ICHIROYAのブログ

元気が出る海外の最新トピックや、ウジウジ考えたこととか、たまに着物のこと! 

★★★当ブログはじつはリサイクル/アンティーク着物屋のブログです。記事をお楽しみいただけましたら最高。いつか、着物が必要になった時に思い出していただければ、なお喜びます!お店はこちらになります。★★★


線香花火と着物 生き残る道は・・・

f:id:yumejitsugen1:20120808060132j:plain


線香花火って、僕ら、市井の人間の人生みたいだ。

もっとも高い打ち上げ花火は、400万ぐらいするらしい。
線香花火は12本入りで100円とか。
一本、8円。
ま、たしかに万人の注目を集めるような大きさ・派手さはない。
ちっちゃくて、かわり映えはしない。
子供の、花火遊びでも、出番は最後。

もう、線香花火しか、残ってへんわ。

とか言われて、やっと出番。

でも、火をつけられたら、小さな蕾のような火の玉から、ぱち、ぱちと大きな火の花が咲く。
牡丹のように、松葉のように、柳のように、姿を変え、やがて、その人生を終える。
ささやかだけど、ひとつひとつの線香花火に命が宿っているかのような、美しさだ。

それにしても、今日まで知らなかった。
中国製の安価な花火に押されて、平成10年に、日本の線香花火製造の歴史は、いったん幕を下ろしてしまっているのである。

伝統的な線香花火は、和紙(こうぞ紙)と硝石と硫黄と松煙でつくる。
いまでは、良い和紙と、松煙(松の木の切り株を焼いたときに出るすす)がない。
微妙な按配の必要な配合と紙縒のより具合のできる職人がいない。
しかも、それを、1本10円以下でできる人など、どこにもいない。
中国からは安価な線香花火がどんどん入ってくる。
中国産の線香花火と、伝統技法でつくった国産線香花火では、花火の美しさがぜんぜん異なる、という。
でも、それを気にする人、それを知っている人は少ない。
かくして、国産線香花火の製造は、途絶してしまった。

仕事柄、着物や染織品のことばかり考えていたけど、中国製に押されて、日本の伝統技法が失われていくのは、着物だけではない。
ここでも、伝統の美、技が失われていた。

着物の場合、古いモノが残っているので、その気になれば、比較して、昔の仕事の良さを確認することはできる。
しかし、花火は一瞬で終わり、未使用の花火だって、長期間保存することはできない。
伝統の継承には、着物どころではない難儀が予想される。

しかし、平成12年、国産の線香花火は、それをなんとしても残したいという人々によって生産が再開されている。
国産線香花火の販売のページを見ると、1本100円程度の価格がついていて、とても美しいデザイン、パッケージである。
これが線香花火と思わせる意匠、お香かなにかのようである。
花火遊びのなかでもっとも地味な花火、というかつてのイメージを覆し、大人がおしゃれに楽しむもの、という新しいコンセプトでつくられている。

 

着物、染織品だけでなく、伝統工芸品は、すべて、同じような苦境にあり、こうして、新しいコンセプトでものづくりをしたりして、戦っている。
想像はしていたけど、実際に戦っているひとの話を読んだり、その挑戦でつくられた新しいモノを見ると、叫びたくなる。


死ぬな!
がんばれ、国産線香花火!

そして、がんばれ、着物!

山縣商店さんのHPを参考にさせていただきました。社長のコラムが面白いので、ぜひ読んでみてください!

( 写真は 線香花火 じゃない、乱菊模様の袋帯!