起業の成功は100%運?
ふたつの企業を上場させた名うての経営者がおっしゃる。
「いちかばちかのサービスや商品をつくり、一気に成長させて上場する。そうやって、成功させている起業家の成功の理由は、100%運です」
「いや、そんなことはないでしょう」その人と少し一緒に仕事をしたことのある僕はその断言に驚いて抵抗する。
「◯◯さんだって、そちら側の人じゃないですか。僕は◯◯さんの成功が100%運だなんて思いません」
その方が謙遜でおっしゃっているのか、言葉通りに100%信じておられるのかはわからない。
が、たしかに、その方がおっしゃるように、運に頼らず、小さく始めてリスクを最小にして成功させる方法はある。
たとえば、僕の知人にこんな人がいる。
彼はある有名企業の営業職だった。
30代で会社を辞めた。
営業時代にさまざまな商売をしている人や企業のオーナーと懇意になった。
彼は中古のブランドバッグやブランドウォッチの商売を始めた。
それが商売になりそうなことは、お客さんから学んだ。
とはいえ、ブランドバッグや時計の真贋の見分けは、かなり難しい専門的なスキルで、本などを読めば学べるものではない。
彼は真贋のはっきりしないバッグを持参して、300軒もの質屋さんをまわり、どうやって真贋を見分けるのか、そのスキルを教えてくれるように頼んだ。
もちろん、入る質屋さん質屋さんにケンモホロロに断れられた。
ひどい言葉も投げつけられた。
しかし、数人の質屋さんが、彼の人柄に感化されて、手とり足取り教えてくれたのである。
その人達から彼はブランドバッグの中古の商売に必要なスキルを学び、急速に商売を大きくした。
もちろん、店などは持たず、ネットや口コミでそれを売ったのである。
そして、ブランドバッグや時計だけでなく、まだあまり人が注目していないいくつかの分野のアイテムの知識も身につけて(それもかつてのお客様から情報を得た)扱い範囲を広げ、いまでは、僕の商売の10倍以上の規模になっている。*1
彼の成功例は、リスクを極小にして商売を始めて成功した典型的なものだと思う。
店を持つというような大きな資金を先に投じることもしていないし、ひとつひとつの小さな取引を重ねていくことで、より大きな取引へとステップアップしている。
そして、その過程は、机上では不可能と思えることを楽観的な行動が可能にしていった最高の実例だと思う。
中古のブランドバッグやブランドウォッチの商売なんて、利幅が薄すぎる。
あるいは、そのためのスキルを素人が身につけるのは不可能だ。誰も教えてくれない。
僕もそう思っていたのである。
しかし、彼はなぜかそれが可能なことと思い込んでいたし、たしかに、彼には細い糸を手繰り寄せながらどんなことでも学んでいく習性のようなものが備わっていたのだ。
彼の脱サラ起業の成功は、運ではなく、100%必然のように思えるのである。
ところで、次の本を出させていただくことになった。
秋頃に出版の予定だが、テーマは「ミドルの失敗しない起業」についての本になることになった。
今日書いた話なども、もう少し詳しく、そこで解説できればなと思う。
photo by [cipher]
*1:プライバシーの関係でちょっとフェイクも入っています