ICHIROYAのブログ

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「話すこと」が苦手な人に贈る(野茂投手の裏切り)

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50才も過ぎて、自分の悩みを打ち明けてもせんないことなんだけど、そもそも、「話すこと」が、苦手に生まれついている。

「あんた、もごもご言って、何言ってるか、わからんときあるから、ゆっくり、しっかり話すんやで」

いつだったか、講演を頼まれたって、母親に自慢したら、そう言われた。
おいおい!
脱サラしてお先真っ暗だった息子が、なんとか自立できて、そこまで来たったいう話だよ。
まず、褒めてくれよ。

でも、もちろん、この時だけではない。
周囲は気を使って、どうしても、そういうアドバイスが必要なときだけ、言いにくそうに、そう伝えてくれる。

僕の場合、話すことの苦手意識には、主にふたつの面があって、

(1)喋っている内容が、伝わりにくい
(2)当意即妙の返答ができない

ということに集約される。

(1)のほうは、自分では認識できない。

頭の中では、ちゃんと喋っているはずなのに、声となって他人の耳に届くころには、「◯☓◯◯☓☓、むにゃ、むにゃ」と聞こえているようなのだ。
さすがに、「◯☓◯◯☓☓、むにゃ、むにゃ」では、そもそも、何語を喋っているのかさえもわからない。

会社にいるときに、研修で、朝会のロールプレイングをやり、その映像を見たが、そのときは、多少、そのような気があったとしても、いちおう、日本語を喋っていることはわかった。
そして、研修の先生も、「話すことの苦手意識をそこまで感じる必要はない」と言って下さったので、気のせいかな、と思っていたのだ。

しかし、ある日、長女に怒り狂って説教していて、彼女から帰ってくる言葉が、

「◯☓◯◯☓☓、むにゃ、むにゃ」だったのである。

もっと、はっきり答えよ、何を言っているかわからん!
と怒りをさらにたぎらせたが、ふと、気づいた。

ああ、きっと、僕の話しかたも、きっと、こんな風なのだ。
遺伝は恐ろしい。
そして、母が口にした冒頭の台詞が、はっきりと蘇った。

僕の場合は、「話すことが苦手」なうえに、「人前であがる」こともあって、人生の軌跡は、そのことに大きく制約されたけど、幸い、長女は、「話すことは下手」でも、嫁の「人前を好む・社交的である・行動的である」という面を受け継いでいて、そのことがさほどマイナスにはなっていないようだ。



(2)の「当意即妙」の返答ができない、というほうは、自分でもいつも認識していて、焦燥感にかられる。

あの時、ああ言えば、スッキリしたのに。
あの時、ああ言えば、笑ってもらえたのに。

いつも、素敵な台詞は、タイムラグをもって、頭のなかに降ってくる。
頭のなかで、タイムマシンを回してみても、気は晴れない。

しかも、僕が生まれ育ったのは、しゃべくりで悪名高い大阪である。
笑いをとって、なんぼ、なのである。


ともかく、それでも、53才まで、騙し騙し生きてきた。


口頭表現力のなさは、文章表現力や、熱意で補って、と思ってきたものの、やはり、そのせいで、望んで得られなかったものは多い。
ちょっと後悔しているのは、とくに、(1)で、これは、若いころからきちんとした訓練を受けていれば、克服できていたのではないか、と思う。

政治家になるとか、ビジネスでよいプレゼンをするとか、そいう目的だけでなく、人生を豊かにするためにこそ、そういう教育・訓練があってもよいのでは、と思うのだ。
万一、これを読んでいる「話すこと」が苦手な若いひとがいたら、ぜひ、自分でそういう機会を探して、徹底的に訓練してみることを、おすすめします。


五体満足に生まれて、(2)のほうも、というのは、贅沢すぎるような気がするので、諦めている。

ま、ビールをコップ1杯あおれば、考えるより早く素敵な台詞が口をついて出て、いつの間にか、大暴走、っていうこともあるので、普段から、こっそり、ウィスキーを一口きこしめす、っていう手だってある。
コップ一杯で、顔が真っ赤になるという難点もあるが、小さな自営業者である。
ふだんから、少し潤滑油を入れたとしても、誰も文句は言うまい。



ところで、このことを考えるたび、こう言い聞かせて、自分を励ましてきた。

「野茂投手を見よ。喋ることは苦手で、近鉄を退団して、アメリカに渡るとき、散々叩かれたけど、誰も真似のできない大仕事をやった。

何を話すか、ではなく、何をするかが、人生だ」と。

しかし、いま、ネットで少し調べたら、野茂投手は、マスコミにはぶっきらぼうだけど、プライベートでは、普通に喋って笑いも取る、愉快な大阪人らしい。

野茂投手よ、偉大な君は、
最後に、僕を裏切った。
残念だ。

 

写真は、珍しいスピッツの銘仙!