一番好きな作家は北杜夫と告白してみる
一番、好きな作家って誰って聞かれると、「北杜夫」って答えにくい雰囲気がある、と思っていた。
しかし、幾千の作家、本を読んだけど、何度も読み返して、頭に染み込んでいる作品は何かと言えば、間違いなく、『どくとるマンボウ航海記』か『どくとるマンボウ青春記』なのだ。

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- 出版社/メーカー: 新潮社
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中学から高校にかけて、受験勉強に明け暮れているとき、暇があれば取り出して読み返していたのが、「どくとるマンボウ」シリーズだった。
なにかの目的のためにではなく、ただ単純に、何度読んでも面白く、ついついやめれなくなってしまうのだ。
ちょうど、思春期でなにかと悩みの多かった時期である。
「どくとるマンボウ青春記」を読んでいると、優しいアニキから、まあ肩の力を抜けよ、って語りかけられているような気がした。
北杜夫は『夜と霧の隅で』芥川賞を受けているけど、やはり一般的には、ユーモア作家と認識されている。
だから、「一番影響を受けた作家は?」と聞かれて、「北杜夫」と答えると、なんだか軽いやつと思われそうな気がするのだ。
だから、一番好きな作家は、とか、一番好きな小説は、と聞かれたら(誰も聞いてくれないけど!)、ガルシア・マルケス、『百年の孤独』と答えてしまう。
でも、それも嘘ではなく、たしかに、僕が生涯で一番ぶっ飛んだ小説といえば、やはりこれなのである。

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さて、なぜ、今日、こんなことを書きだしたのかと言うと、今朝の日経新聞のコラム「本の小径」に、『「源流」としての北杜夫 影響を素直に語る作家たち』という記事があったからだ。
記事によると、40代、50代の現役作家たちが、深く影響を受けた作家として、北杜夫をとらえ直している、というのだ。(磯崎憲一郎や川上弘美)
そのことを「素直に告白し始めた」という。
へえ!?
僕だけじゃなかったんだ。
本職の小説家や作家の方々なら、なおさら、北杜夫に影響を受けたことを、公言するということは、「告白する」という意味合いなしにできないことだったんだ。
そうでしょう?!
そうでしょうとも!
北杜夫、大好きですよね!
大好きでもいいんですよね!
ところで、そのコラムによれば、磯崎憲一郎氏は、純文学の代表作『楡家の人びと』が、マルケスの『百年の孤独』に通じる小説世界構築の凄さをもっている、と評価されている。
もちろん『楡家の人びと』も読んだ。
しかし、高校時代の僕の心には響かず、その頃に一読したのみである。
磯崎憲一郎氏の評価に首肯できるのかどうか、読みなおしてみなきゃ。
『楡家の人びと』は1963年に連載開始、『百年の孤独』は1967年に母国で出版されていて、ちょうど同時代に書かれた作品である、という意味でも興味深い。

- 作者: 北杜夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
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『どくとるマンボウ航海記』みたいな本が書きたいなあ!