何歳になっても、辛くて、カッコ悪い
辛くて、カッコ悪い。
それなりの歳のオヤジになれば、カッコ良くて、自信に満ちてゆったりしていれるものかと思っていた。
僕は何歳になっても、辛くて、カッコ悪い。
本を出せば、自信たっぷりになり、カッコよくいれるのかと思った。
自分の恥ずかしい失敗を晒した内容で、そもそもそれがカッコ悪く、諸先輩や後輩の顔が浮かんで辛くて仕方がなかった。
出したら出したで、売れないと出版社さんにも迷惑をかけるし、次もなくなる。
なにがなんでも売れてくれないと、カッコ悪くて、辛い。
友達みんなに宣伝した。
カッコ悪くて辛かったけど、僕の本を読んでください、誰か寄贈する先を教えてくださいと頼んだ。
みんなの支援のおかげで重版が決まった。(ありがとう!)
お礼にパーティがしたくなった。
みんなそれなりの歳でそれぞれの重荷を背負って歩いている。
今のみんなに足りないのは、歌うこと、祈ること、そして、踊ることだ!と高揚して、ディスコパーティをすると宣言した。
ダンスの練習をはじめた。
とても娘や嫁に見せることはできない。
自分で見ていても鏡のなかの不器用な僕はカッコ悪い。
すぐに息があがって辛い。
パーティに、みんな本当に来てくれるのだろうか?
白けずに、楽しんでくれるのだろうか?
挨拶で滑らないだろうか?
パーティがうまくいかなかったら、せっかく来ていただいた人に申し訳ない。
カッコ悪くて、辛い。
おかげで多くの人が、わざわざ時間を割いて、梅田まで来てくださるとおっしゃってくれた。
長女に教えられて、ドン・キホーテに行き、金髪のアフロヘアーの鬘を買った。
ライトが仕込まれていて、光るやつだ。
こっそりと鏡の前でつけてみて、ピカピカやってみる。
これは辛くはないが、カッコ悪いこと極まりない。
本業の着物の商売のほうも、数人程度、新しい仲間を迎えて、作業する時間を増やした。
新しいサイト・フロントの発注もした。そのサイトのために、ある高額なソフトを導入する予定だ。
新卒の新入社員もはじめてひとり迎え入れた。
なにがなんでも売上を伸ばさなければならない。
ちょっと売上の悪い日が続くと、とたんに不安になる。
売上は計算どおりに伸びるだろうか?
新しいサイトは予定しているように稼働するだろうか?
一喜一憂して不安になっている様はまことにカッコ悪い。
そして、もちろん、うまく行かなければ、カッコ悪くて、辛い。
まったくもって、辛い。
会社というのは、ある程度成長すれば、どこかの時点で穏やかな高原のような場所に達し、ゆっくりと安心できるものかと想像していた。
自分と家族だけならそうなったのかもしれない。
だけど、社員のがんばる姿や、その家族のことを考えると、そんな気持ちは吹き飛んでしまう。
カッコ悪かろうが、辛かろうが、売上は伸ばさなければならない。
書くことも、本も、パーティも、そんなに重荷なら、やめたらいいのに、と妻が言う。
いや、違うんだと。
僕は思いっきりカッコをつけて言ってみた。
辛くて、カッコ悪いのが、まさに僕の人生なんだ、と。