できる上司をもったことがない君へ!
僕は会社からドロップアウトしてしまったが、組織に属していて良いことのひとつは、素晴らしい上司に恵まれて、その薫陶を受けることだろう。
しかし、残念ながら、素晴らしい上司っていうのは、テレビや映画の中ではよく見かけるが、現実にはそうそういない。
かくいう僕も、良い上司になりきれなかったと思うのだが、何人かの素晴らしい上司に巡りあい、そのやりかたをつぶさに見る機会には巡りあった。
会社員になった若いひとたちが、自らのことを「社畜」と読んで卑下したり、「仕事を通じて成長するなんて嘘だ。時間と引き換えにカネさえもらえばいい」というようなことを言ったり書いておられたりするのを見ると、残念だなと思うことが多い。
もちろん、「スパルタ式に部下を鍛える」場合、テクニックと深い愛情が必要で、それを欠いたスパルタが蔓延していることは、想像に難くない。そもそも、できる上司っていうのが、少数派なのだから、必然的にそうなる。
でも、組織に属していると、いつかは、できる上司の元で働くチャンスも巡ってくると思って、なんとか耐えて欲しいものだと思う。
いまだ、できる上司に巡りあっていないひとのために、できる上司はどれほど凄いのかってことを、僕が薫陶を受けた方々のことを思い出して紹介してみたい。
1.できそうもないことをヤル!と宣言して、いつもなんとか着地してみせる
ワクワクすること、そりゃ無理だろ、そんなとこに話を持っていけるはずがない、というようなことをいつも言い出す。
そして、部下の僕らもおもいっきり振り回されるのだが、不可能に違いないと思えたことも、最後の最後は、なんとか着地させてしまう。
そして、やっと終わったと思ったら、また、とんでもないことを言い出すのだ。
2.最高を求め、期限ギリギリまでOKを出さない。たびたび、現場が訴える期限を平然とオーバーする
だいたい、仕事の期限というものは、何人かのサバが重なって、真の期限より早い目に設定されるものだ。できる上司は、真のリミット、たとえば、そのリミットを超えると媒体の印刷が遅れてしまうというタイミングを熟知している。
だから、部下の僕らが、「期限過ぎてます~~これでOKください~~」と泣きをいれても無駄なのだ。
平然とNOを言う。もちろん、それで残業になる。残業は連鎖して、他部署や取引先にも影響するが、そんなことはカンケーない。
いつもギリギリまでがんばって、最高の結果を出すことが必要なのだ。
そして、自分は、平然とした顔をして、さっさと帰ってしまう。
しかし、こうなると周囲もその上司の仕事は一筋縄ではいかないとわかっているので、自然と気合の入ったものになってくるのだった。
3.部下や他部署の報告をときに信用せず、みずから出向いて確かめる
それは、誰がゆうとんねん?! っていうふうに問い詰められることが多かった。現場というものは変化を嫌うし、そもそもできる人たちの割合は一定数しかいないから、後ろ向きな姿勢の報告が上がってくることが多い。
そんなときは、もっぺん聞いてこいと怒るか、報告書を放り投げて、自ら現場に駆けつけて、直接話を聞く。
4.自部署の業務範囲を超えた決定を下して、関連部署や上司にそれを認めさせる
課長、それは◯◯部が決めることじゃないでしょうか、などと言っても無駄である。
どんな上司も単独では仕事ができず、上からの指示、横との連携を行いながら仕事をこなすわけだが、できる上司というのは、自分が「最初に転がる石」になることが多い。
そうなるためには、自部署の守備範囲にこだわっていては仕事にならないのである。
で、もちろん、そんな越権行為も、たいていの場合追認されて、会社は転がっていく。
5.自分でできることも、自分ではしない
仕事は、もちろん、自分ではせず、すべて部下にやらせる。
そして、上がってきた仕事に、ここがダメ、ここもダメ、最悪!などと文句をつけて突き返す。
重要な文書もそんな感じなので、そこまで細かく指示するなら自分で書いてくれよと文句のひとつも言いたくなる。
ブラインドタッチができないために、全部部下にやらせているんだと疑いたくなるかもしれないが、そんなことはない。
一点の曇りなく、それは部下の成長のために、そうしているのだった。
なぜなら僕がそう言えるかというと、僕の知っている複数のできる上司は、たしかにブラインドタッチはできなかったが、両手の人差し指だけで、相当高速に入力するワザをもっていたからだ。
6.ときには部下の不出来な仕事をそのまま受け入れる
仕事によっては、NOと言って突き返せない種類のものもある。
たとえば、人事異動で部下にステップアップした仕事を与えたとき(たとえば、はじめてのマネージャーなど)、部下がその業務をこなせずに様々な不都合が生じても、じっと我慢してその結果を受け入れ、部下の成長を待つ。
できる上司は、部下の少々の不出来で、その評価が下がるようなことはない。
7.部下の知らないところで、リスクを回避するための行動をとる
ひとつの催事を成功させて、鼻高々でいたことがある。
上司は僕の知らぬ間に、ライバル店に電話をかけて、その団体の内情を聞き出していた。
イケイケの部下がいる場合、できる上司は、そっと見守るだけでなく、リスクを回避することを自らおこなったりしている。
8.身だしなみが完璧である
たぶん不思議でもなんでもないのだが、できる上司は皆一様に、身だしなみ、グルーミングが完璧である。
そして、悔しいことに男前であることも多い。
寝癖をトレードマークとしている亀井静香氏のようなひとは、例外中の例外で、僕は会ったことはない。
9.理想論で突き上げてくる若手論客の部下には、言わせておいて受け流す。そして、徹頭徹尾、現実的な思考方法を変えることはない。
若手の元気なのが、上司にガンガンモノ申す。上司は黙って聞いている。
そういうことは、ままある。そして、できる上司は、それを議論しても無駄であることをよく知っている。
ただ、聞き流し、「部下に議論で負けた」と思われることも甘受する。
そして、徹頭徹尾、現実的な行動をとる。
10.女子社員に人気が高く、バレンタインデーのデスクがチョコレートで溢れかえる
悔しいが、事実だ・・・
ある上司は、「ホンキのカードが入っていたら困るから、家に持って帰るまえに、全部開けてチェックしろよ」って教えてくれたけど、それだけは、いらぬ助言だったです、はい。
photo by Pandiyan