短編小説11 『過去から来た少年』

photo by Alfredo Mendez 「豊中市浜5丁目378番地へ行ってください」 後部座席の少年は、たしかにそう言った。 半ズボンをはいた少年は小学校高学年に見える。前髪を一直線に切りそろえて、どこか昭和の香りがした。 奇妙だった。 少年を拾ったのは、高速の下を走る幹線道路で、夜の9時半という暗闇の中にひとり、手…