ICHIROYAのブログ

元気が出る海外の最新トピックや、ウジウジ考えたこととか、たまに着物のこと! 

★★★当ブログはじつはリサイクル/アンティーク着物屋のブログです。記事をお楽しみいただけましたら最高。いつか、着物が必要になった時に思い出していただければ、なお喜びます!お店はこちらになります。★★★


(お礼を言わせてください)妄想です****

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お話しても良いでしょうか?

 

私:こんにちは、今日はお呼びだてしてすみません。

  この着物を染められたあなたは、この頃の大変有名な染織家でいらっしゃったにちがいありません。アンティークの着物には落款や名が入っていないもので、わたしたちには誰の作品かわからないのですが。

 

職人:まあ、落款なんてもとは書画についているものだったし、わしたちの時代は個人の名をひけらかすことはなかったしな。わしもそういうタイプではないしな。

 

私:今日お呼びだてした理由は この素晴らしいアンティーク着物をつくってくださったことに 是非お礼をいいたくて。

とにかく「素晴らしい」なんて言葉では言い表せないくらいなんです。

 

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職人:素晴らしいに決まってるだろうが!一体どれだけ時間と労力をかけたと思ってるんだ!

 

私:実はこの着物には「花の饗宴」と名付けたんです、そして・・・・・

 

職人:そして なんだ? はっきり言え。

 

私:この着物の復刻版を作ったんです・・・・

 

職人:何をいってるかわからん。この着物は下絵が描かれて、丁寧に染めて、刺繍もくわえた、みんなの手仕事の集大成だ。お客様のご注文でな。

 

私:もちろんそうですよね。しかもきっと頼んだのはとてもお金持ちの・・・

 

職人:そんなこと言えるか!日本男児たるもの、ぺらぺらしゃべるもんじゃない。俺達みたいな職人は特にそうだ!

 

私:あ、はい、そうです、職人さんたちの技は本当にすごいです。着物がまるでキャンバスのようで、広げてみると一服の絵画のような工芸品なんです。時たま思うんですが、着たときに帯の下になって見えないようなところにまですごい柄が描いてあって、

着物って着るものだっていうことを考えてないような感じがするなって・・・

 

職人:それ、批判してるのか?

 

私:とんでもありません、ただただ素晴らしいってことを言いたかっただけで・・

 

職人:わしたちは仕事に誇りをもって、一切手を抜かずにやってきたんだ。時間がかかろうと手間がかかろうと、細部まで心血を注いできたんだ。あんたらの時代は「効率的」とやらが一番だろうけど。

 

私:結構話されるんですね。。。

 

職人:なんか妙なことになってきたな。そもそもあんたがなにか言いかけていたのだろうが。

 

私:はい、手短に言いますと、私達はあなたの着物のコピーを作ったんです。

 

職人:なんだと?できるはずがないだろうが。一人前の職人になるまで一体何年かかったとおもってるんだ!

 

私:説明させてください。イチロウが、あ、主人で、イチロウヤの代表なんですが、この着物を見たときズキュンとやられまして、オークションで競り勝って持って帰ってきたんです。みんなで見たとき、感嘆しました。「美しい」なんて言葉じゃ言えないくらい驚きました。

 

職人:それでそのイチロウとやらが、高い値段をつけたってわけだ。

 

私:いえ、売らなかったんです。

 

職人:なんだかややこしいな。だからなんなんだ。

 

私:もとのすべての柄をスキャンして、紙に再現したんです。それを布に移したんです。「昇華転写プリント」っていうやりかたです。これが私達が使っている機械なんです:

https://www.kimonotte.com/jp/page/common/pirntpc.html

それが言うほど簡単ではなくて、色がまず難しい、一つの色がうまく行ったと思ったら別の色が違って見えるーー何度も何度も元の色に近づけるためテストを繰り返します。

パソコンの画面上ではうまく行ったと思っても、プリントする布地によってまた変わってくる・・・絵羽模様となると柄が合うかどうか、作る着物のサイズによっても微妙に違ってくる・・・担当スタッフのYukoもAishaも、Yumiも泣きそうになりながら地道な作業をつづけたんです。

 

職人:そんなことは知ったこっちゃない。要は、あんたらは、それを自分たちの作ったものとして売ったんだ。そういうのを「泥棒」だって言うのをしらないのか?

 

私:日本では、著作物の権利は著作者の死後70年で消滅します、弁護士にも相談しました。

 

職人:とにかくあんたらは盗んだんだ。死んでるからって裁判は起こせなくても 化けて出てやることはできるからな!

 

私:もちろん、あなた方がいなければ、この復刻版もなかったんです。

何が起きているか説明させてください。

 

昨年、そして今年もアンティークの着物の復刻版を私達の店で皆さんに見せたんです。

そしたら、昨年も今年もやっぱりこの「花の饗宴」が一番の人気だったんです。

もとの色だけでなく、色違いも注文してくださる方もいらっしゃって・・・

 

職人:え?なんだって?色違いまで作ったのか?

 

私:実は帯も、帯揚げ、半衿も。あ、ストールも作りました。

 

職人:あれは着物なんだ、なんだってそんな色々なものまで。

 

私:だってあの柄は、特別でみなさんに愛されているんです。あなたのいらっしゃった戦前の時代に作られたものなんですが、今でも新鮮で 魅力的なんです。

皆さんがあの柄を好きになってくださって、喜んで身につけてくださってるんです。

 

 

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私:昨日、事務所でもう一度この着物をよくよく眺めたんです。復刻版じゃなくて、もとの着物です。そしたら、この色鮮やかな花たちは本当に生き生きしていて、生命力に溢れてるんです。スウィングしているかのようにさえ見えたんです。だからこの特別な着物はみんなに愛されているんだってわかったんです。

 

職人:なんだかよくわからんが、ようするに、この着物の柄が沢山の人に愛されてよろこばれてるってことなんだな?そして、もともとは古くなって寿命があるもんだが、その後もたくさんの人が喜んで身に着けてるってことなんだな?

 

私:そうなんです。あなたのお名前も知りませんが、これが百年近く前のアンティークの柄の復刻だっていう頃は皆さんがご存知なんです。あなたのお仕事が、今も皆さんをハッピーにしているんです。

 

職人:なんだかよくわからんが、もう行くとするか。あんたの感謝の気持とやらは しかたないからうけとっておくか。

 

私:ありがとうございます。ずっとこのことを伝えたかったんです。そしてできればあの時代の他の職人さんたちにも あなたからお礼を伝えてもらえたらなあと。

 

職人:そりゃちょっと図々しいんじゃないか?

あ、あんたたち店を閉めるって?ま、そういうこともあるだろうさ。ま、元気でやりな。

 

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