades
photo by New Old Stock