アマゾンに負けない僕らの町の新しい本屋さん!(近未来SF)
きのうの日曜日は久しぶりにゆっくりと寝た。
嫁とふたりで散歩がてら最近できたコーヒーショップへ行きブランチを食べたあと、最近できた本屋さんに行った。
まず新刊書のコーナーにいって、気になる本がないか調べる。
時事、ビジネス、ライフハック関連に目新しいものはなく、昔好きだったアメリカの小説家の最新作が翻訳されているのをみつけて手にとる。
ページを開いて冒頭を読んでみると、あの懐かしい語り口が鮮やかに蘇ってくる。
2,3行読んで、買う決心をする。
プライスカードには、こう書いてある。
ちょっと迷った。
急がないので現品は必要ない。ほかの本も見たいので5分待つのも問題はない。
「ニュープリント」というのは、この本をレジに持っていけば、その場で新しい本を1冊、印刷してつくってくれるのだ。
ebookにすれば、一番安い。
レジでカードを見せれば、登録してあるメールアドレスに送られてくるから、荷物にもならないしどこでも読める。
結局、レジにその本を持って行き、「ニュープリント・ノーマル」を選んでお願いした。その作家の語り口を、本という物理的なカタチで所有して、実際のページをくりながら何度も味わってみたいと思ったからだ。
だけど豪華な装丁は要らない。気軽にポケットに入れて持ちあるけるように、「ノーマル」にしたのだ。
レジでお金をはらうと引換券をくれたので、それを持って嫁を探しに行く。
嫁は絵本のコーナーにいた。
孫の「いち乃」の誕生日にプレゼントする絵本を探しているのだ。
「いろいろ見てみたけど、やっぱり、ドクター・スースのGreen Eggs and Hamにしようかなと思っているの」と言って、手にしていた本を棚に戻し、棚に埋め込まれた画面の操作をはじめる。
著者の名前を入れて検索する。
目指す本はすぐに見つかった。そして、その本は現在この本屋さんの在庫にはなく、「ニュープリント」での購入もできないことがわかった。
「ebook版にしようかな」
「そうなん?でも、小さな子には、現物の本のほうがいいんじゃない?」
「うんうん。でも、今回は3才の誕生日だから、タブレットもプレゼントするつもりなの。そのタブレットに、ebookで買ったGreen Eggs and Hamを入れてあげようかなと思ってる。そうしたら、そのあとも、部屋の荷物を増やさずに、いろんな絵本をあげることができるし」
なるほど、それもいいかもしれない。
「もう、帰る?」
「いや、もうちょっと、ぶらぶら見てくるわ」
僕はふたたび、インクの匂いを嗅ぎ、様々な本が様々な声を上げている本棚の間を幸せな気分で渉猟しはじめた。
この本屋さんができて本当に良かったと思う。休みの日にリラックスして出かけたい場所がひとつ、戻ってきたのだ。
この本屋さんの経営が軌道に乗って欲しいと思う。
在庫は要らないから、在庫の場所や資金は不要になる。ebookの収益もちゃんと本屋さんにはいるようになっていると聞く。
もちろん、アマゾンでも買う。便利だから。
でも、最近は、アマゾンのレビューをたしかめて、この本屋さんで買うことも多くなった。
だって、「ニュープリント」ならアマゾンで注文するより早いし、ebookにするにしても、この本屋さんで買うと地域の環境整備や介護のために、いくらかが回ることになっているのだ。
また、有名作家さんのサイン会やちょっとした講演会などのチケットも優先して買うことができる。
僕らの町のこの本屋さんはほんとうに素敵だ。
僕らはこの本屋さんをみんなで支えたいと思っている。
アマゾンが潰れてしまわない程度にね!
*How to save local bookstores in two easy steps(2つの簡単なステップで地域の本屋さんを救う方法)に提案されているアイディアをもとに書いたフィクションです。
そこにこんなことが書かれています。
’A machine has been invented recently called the Espresso Book Machine, which can print a 300 page black and white book in 4 minutes. Binding, glue, pages, ink, colorful cover artwork, everything. 4 minutes. Indistinguishable from certain types of factory-printed books. Total cost of production is about a penny per page, or $3 for a 300 page book. These machines aren’t cheap ($100,000 each!), but it’s a long-term investment, and costs will come down, and sooner or later allow fancier printing as well. Available formats are limited, but as machines improve, it can eventually become the norm.’(エスプレッソブックマシンという機械が最近発明された。300ページのモノクロの本を印刷して綴じてカラフルなカバーをつける。それにかかる時間は4分。コストは、1ページあたり1ペニー、もしくは300ページあたり3ドル。この機械は安くなく(10万ドル=1千万円)するが、長い期間の投資として考えるべきだし、やがてはその値段も下がって、よりカラフルなページも印刷できるようになるだろう。可能なフォーマットは限られているが、機械が進化するにしたがって、それが標準にもなることができるだろう)
*追記 エスプレッソブックマシンの紹介動画がありました。
Photo by radioher