短編小説1 『ミリオン』~夢を紡ぐ人、見守る人、助ける人のそれぞれの物語~

コウタは悩んでいた。 書籍編集者として働き出して十年を過ぎていたが、夢だったミリオンセラーはいまだ出せていない。編集者としてこの世に出した本は、すでに百冊を超えた。 重版がかかったものは三割に過ぎず、『犬の生活』という犬をテーマにしたエッセイ集が唯一、五万部を超えた程度だ。 一年後輩のユウスケに、重版…