短編小説6 『ムンクの帰還』

1. 涼子 ムンクが隣のミヨちゃんの二の腕を噛んだのは、桜の花びらが降る頃だった。 ムンクは盲導犬になることでお馴染みの雌のラブラドールレトリバーで、なぜあの不気味な絵の画家の名前をつけられることになったかというと、娘の藍子が、単に語感がいいからと提案して、家族がそれを受け入れたからであった。その名前に…