無駄な会議も楽々こなし、取締役を目指そう!
大きな会社で働くってことは、無駄な仕事にどれだけ耐えることができるか、っていう我慢比べみたいなところがある。
企画課長の頃、とにかく忙しかった。
プレーイングマネージャーだったので、自分でも企画を仕掛けながら、マネージメントもする。
しかし、とにかく、前向きの仕事をする時間がなかなかとれない。
まず、会議だ。
手帳に会議の予定がどんどん埋まっていく。
会議の合間に、仕事をしているようなものだ。
うっかりものの僕は、よく会議をダブルブッキングしてしまい、上司から大目玉を食らった。
会議のどこが嫌かっていうと、お仕事ごっこに、延々と付き合わされることだ。
売上が悪いと、組織というのは、上から下まで、そのままではすまされない。
こんな理由です、でも、こんなことしています、あんなこと計画しています、と、どの段階の人間も上司に言わなくてはならない。
チームリーダーなら係長に、課長なら部長に、社長なら株主に、という具合だ。
しかし、そもそも、売上が悪いと、すでに、みんな、何とかならないかとあがいている。
「対策を出せ」と言われて、簡単に出せるような対策があるのなら、すでにやっている。
だから、やむなく、作文する。
で、上からの圧力がいつになく強いと、自分の首を締めること---先を考えない値引きなどで、逃れようとする。
そして、「実現可能性の薄い作文」「効果が極小な対策」「安易だけど、自分の首を締める対策」の説明会議、言い訳会議に延々とつき合わされることになる。
もうひとつは、目標設定を巡る無駄だ。
昨今の実力主義・成果主義の徹底のために、売上目標の達成度が給与・昇進がかなりダイレクトに反映されるようになった。
なったのかどうか、ホントのところはわからないが、少なくとも、みんなそうだろうと思うようになった。
なので、売上目標の設定に関わるネゴシエーションの巧拙が、人事評価を大きく左右するようになった。
すくなくとも、みんなそう思うようになった。
たしかに、平等な売上目標設定というのは、不可能ではないかと思えるほど難しい。
商品によってマーケットの傾向があり、また、それぞれの部門によって、個別の事情もある。
だから、みんな、あれやこれや、事細かに事情をあげてくる。
それを全部ていねいに聴いて、みんなが納得するように、平等に目標設定をしなくてはならない。
そして、期首にそれでなんとか決着してもらっても、期中に何か小さな修正が出たら(上に書いた「対策」というやつだ)、また、それに伴って、売上目標の修正が必要となる。
たとえば、ある売場を、A部門の販売予定から、B部門に振り替えるというようなことだ。
A部門からは売上目標を削らなければならないし、B部門には売上目標を新たにもってもらわなければならない。
もちろん、A部門は大きく主張し、B部門は小さく主張するので、両方を説得しなければならない。
揉めに揉めたら、両部門長のさらに上司に持ち上がることになるが、たいての上司はそういった揉め事は嫌いなので、どうしても、当事者同士、現場担当者同士での納得をとることが求められる。
そのためにかける時間と労力と言ったら!
こんなことばかりやっていると不思議なことが起きる。
たとえば、自社に、Aという店とBという店があって、売上を競いあっているとする。
A店のそばに、競合会社のC店ができたとする。
A店とB店で協力して、C店を叩き潰す作戦を考えるんだろうな、と普通には考える。
しかし、たいていの場合、B店はA店の苦境を喜ぶのである。
なぜなら、A店ががんばれば、A店の評価は、競合のないB店を大幅にうわまることになり、B店は自分の評価が下がる、と考えてしまう。
たいていの人は、会社全体のことより、自分の評価のほうが大事だからだ。
こんなことは、組織で比較的低い地位でしか起きないと思っていたら、そうでもない。
そして、自分の経験だけでもないことは、ほかでも見聞きして、組織というのは、つくづく難しいものだな、と思った。
ともかく、自分の能力、時間のすべてを、たとえば、C店を叩き潰すために使いたくても、おおむね、物理的な時間は、組織の成員のそれぞれのご都合のために食い荒らされてしまい、疲れ果ててしまうのである。
それでも、大きな会社で伸びていく人たちは凄い。
なぜなら、そういったことに自分の大部分の時間をとられてしまうにもかかわらず、それ以外の時間で、組織全体を前にすすめるための施策を考え出し、緻密に論議をすすめて、上も下も説得してしまうのだ。
やっぱり、人間、我慢ですな!
無駄な会議とか多すぎて馬鹿らしい、って嘆いているあなた。
それは大きな会社では、当たり前のことですよ。
そこはぐっと我慢して、会社を支えて、偉くなってくださいね。
ゆめゆめ辞表を叩きつけて飛び出すようなことはなさらないように。
僕には無理でしたけど・・・とほほ。
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