またまた、就活生に贈る言葉!
2015年春に卒業を予定する大学3年生らの就職活動が、1日に解禁された。
ご苦労様だと思う。
だけど、しょせん、就職はギャンブルである。
就職先を仲間と比べて一喜一憂したり、不採用が続いたからといって、落ち込まないで欲しい。
そもそも、人間というものは、せいぜい100円か数千円の差しかない些細なものの選択に最大の注意力を払うくせに、人生の最大級の選択には、「フィーリング」でのぞむものだ。
何千万円という中古住宅を買う時、その家がちゃんと建てられたものかどうか、地盤は大丈夫か、徹底的に調べることはしない。
結婚するときだって、相手はフィーリングで選んだりする。
そして、就職先だって、おんなじだ。
上場企業を狙える学生たちは、上場企業であるということに安心して、決算書を見もしない。フィーリングで選ぶ。
うちの娘達のように上場企業を諦めて、中小企業を探せば、財務状況を知る手立てはないから、100%フィーリングで選ぶ。
学生のころは、誰もが知っている上場企業に入りたいと思う。
50才を過ぎて同窓会に行くと、有名企業の名刺は渡しながら、「窓際だよ」と寂しそうに言うやつも多い。
上場企業に入っても、そこでも苛烈な競争で、ほとんどの50代は出世のラインを外れている。
まだ有名でない、将来性のある中小企業を探しだして就職するのが、一番実りが多そうだが、それも難しい。
最近では、mixiやグリーのリストラが話題になっているように、創業期の楽天を見つけ出すのは難しい。
ネットショップの黎明期、仮想商店街は複数あり、どの企業が将来化けるか、当時は、僕と同じく、誰も確信はなかったはずだ。
そういえば、僕が就職のとき(約30年前)、読んだ本に、特別な技術力を持ち、将来有望な小さな会社としていくつか挙げられており、なぜか今でもその社名を覚えている。大阪チタニウムとDiscoが紹介されていたのだが、その本の著者は慧眼だったと言えるだろう。
しかし、たまたま覚えている2社がその会社で、ほかに勧められた会社のなかには、今では沈んでしまったものもあったかもしれない。
思えば、僕の就職活動も散々だった。
学生時代ゲームが好きだった僕は、任天堂の人事部に電話をして、農学部だけど採用してくれないか聞いてみた。まだ、ファミコンは発売されておらず、ゲーム喫茶で見るゲーム機はタイトーより劣っているように見えたし、そもそも、クラブで毎日通っている伏見のリンクの近くに会社があり、また、このあたりに通うのかと思うと、 どうも熱が入らなかった。
もちろん、そんな気持ちの僕を、先方は門前払いした。
第一希望だった海洋開発の会社は、会社訪問解禁初日に東京まで出向いた。
京都からの交通費もいただき、意気込んで行ったら、人事の担当者は、開口一番、「養殖関係は、要らないんだけどな」と言った。
おかげで、初日の大事な1日を、棒に振ってしまった。
どちらの会社も、「いえ、営業がしたいんです。なんでも勉強して、やってみたいんです」と熱心に言えば、状況は変わっていたかもしれない。
でも、馬鹿な僕は、さっさと諦めてしまった。
まあしかし、それもギャンブルだった。
任天堂はその後凄いことになったが、海洋開発の会社は、その後、倒産してしまったからだ。
就活に望む学生さんは、これから辛い洗礼を浴びることになると思う。
上場企業の場合は、決算書をよく見て、とくに同業他社と比較してみることが必要だと思う。
また、そういったどこかに書かれた情報だけでなく、とくに、自分の生活が、これからどんな風に変わっていきそうか、そのために今後どんな産業が必要とされるのかということを、肌感覚で感じることも必要だと思う。
そして、ちょっとでも良い環境を与えてくれそうな企業に就職できるよう、あなたのフィーリングに合う会社を、全力を尽くして欲しい。
就職活動に冷めず、諦めず、熱意をもってのぞむ、その姿勢は、会社に入ってからも必要とされる、生きる姿勢だ。
だけど、頭のどこかに置いておいて欲しい。
どれほど慎重に会社を選んでみても、それは所詮、ギャンブルだ。
会社側だって、将来会社に貢献する人材を見抜いて選ぶことなどできない。人事の連中だって、みんなギャンブルで採否を決めているのだ。
ギャンブルxギャンブルで決まる就活の結果に、大きく自分の気持ちを左右されることほど馬鹿げたことはない。
でも、人生は、じつは、ギャンブルじゃない。
あなたは、誰のものでもない、あなたの道を行くのだ。
入った会社によって、見える景色は違う。
それは、陽の光の暖かな牧草地かもしれないし、豊かな森の中かもしれないし、あるときは、雪と氷に閉ざされた渓谷かもしれない。
だが、それはあなたの目にはいる、景色にしか過ぎない。
それが心地よい時もあれば、凍えて死にそうに辛いときもあるだろう。
たしかに、何が見えるかは、運が決める。
しかし、どこへ行くのか、どの道を行くのか、
それは、あなたが決めるのだ。
大丈夫。
もし、いまあなたにその道が見えていなくても、いつかはその道がはっきりと見えるようになる。
あなたの道は、就活の正否に左右されることはない。
大丈夫。
あなたは、誰のものでもない、あなたの道を行くのだ。
photo by h.koppdelaney